ガングリフォン・ムック(仮)

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第三次世界大戦戦後史・番外編 戦後のAWGS開発史

 仮想戦記外伝。仮想戦記に登場するAWGSの解説とその開発史を作ってみました。原作に登場するAWGSの設定は基本そのままですが、本作の設定に合わせたオリジナル設定(採用国など)を混ぜていますので注意して下さい。

 

 

戦後のAWGS開発史

1 HIGH‐MACSの登場と日本における発展

  21世紀初頭に登場し、それまでの軍事的常識を覆すこととなった新兵器AWGS(装甲歩行砲システム)。直後に勃発した第三次世界大戦には各国の開発した最新型AWGSが続々と実戦投入され、さながらAWGSの万国博覧会の様相を呈することとなった。分けても、世界の軍事関係者に強い衝撃を与えたのが第二世代AWGSに分類されるHIGH‐MACS(高機動装甲戦闘システム)である。

 日米共同開発によるこの機体は、戦車の火力とヘリの機動力を併せ持つ全く新しいタイプの兵器であり、特に日本外人部隊の機動対戦車中隊に配備された12式は大戦を通じて驚異的な戦果を挙げ続け、戦争の趨勢に少なからず影響を与えた。大戦中期にはドイツも同じコンセプトのヤークトパンターを実戦投入し、HIGH‐MACSの概念が急速に確立されていくこととなった。

 

 初期のHIGH‐MACS開発をリードしたのは意外にも専守防衛を国是とする日本だった。日本は12式の開発後も独自に改良型の研究を続け、大戦前には防衛庁技術研究本部の提案する重装型のHAVY-MACS(後のHIGH‐MACSⅡ)と、MDM社が提案する軽装型のLIGHT‐MACS(後のHIGH‐MACSⅢ)の二機種の開発をスタートさせていたのである。

 一早く完成したのは重装型の方であった。開発期間短縮の為に改良部分を胴体と脚部に絞ったこともあって開発は速やかに進められ、完成直後に勃発した北アフリカでの戦いに投入されるや各地で驚異的な戦果を挙げたのである。

 一方、軽装型の開発は難航した。部分改良に留めた重装型と違い、12式をベースにした一からの再設計であったこともさることながら、一足早く完成した重装型の活躍で開発陣のモチベーションが低下したこともその大きな要因であった。大戦末期になってようやくプロトタイプが完成したが、その時には防衛庁も軽装型に興味を失っており、倉庫の片隅で埃を被ることになったのである。

 しかし、戦後に日本が米軍主導の国連PKOへの参加を求められると状況が一変。運用試験において重装型の12式改にも劣らぬ高性能ぶりを見せつけ、直ちに量産が決定。16式装甲歩行戦闘車として制式採用され、再創設された日本外人部隊機動対戦車中隊の主力機として配備されたのである。

 12式改と16式、この全く異なるコンセプトの両機は、後に続く第二世代AWGSに少なからぬ影響を与えることになった傑作機であった。

 

 特に16式は小型・軽量化の恩恵を受けて機動性が高く、輸送性も良い上にコストパフォーマンスにも優れるという、HIGH‐MACSを運用する空挺・空中機動部隊にとっては非常に魅力的な機体であった。この16式の小型・軽量化というコンセプトは、図らずもドイツの新型であるヤークトパンターⅢにも受け継がれることとなった。

 ヤークトパンターⅢはドイツが大戦中から計画していた機体で、全くの別のルートから16式と同じコンセプトの改良計画に辿り着いていたプランの一つであった。既に戦況が悪化した大戦末期ということもあり、計画段階で立ち消えになったが、戦後になって日本の16式の活躍が広まったことも後押しとなって開発が再開。16式に遅れること約4年後の2020年8月にプロタイプがロールアウトし、入念なテストを経て2021年にドイツ軍降下猟兵旅団の降下対戦車猟兵大隊に制式採用された。

 

 軽装型の16式がドイツにその遠縁を見出す一方、重装型の12式改の蒔いた種子はアメリカで花開くこととなった。

 日本と違い、アメリカでは12式と同型機のVW‐1の改良型は中々開発されなかった。これは日本の12式よりも豊富な武装を用意されたVW‐1自体の汎用性の高さから新型機開発の必要性が薄かったことと、2020年のアメリカ分裂によって予定されていたいくつかの計画が頓挫した為であった。この為、アメリカにおける新型HIGH‐MACSの登場は北部連邦による合衆国統一後の2022年まで待たなければならなかった。

 

 もっとも、実際にはVW‐1の本格的な後継機計画は大戦終結直前の中国から始まっていたとも言える。アジアでの戦いが集結した2015年9月25日、中国・百霊廟にAFTA軍が接収した各国の兵器が集められ、各種AWGSの運用試験が行われた。この際、米軍関係者が最も注目していたのは米軍も使用するHIGH‐MACSの改良型である日本の12式改であった。

 12式改のテストはAFTA軍への投降を拒んで戦闘を続けるドイツ軍のヤークトパンターⅡを、日本外人部隊の機体とパイロットを使って掃討させるという形で行われた。ヤークトパンターⅡを駆るのはPEUドイツ軍降下猟兵旅団のエースパイロットであるミヒャエル・ハルトマン。その彼が一騎打ちの相手として指名したのが日本外人部隊の12式改であった。パイロットであるシン中野中尉(当時日本外人部隊第504機動対戦車中隊中隊長)はAFTA軍に降伏して捕虜となっていたが、(半ば強制的であるとは言え)この決闘に応じ、愛機と共に百霊廟の工場内に突入した。 

 この戦いに関する公式記録は一切残されていない。しかし、居合わせた米軍関係者によれば勝利したのはシン中野中尉であり、彼の駆る12式改は居並ぶ米軍関係者にその圧倒的な性能を見せつけ、強い衝撃を与えることとなったという。この瞬間、来るべきVW‐1の後継機は12式改を超える機体となることが宿命づけられ、大戦終結から7年後の後のVW‐2(HIGH‐MACSⅣ)開発へと繋がることになる。同機は日本の12式改を全ての面で上回る高火力と重装甲、高機動力を併せ持つ、正にHIGHーMACSシリーズ最強の機体となった。

 このように、日本が開発した12式改と16式は世界各地の戦場で驚異的な戦果を挙げると共に、世界各国の第二世代AWGSの開発にも大きな影響を与えることとなったのである。

 

2 ドイツにおける試み

 日米の後塵を拝しはしたものの、ドイツもまた初期の第二世代AWGS開発において重要な役割を果たした国の一つである。

 HIGH‐MACSに遅れること約3年後の2015年5月、ドイツは同じコンセプトで開発されたヤークトパンターを実戦投入することとなる。このヤークトパンターはドイツ版HIGH‐MACSとも言われる程の高性能を誇っていたが、前大戦ではパイロットが三次元機動に不慣れだったこともあって大した戦果を挙げることが出来ないまま終戦を迎え、不運の名機となってしまった。

 しかし、戦後になって再評価が進み、オリジナル版のヤークトパンターをトルコが、廉価版のフォルクスパンター(ヤークトパンターAV)をロシアやオランダ、南アフリカといった国々がこぞって採用した。

 大戦中の活躍は大きなものではなかったと言え、後に続く第二世代AWGSの基本形を確立したのはヤークトパンターであると言ってしまっても構わないかも知れない。

 それを証明するように、日米独に続いて実用化された第二世代AWGSであるロシアのバルチャー(米軍におけるコードネーム)と南アフリカの ボスファルクはどちらもヤークトパンターによく似た構成の機体であり、これにはHIGH‐MACSとヤークトパンター両機種の構造の差が大きく関係していた。

 例えばマニュピレーターの有無である。マニュピレーター装備型のAWGSは武装を素早く換装出来るなどのメリットがある反面、複雑な機構から整備や維持管理などの面で一定の技術力を求められ、運用のハードルが高いというデメリットがある。このことから、一般的にマニュピレーター装備型は特に途上国などの軍隊から忌避されやすい傾向にあり、実際にマニュピレーターを装備した第一世代型AWGSはアメリカのM16や日本の9式、戦後に開発されたイタリア製サティロスやイギリス製ハイランダーなど、ごく一部の機種に限られている(ロシア製BMXや中国の13式が装備しているのはマニュピレーターではなく、あくまでもアームである)。

 また、HIGH‐MACSの大きな特徴である可動式の滑空翼も運用を難しくする要素であった。可動式の滑空翼の設計には航空機の開発技術も関係して来る為、運用のハードルは更に上がる。

 これに比べるとヤークトパンターはマニュピレーターを装備しておらず、滑空翼も固定式の為、構造がシンプルで整備性にも長けている。実際、戦後になって開発されたフォルクスパンターはヤークトパンターの構造を可能な限りシンプルにすることでコストダウンを実現することに成功しており、図らずもヤークトパンターの設計の優秀さを物語ることになった。

 前述のバルチャーもボスファルクも、輸入したフォルクスパンターの設計を参考にして開発を進められている。フォルクスパンター自体の性能はオリジナルに遠く及ばず、評価も芳しいものではなかったとは言え、この機体が第二世代AWGSの一つの潮流を形作る上で果たした功績は大きいと言わざるを得ない。

 そしてこのヤークトパンターから枝分かれしたバルチャーとボスファルクもまた、第二世代AWGSの概念を拡張する存在として大変興味深い存在である。

 

3 ロシアにおける試み

  ロシアにおける第二世代AWGS開発の試みは、日米共同開発によるHIGH‐MACSのプロトタイプが完成した直後の2012年頃から既に始まっていた。この従来の常識を覆す画期的兵器の登場に刺激を受けたロシア軍は、アメリカへの対抗意識から直ちに同コンセプトの兵器の概念研究を始め、ロシア陸軍及び空挺軍向けの第二世代AWGS開発計画に着手したのである。実際の開発を担当したのはBMX歩行戦闘車を開発したシャバリン設計局と、ヘリ開発で実績のあるミル設計局であった。

 開発は当初、シャバリン設計局がイニシアティヴを取り、BMXの車体にヘリ用のガスタービン・エンジンを搭載する方向で進められた。しかし、BMXの車体では三次元機動の実現が困難であり、計画は難航した。パンターをベースにヤークトパンターを開発しようとして失敗したドイツと同じ轍を踏むことになったのである。

 また、畑の違う設計局同士の主張の対立や縄張り争いも計画を遅らせる大きな要因であった。あくまでも既存のAWGSをベースに開発を続けようとするシャバリン設計局に対し、新規の車体を提案するミル設計局の連携は当初から上手く行っていなかったのである。

 こうしたこともあり、計画は遅れに遅れた。大戦勃発後も開発は続けられたが、目ぼしい成果を上げることもないまま戦局の悪化と共に計画は中止となり、敗戦とその後の内戦による混乱で計画自体が放棄されてしまうこととなる。
 しかし、内戦終結後の2017年になると状況が一変。ロシア共和国政府は国内の深刻な食糧危機を解決する為には隣国ウクライナの穀倉地帯を再併合するしかないという判断を下し、弱体化したロシア軍の再建と軍拡を急速に推し進めた。この過程で一度は放棄された筈の第二世代型AWGSの自主開発計画に再び光が当たり、計画が再開されることとなったのである。

 ここでロシア版HIGH‐MACS開発に名乗りを上げたのがカモフ設計局である。カモフ設計局はKa-50ホーカム攻撃ヘリなどを開発した実績のある設計局で、HIGH‐MACS開発には欠かせないヘリ開発の豊富なノウハウを持っていた。これは丁度、HIGH‐MACSを開発したMDM社の前身であるマグドネル・ダグラス社がAH‐64アパッチを手掛けたのと似ていた。

 カモフ設計局はHIGH‐MACSが登場した頃から独自にその分析を進めており、概念研究を続けた結果、従来のAWGSとは全く異なるアプローチが必要であることを掴んでいた。カモフ設計局はロシア軍に対し、車体を含めた完全な新規開発を提案。ロシア軍はこれを受け入れ第二世代AWGSの開発計画を再開させ、前回の反省に立ってトライアル方式で機体を選定することとした。このトライアルには有力候補とされたカモフ設計局の他に数社が参加し、シャバリン設計局とミル設計局も改めて新規の機体を提案した。

 最初にプロトタイプが完成したのはシャバリン・ミル設計局側であった。前回の失敗を活かした両社の案はドイツ製のヤークトパンターを模した堅実なもので、保守的な設計ながらも十分な三次元機動力を兼ね備えた機体となっていた。

 これに対し、カモフ設計局のコンセプトは同じヤークトパンターを参考にしながらも空中機動性や空戦能力の更なる強化を狙った野心的なものであり、やや遅れて完成した試作機はあらゆる評価テストでシャバリン・ミル設計局側の試作機を上回る性能を見せつけたのである。このテストの結果が決め手となり、トライアルはカモフ設計局が勝利。2019年の8月頃になってようやく制式化され、量産が開始されることとなった。

 

 しかし、紆余曲折を経て完成したバルチャーが陽の目を見ることはなかった。ロシアはこの頃、ウクライナ北方領土への侵攻失敗と国連の経済制裁によって経済が低迷しており、 ロシア軍には高価な第二世代AWGSを揃える余力がなくなっていたのである。部品価格の高騰もあって調達数は当初の計画を大きく下回り、代替機として一時的に導入されていたドイツ製フォルクスパンターを引き続き調達することで第二世代AWGSを揃える方針に転換されたのである。

 バルチャーが再び歴史の表舞台に登場するのは2021年の1月、モンゴル・ウランバートルにおける中露両軍の軍事衝突においてであり、中国・モンゴル軍を相手に多大な戦果を挙げ、日本の16式とも同等に渡り合ったとされる。

 

4 南アフリカにおける試み

  南アフリカにおける第二世代AWGS開発の試みは終戦から半年後の2016年5月に始まっていた。大戦中から各国の戦闘記録の詳細な分析を行って来た南アフリカ国防軍は、日本のHIGH‐MACSとその運用部隊である機動対戦車中隊の驚異的な戦果に早くから着目し、自軍内部にも第二世代AWGSで構成された空中機動部隊を編成する計画を打ち出したのである。

 この際、新部隊の創設において中心的役割を果たしたのが国防軍フレデリック・バーロウ少佐*1と、戦後に南アフリカ政府に軍事顧問として招かれていた元PEU軍の兵士達であった。バーロウ少佐は第二世代AWGSとその運用部隊のノウハウを得る為、終戦直後から国籍を問わず優秀な人材を集めており、その中には大戦中にPEUドイツ軍の降下猟兵旅団降下対戦車猟兵大隊に所属していたパイロット達も多数含まれていたのである。彼らは敗戦後にヨーロッパに吹き荒れた戦力縮小の煽りを食って活躍の場を失っていたこともあり、自らのノウハウを活かせる新部隊の立ち上げに協力を惜しまなかった。バーロウ少佐は彼らの助言を受けながら新部隊の編成を進める一方、その装備として第二世代AWGSの導入計画を進め、複数の候補案の検討に入った。

 

 その候補として最初に検討されたのは意外にも日米共同開発のHIGH‐MACSであった。前大戦で驚異的な戦果を挙げたHIGH‐MACSは世界中の軍事関係者の注目を集めており、この頃にはアメリカの同盟国であるイギリスでも試験的に導入が始まっていた。実際、その輝かしい戦歴はかつてのライバルであるドイツ軍降下猟兵旅団出身のパイロット達も認めざるを得ず、本格的に導入が検討されていたのである。

 しかし、HIGH‐MACSの導入に当たっては多くの問題があり、概ね次の三つの点から導入のハードルは高いと見られていた。

 

 一つは技術的な問題である。最先端技術の塊であるHIGH‐MACSの運用・維持には相応の技術力と設備が必要不可欠であり、整備にも高度な技術力が要求される。また、機体を構成する部品自体にも高度なものが多く、その調達や生産まで考慮すると技術的ハードルは相当に高かった。

 二つ目はコストの問題である。HIGH‐MACSの運用・維持だけでも相当なコストが掛かることに加えて、その能力を最大限に発揮させる為には空輸機や空中警戒機など、大掛かりな後方支援体制の構築が必要不可欠であり、その整備・維持に掛かる費用も含めると莫大なコストが掛かることが予想された。

 三つ目は政治的な問題である。APCとPEUという二大勢力なき後、唯一残された南アフリカ・OAUを潜在的な敵性勢力と考えているアメリカ政府が最新兵器であるHIGH‐MACSの輸出に応じる可能性は低かった。これは武器禁輸を国是とする日本も同様であり、仮に輸出に応じたとしてもパーツの調達や生産において政治的な干渉を受ける可能性は高かった。

 つまるところ、HIGH‐MACSとは高い技術力と莫大なコストを要求する非常に高価な兵器システムであり、常に充実したバックアップ体制を提供出来る一部の先進国以外にはとても運用出来ない代物だったのである。

 これは安価で堅牢且つ前線での整備性にも優れた実践的な兵器を求める南アフリカ軍の軍事ドクトリンとは相容れない要素であり、現段階ではこれらの問題を解決することは困難であったことから、HIGH‐MACSは候補から外されることとなった。

 

 第二の候補として検討されたのはドイツ製のヤークトパンターであった。この案は隊内に同型機の操縦経験を持つ元ドイツ軍パイロットが多数在籍していたこともあり、当初から有力視されていた案であった。

 部隊内部で改めてこの案を詳細に検討した結果、ヤークトパンターは以下の点でHIGH‐MACSよりも優れていると考えられた。

 

(1)HIGH‐MACSを凌ぐ高い空中機動性。HIGH‐MACSよりも軽量で空力特性が良好な分、空中機動性や近距離格闘能力においてより優れている。

(2)HIGH‐MACSと比べて簡易な構造。マニュピレーターのように整備に手間の掛かる複雑な機構が少なく、滑空翼も固定式。武装もスタブウイングに直接固定するタイプの為、整備性と信頼性の点で優れている。

(3)堅実で将来的な発展の余地を残した設計。高性能だが余り発展の余地のないHIGH‐MACSに比べて機体の構造に余裕があり、将来的な改良や改修の自由度が残されている。

(4)既に操作に習熟したパイロットがいる為、導入と同時に機体の性能をフルに発揮出来る。また、彼らを教官とすることで新しいパイロットの育成も短縮出来る。

(5)開発国の政治姿勢。兵器の輸出に際して政治的な干渉・制約が多い日米に比べてドイツからは政治的干渉を受ける可能性が少なく、輸出後のサポート体制も充実している。また、目下のところドイツとの間に目立った政治的利害が存在しない為、輸出に際して制約を受ける可能性も低い。

 

 これらの点は南アフリカ軍の求める兵器としても理想的であった上、輸出国のドイツが賠償金支払いの為に兵器の輸出に力を入れていたこともあり、調達のハードルが低いと考えられたこともこの案を後押しする要因となった。

 これらの点を詳細に検討した結果、ヤークトパンターは次期第二世代AWGSの最有力候補とされ、軍内部で選定に向けた動きが加速。2017年の夏までにヤークトパンターとその改良型であるヤークトパンターⅡ、輸出仕様のフォルクスパンターの三機種を数機ずつ試験的に導入され、新設された南アフリカ空軍特殊作戦部隊(後の南アフリカ空軍特殊コマンド空挺連隊)において入念なテストが繰り返された。

 

 テストに関わったパイロット達の多くは乗り慣れたヤークトパンターとヤークトパンターⅡに対して概ね高い評価を与えた。しかし、廉価版のフォルクスパンターの性能は到底満足のいかないものであり、現場からは不満の声が続出した。

 この為、南アフリカ軍は現場の要望を汲み取る形でヤークトパンターを次期第二世代AWGSとして選定し、その導入を決定。2018年の春までに更に数機を導入して本格的な運用を開始したが、配備から間もなく起こったスエズ危機で導入計画は再び岐路に立たされることになった。

 

 2018年7月、南アフリカを主体とするOAU軍は中東支配を目指してエジプトに侵攻。弱体化していたエジプト軍を破ってスエズ運河を制圧し、諸外国の介入の動きを牽制した。しかし、その一か月後に日米を主体とする国連軍の奪回作戦が開始されると状況が一変し、イスマイリア軍港の戦いにおいて南アフリカ・OAU軍は日本外人部隊の第501機動対戦車中隊の攻撃を受けて撃退されてしまったのである。

 しかもこの時、現地の部隊には南アフリカを本拠とするPMC(民間軍事企業)所属の傭兵部隊も参加しており、ヤークトパンターⅡ3機と共に軍港内部の防衛に駆け付けていた*2。しかし、彼らはゲートを破って突入して来た日本の新型HIGH‐MACSである16式の前に敗れ、軍港を奪回されてしまったのである。

 

 このことは導入したばかりのヤークトパンターの性能だけでなく、部隊の存在意義についても疑問を投げかける結果となった。更に、これに追い打ちを掛けるように南アフリカには国連による経済制裁が科され、アパルトヘイト以来となる武器の全面禁輸が決定。この措置により、既に引き渡されていた数機を除いてこれ以上のヤークトパンターの調達は不可能となり、第二世代AWGSの導入計画は完全に振り出しに戻ってしまったのである。

 しかし、この敗戦で身を以て第二世代AWGSの威力を知った南アフリカ軍は、導入を諦めるどころかすぐざま計画の続行を決定。その実現に向けた次なる一手として打ったのが第二世代AWGSの自主生産であった。

 

 第二世代AWGSの自主生産の試みは戦争終結直後から世界各国で行われていた。しかし、三次元機動の実現には技術的な問題も多く、今のところにそれに近づいたのは前述したロシアのバルチャーを除けばイタリアのサティロスとイギリスのハイランダーくらいで、それとても限定的なジャンプ機能程度のものに止まっていた。

 実は南アフリカでも第二世代AWGSの導入計画が持ち上がった時から並行して自主開発が検討されていたが、技術的な問題と開発期間の長期化が予想されたことから一度は退けられていた。しかし、武器の全面禁輸により外国からの第二世代AWGS導入の手段が閉ざされてしまったことから、自主開発の可能性が急速に現実味を帯びてきたのである。

 非公式に開発を打診されたロイメック社とデネル社は完全な新規設計ではなく、ヤークトパンターの設計を流用することで技術上の問題を解決し、開発期間を短縮することを提案。南アフリカ軍はこれを了承し、試験用に配備されていた数機のヤークトパンタ―をベースとした新型機の開発が進められることとなった(この間、部隊の機体は既に納入されていたパンターやフォルクスパンターで代用することとされた)。

 開発に当たってはパイロット達の意見も大いに参考にされ、実戦に即した改良が加えられた。特にパイロット達の要望が多かったのが生存性の向上で、操縦席のある砲塔前面を中心に装甲の強化が図られたことでオリジナル以上の高い防御力を実現した。

 車体の開発が順調に進む一方、事前に予想されていたようにいくつかの技術的な問題も浮かび上がった。特に難しかったのが三次元機動を実現する為に必要不可欠なガスタービンエンジンの開発で、デネル社は当初、ヤークトパンターに搭載されたドイツ製エンジンをコピーしたものを搭載しようと考えていたが、技術力の不足から開発は難航。将来的なパーツの調達や生産のことも考慮してフランス製のチュルボメカ・エンジンを国産化したトパーズ・エンジンの改良型に切り替えた。これにより推力や空中機動性は低下したものの、十分な三次元機動力を実現することに成功したのである。

 こうして開発開始から2年後の2020年9月、遂に試作機がロールアウトすることとなった。完成した機体はヤークトパンターによく似たフォルムを持ちながら、同時にHIGH‐MACS系のシンプルな外観を併せ持つ両者の合いの子的な外観となったが、第二世代AWGSとして十分な性能を持つ機体となった。この機体は入念なテストの末に「ボスファルク(アフリカーンス語でイノシシの意)」として制式配備が決定。2021年5月に実戦配備が開始され、直後に起こった第五次中東戦争において初の実戦を経験することとなった。

 こうして紆余曲折の末に完成したボスファルクだが、他の第二世代AWGSと比べて設計が保守的で、これといった特徴のない機体という評価もある。とは言え、南アフリカが独力で第二世代AWGSを開発したことの意義は大きく、その真価は後世の歴史が判断することとなるだろう。

 

5 イタリア、イギリス、フランス

  目下のところ、第二世代AWGSを自力開発した国は日米露独南アの五か国に限られているが、今後第二世代AWGSを開発したり、保有する国は急速に拡大していくものと見れられている。

 その有力な候補と言えるのがイタリアとイギリスである。両国は共に長い歴史を持つ兵器製造国であり、戦車や装甲車だけでなく攻撃ヘリの開発実績もある為、第二世代AWGSを開発する為の技術的要件は十分に満たしている。それを証明するのが戦後に開発されたサティロスとハイランダーの二機のAWGSである。

 サティロスは重装型ながら背部にガスタービンエンジンを装備したユニークな機体て、一時的に跳躍することを可能とした第一世代と第二世代の中間に位置する1.5世代型とも言える機体である。重量級の為、流石に空中機動は無理だが、今後イタリアが第二世代AWGSを独力で開発することは確実視されている。

 同様に十分な開発技術を持つイギリスでも第二世代AWGS開発の予兆とも言える動きが出ている。それがサティロスと似たコンセプトで開発されたハイランダーである。ハイランダーはM16の車体をベースに背部にガスタービンエンジンを搭載した新型機でM 16よりも軽量の為に遥かに高いジャンプが可能となっている。これにコンバットタイヤによる助走を加えたジャンプ距離はかなりのもので、従来の二脚型では突破出来なかった地形も楽々と踏破することが出来る。空中機動をオミットしたことでHIGH‐MACS系統の機体に比べて燃費を抑えられ、行動時間を長く出来るのもメリットである。

 このように限定的な三次元機動力を有するAWGSを最近ではLOW-MACSとカテゴライズする動きも出ており、新たなジャンルの兵器として各国で注目を受けている。

 

 他に有力視されているのはフランスで、装甲車の開発に実績のあるパナール社とヘリ開発で実績のあるアエロスパシアル社が主体となって計画を進行中との噂もあるが、現在のところ第二世代AWGSの実用化に向けた具体的な情報は聞こえてこない。

 もっとも、第二世代AWGSの開発にはそれなりの時間とコストも掛かることから、日米のHIGH‐MACSのようにイギリスやイタリアとの共同開発になる可能性もある。もっとも、イギリスは近年になってアメリカ製のVW‐1の導入を始めた為、共同開発に名乗りを上げるのかは未知数だ。

 いずれにせよ、今後の陸戦兵器の体系はHIGH‐MACSを中心として回り始めていくことに疑いはなく、各国がこぞって参入してくることが予想される。

 

6 イスラエル

  戦後になって新たにAWGSの開発に参入した国で最も目を引く国の一つがイスラエルである。小国であるイスラエルは元来、その国土の縦深の狭さや兵士の人命を重視する観点から重装甲の戦車戦力を重視しており、AWGSの導入には後れを取っていた。しかし、元々無人兵器の開発技術に長けていることもあり、戦後にはアメリカの協力を得ていち早く無人型AWGSビットヴァイパーを完成させるなど、本格的なAWGS開発に必要な技術的素地は十分に整っていた。

 大戦を通してAWGSの有効性が立証された戦後になると、イスラエルはいち早くアメリカから供与されたM15とM16に独自の改良を施してジェリコダビデとして戦力化。機甲旅団の対戦車大隊や機甲偵察中隊に配備して実戦運用する一方、このデータを基に研究開発を続け、アメリカの協力も得て独自のAWGS開発計画をスタートさせた。

 戦車開発で実績のあるイスラエルは特に構造の似ている多脚型の開発に血道を上げ、2019年に六脚型のメギドを開発したのを皮切りに歩兵戦闘車的存在である四脚型のサウル、アラブ諸国から鹵獲したロシア製BMX-19ブラックジャックを改造したミュルメクスと、続々と独自のAWGSを送り出した。

 取り分けて世界の注目を集めたのがメギドの強化型であるメギドMKⅡ(ハル・メギド)である。この機体はメギドのコンセプトである重装甲・高火力を更に推し進め、砲塔に巨大な張り出し型の増加装甲を装着することで防御力を向上させる一方、主砲を140㎜低反動滑腔砲に変えることで南アフリカ製エレファントと並ぶ攻撃力を持つこととなった。

  これらの機体は2021年5月に始まった第五次中東戦争で本格的な実戦を経験し、アラブ軍の猛攻を跳ね返す原動力となった。

 

7 その他の国の動向と新しい試み

  AWGS開発の先進地域であるヨーロッパでも開発国が増加する傾向を見せている。それまでは独仏伊英露の五か国以外にAWGSを開発した国はなかったが、戦後になってスウェーデンやスイスが独力でAWGSを開発することに成功している。水陸両用型のフロッシュと不整地踏破性に優れたバルフンドがそれで、それぞれ高い完成度を誇っている。

 

 また、オーストリアとスペインが手を組み、コンポーネントの共通性を高めることで多くの派生型を生んだフサリア戦闘歩行車を共同開発する一方、ドイツ製のAWGSを多数導入しているトルコでもドイツの協力を得て国産型AWGSの開発計画が進行中で、国家間の枠組みを超えた共同開発が進んでいるのも特徴である。

 共同開発の試みはアジアでも行われている。大戦中にコラート戦闘歩行車を開発したタイは戦後もシンガポールやマレーシアと共同でハヌマン偵察歩行車を開発し、一定の成功を収めている。

 この機体は有人操縦型のAWGSとしては最少かつ最軽量の部類に入る機体で(イスラエルのビットヴァイパーは無人機)、猿のような独特の歩行システムと狭い場所でも自由に行動出来る高い運動性能を持っている。ジャングルでの運用にも適した機体であることから他の東南アジア諸国でも採用が広がり、アジアにおけるAWGS開発技術が習熟してきたことを示す好例となっている。

 また、中国やインドでも完全国産のAWGS開発に乗り出しているが、技術的な問題や政治状況から現時点では完成に至っておらず、他国から輸入したり、デッドコピーしたAWGSでまかなっているのが現状である。

 一方、ヨーロッパとアジアに続く第三世界でもAWGS開発の萌芽は芽生え始めている。その好例がブラジルのEE‐40ラーナである。ラーナはブラジル初の国産AWGSながら本格的な水陸両用機能を持つユニークな機体であり、水中浮航能力と脚部による高い不整地踏破性能を活かして複雑なアマゾン川流域の地形を自由に踏破することが可能となっている。 

 

 最後に、目下のところ第三世代AWGSと目されている最新兵器を紹介したい。それがMDM社とGD/GM社がそれぞれ開発した二種類のV‐MACSである。車両形態と歩行形態に自在に変形するという、一昔前のアニメの世界のロボットを現実のものとしたかのようなこの兵器だが、将来的には陸戦の形を根本から変えてしまう兵器になるのではないかと期待されている。

 実は構想自体は戦前からあり、MDM社が自衛隊新SHに参加を決めた際にMDM社内で出されたいくつかの候補案の内の一つであった。そのコンセプトの大元はHIGH‐MACSと同じくAWGSに高い機動力を付与することにあったとされている。従来のAWGSはその最大の特徴である脚部歩行のシステムによって不整地踏能力こそ他の車両を圧するものがあったものの、路上・不整地を問わず走行速度では他の車両に溝を開けられていた。ただでさえ車高が高く、被弾投影面積の大きいAWGSにとって機動力の不足は死活問題であり、これを解消する為に当初から高機動化の方策が考えられていた。実際、HIGH‐MACSが脚部にコンバットタイヤを装備することでこの問題を解消して以降、既存のAWGSにもコンバットタイヤを装備した高機動型が続々と現れるに至った。V‐MACSもまた、こうしたAWGSの高機動化の過程で模索された試みの内の一つだったのである。

 V‐MACSの大きな利点は装輪式の装甲車両の長所とAWGSの長所を併せ持つことにあると考えられている。車両形態時の高速走行と、歩行形態時の不整地踏破性能の高さ。この二つを兼ね備えることにより、飛躍的に行動範囲が広がるのは容易に想像出来る。

 また、装輪式の利点である整備性の高さもAWGSの運用に伴ういくつかの問題点を解消するものと期待されていた。そもそも、AWGS最大の特徴である脚部機構は戦車の履帯や装甲車の装輪に比べて極めて複雑な機構であり、常日頃のメンテナンスが欠かせない手間の掛かる代物であった。この為、AWGSを戦場に運ぶ際には戦車と同様にトランスポーターを使用せざるを得ない場面も多く、後方部隊の負担が増大する一因となっていたのである。しかし、V‐MACSならば整備に手間の掛からない車両形態で戦場まで急行することが可能となり、負担を軽減することが出来ると考えられた。

 しかし、当時MDM社が参加していた自衛隊の新SH計画にはHIGH‐MACS案の方が適切と考えられたことからこの案は採用されず、細々と概念研究が続けられることとなった。だが、前述したように既存のAWGSにも脚部にコンバットタイヤを装備した高機動型が増えるにつれ、変形機能の有効性に疑問が持たれるようになり、試作車が作られることもないままに計画は立ち消えとなったのである。

 

 しかし、大戦を通じてコンバットタイヤ装備型のAWGSの有効性が立証されたことが、逆説的にV‐MACSのコンセプトに光を照らすこととなった。大戦終結後の2016年、大戦を通じてAWGSの問題点を研究していたアメリカ国防総省DARPAMDM社同様、整備性の悪さや戦略機動力の悪さといったAWGSの問題点に突き当たり、これらを解消した新兵器が求められるようになっていた。

 こうした機運の中で、アメリカ国防総省DARPAは次世代AWGSの開発計画を発表。2017年半ば頃には米軍の正式な計画として格上げして計画を本格的にスタートさせ、トライアルによる新機種の選定に着手した。

 これを受けてMDM社はV‐MACSの概念研究を再開するが、厳しい重量制限の中で複雑な変形機構と十分な装甲防御力を両立させることは困難を極めた。一方、M15ランドクラブやM19ブルータルクラブの開発実績のあるGD社も同様のコンセプトで独自の次世代AWGSの概念研究を開始していたものの、似たような問題に突き当たり、ティーガーなどの開発実績を持つGM社との共同開発によってこの問題を乗り切ろうとした。

 先に試作機が完成したのはGD/MG社案の機体であり、車両形態時には8輪駆動となり、歩行時には四脚型の歩行システムをで移動するタイプの機体であった。この機体の特徴は脚部の変形によって車両形態への移行を可能とするシンプルな変形機構で、比較的簡易な構造から来る高い信頼性を持っていた。また、車両形態時には非常に低い姿勢となることから、走行安定性の点でも優れていると考えられた。

 一方、これにやや遅れて完成したMDM社案は車体を折りたたむタイプの変形機構を搭載した機体で、車両形態時には四輪駆動、歩行形態時には逆関節型の歩行システムによって移動する軽量タイプであった。GD/MG社案に比べて軽量でコンパクトなことから機動性や輸送性能の点で優れていたが、装甲や武装の点ではやや劣っていた。

 そして2019年半ば頃、米軍は入念な評価試験の末にGD/MG社製の機体を次期主力AWGSとして選定し、評価試験中に浮かび上がった問題点を改良した改良機の開発を指示した。開発は諸所のトラブルに見舞われながらも順調に進み、2019年の年末には数機の改良型が完成していたが、翌2020年初頭に起こった首都ワシントンへの核テロ攻撃とその後のアメリカ分裂によって計画は中止に追い込まれてしまう。既に完成していたV- MACSもお蔵入りとなり、倉庫の片隅で埃を被ることとなった。

 この状況が一変したのはアメリカ北部連邦軍による南部盟邦制圧後で、日本と軍事同盟を結ぶ西部連邦に対抗する為、数機の機体がテストを兼ねて西部戦線に実戦投入されることとなった。この機体は広大な平原が広がるアメリカ西部が戦場だったこともあり、当初の予想を覆す活躍を見せたものの、いくつかの点で問題も浮かび上がった。

 特に、脚部機構と可変機構という二つの複雑な機構を兼ね備えていることから来る整備性の悪さは深刻で、期待されていたような整備性の向上には繋がらなかったばかりか、かえって整備の手間が増えるという、本末転倒な結果となった。また、可変機構を搭載している分だけ重量効率も極端に悪く、同重量の兵器に比べて武装や装甲の面で制限を受けることともなった。

 しかし、こうした問題点にも関わらず北部連邦軍はその有効性を認め、合衆国統一後の2022年にVV‐1キマイラとして制式化。陸軍内部に新設された機動戦闘旅団に配備され、今も日夜実戦という名のテストが続けられている。

  一方、先のトライアルに敗れたMDM社はその後も独自に概念研究と改良を続け、後に全く新しい形の新兵器を生み出すこととなるが、これはまたほんの少しだけ遠い未来の話である。

 

登場AWGSの設定解説

・仮想戦記に登場する機体の解説。筆者が設定した架空の機体については別途解説を加えた。

 

12式装甲歩行戦闘車近代化改修型(マグドネル・ダグラス・三菱)

・登場から10年近くが経ち、各国の新型AWGSに後れを取る部分も出て来た12式の性能向上を図った改良型。混同され易いが12式改とは別の機体であり、大幅な設計変更や改良はせず、あくまでも細部の形状変更や電子部品の換装などで性能向上を図ったマイナーチェンジ版である。

 最大の特徴はFCSを最新式のものに変更したことで、新型の16式とほぼ同じ武装を扱えるようになったことで汎用性が大幅に向上している。また、各部の形状変更や空力特性の見直し、新素材による軽量化といった数々の工夫により、旧型に比べて性能が20%ほど向上している。試験の結果も良好であり、日本外人部隊に配備された12式は順次このタイプに更新される予定となっている。

 

*従来型の12式とほぼ同じ機体。ただ、12式の登場から既にかなりの時間が経過している世界を舞台としていることもあり、何のアップデートもせずに使っているとは思えない為、微妙に仕様変更した機体として設定した(何せ90式改すらブリキ缶と呼ばれる世界なので、頻繁にアップデートしないと追いつけなさそうである)。

 

12式装甲歩行戦闘車改(マグドネル・ダグラス・三菱/防衛庁技術研究本部)

・12式の改良型。12式の強化案として提示された二つのプランの内の一つで、武装やエンジン出力の強化をコンセプトとする重装型として開発された。改良部分を胴体と脚部に絞ることで開発期間の短縮を図ったことが功を奏し、大戦勃発前に日本外人部隊の第501機動対戦車中隊に配備され、その驚異的な性能を以て各地で多大な戦果を挙げることとなった。

 12式との最も大きな違いはエンジンをF400系のジェット・エンジンに変更したことで、滑空翼を大型化させるなどの改良もあって従来型を遥かに上回る空中機動性を獲得することに成功している。

 しかし、エンジンの高出力化はただでさえ悪い燃費を増大させることにもなり、装甲の僅かな隙間すら燃料タンクとして活用しようという開発側の努力にも関わらず、その最大行動時間は極めて短いものとなってしまった。

 また、FCSの強化で扱える武装が増えている他、射撃能力自体も向上しているなど、多分に実験機的な性格の強いテストベッドとして運用されていた向きもあり、コストパフォーマンスなどは度外視されていた。これによって機体価格が余りに高くなったこともあり、量産は2019年までされなかった。

 

16式装甲歩行戦闘車(マグドネル・ダグラス・三菱)

・12式改と共に提案された12式の改良案の一つで、高出力・高火力を目指した12式改とは対照的に軽量化と汎用性を追求した機体となっている。大戦前から開発が開始されていたものの、設計を一から見直したことから開発は長期化。結局、試作機が完成したのは戦局劣勢となった終戦直前であり、その頃には防衛庁もこの機体に興味を失っていた為、倉庫の片隅で埃を被ることとなった。

 しかし、戦後になって国際社会に復帰した日本が国連PKOへの参加を決めると状況が一変。カンボジアPKO任務遂行中の自衛隊部隊が壊滅した事件を受けて再設立された日本外人部隊の主力機として選定され、世界各地でのPKO任務に投じられることとなった。

 最新型のFCSによって多彩な武装を扱える一方、装甲に新素材を用いることで軽量化を実現しており、12式を遥かに上回る高い空中機動性を誇る。その総合性能は12式改にも劣らぬほどで、C‐17輸送機に四機搭載出来るという輸送性の良さもあって空挺部隊向きの機体と言える。 

 

9式改(小松製作所/防衛庁技術研究本部)

・9式の改良型。PKO任務中の自衛隊部隊がカンボジアで壊滅した事件を受け、日本外人部隊の再創設と共に提案された抜本的な装備拡充案に基づき開発が進められた。

 最も大きな変更点は背面に装備されたロータリーターボの小型化で、駆動系をコンパクトにまとめたことで大幅な軽量化を実現。これにより装甲を維持したまま不整地踏破性能や機動力を向上させることに成功しており、総合性能が大きく向上している。

 米軍から返還された9式は順次改良を受け、日本外人部隊機甲師団の機甲偵察中隊斥候小隊及び空中機動師団の対戦車小隊に配備された。

 

*背中が少しへこんで取り回しが良くなった9式。あそこにロータリーターボが収まっているのかは不明・・・・・・。

 

10式歩行戦闘車(三菱重工?)

・日本が米独共同開発のティーガーの製造権を取得してライセンス生産した機体。FCS等の電子部品を日本製のものに変更している以外にオリジナルとの大きな差はない。本来は自衛隊に配備されていたものだが、日本のPKO参加に伴って再創設された日本外人部隊に20輛が移譲された。

 

18式歩行指揮通信車(三菱重工

・日本が独自に開発した四脚型AWGS。AWGS部隊に追従する為に開発された歩行型の指揮通信車両で、内部に情報処理装置や通信機器を満載している。情報処理能力が高く、高度にネットワーク化されたデータリンクによって部隊の能力を底上げする。武装は自衛用の20㎜機関砲のみとなっている。

 この機体は日本外人部隊機甲師団対戦車大隊本部や斥候中隊本部に配備された。

 

 *10式の武装を取り払ったような指揮車タイプとして想定した。一応、日本初の多脚型になる。山がちな日本の地形なら、本当は多脚型の方が使いではあるんだろうなぁと思ったりもする。

 

13式装甲歩行車(北方工業公司

・中国がロシア製BMX歩行戦闘車をデッドコピーし、一部に改良を加えた機体。技術の遅れからオリジナルに比べてセンサーや砲塔が大型化しており、やはりデッドコピー品である武装も精度に問題を抱えている。装甲こそ圧延防弾鋼板の為にオリジナルより厚いが、その分だけ重量も増加しており、機動力が低下している。

 中国軍はこうした問題点を認識しているものの、敗戦とその後の国内の混乱から軍事力の更新は全く進んでいないのが現状である。もっとも、安価で大量配備がし易いことから中国以外にも採用している国は少なくなく、中国と関係の深いエジプトやパキスタンバングラデシュ、イラン等で配備が進んでいる。

 

14式装甲歩行車(北方工業公司

・中国が開発した六脚型AWGS。ベトナムカンボジアの国境地帯でのゲリラとの戦闘を想定しており、火力支援が主な任務となる。

 その構造はイタリア製リットリオの歩行システムをコピーした車体にアメリカ製のM198・155㎜榴弾砲を搭載しただけの至ってシンプルなものだが、技術の遅れから脚部が大型化してしまっている上、砲撃時には足をロックする必要があるなどの制約がある。

 安価で堅牢なことから戦後は採用する国も増え、地理的条件の似ている東南アジアや中南米などでも採用が進んでいる。

 

コラート戦闘歩行車(?)

・タイが国境に広がるジャングルでの運用を想定して開発した二脚型AWGS。大型の腕部で木々を薙ぎ倒しながら進むことを想定し、駆動系をパワーのある油圧システムとしている。装甲は圧延防弾鋼板のスペースドアーマー構造であるが、その割に重量過大でトップヘビーになってしまった。この為、高反動の武装を装備出来ないことから、柔軟な作戦運用に支障を来している。

 前大戦では大した戦果を挙げることなく終戦を迎えたが、戦後になって中国やインド、ベトナム等が相次いで採用を決定し、配備が進んでいる。また、地理的条件の似たアフリカ諸国や中南米諸国でも採用の動きが広がっている。

 主な武装はノリンコがAT25をデッドコピーした紅竜Ⅱ連装ミサイルランチャーで、状況によってGAU‐30Bガトリング砲を装備することも可能となっている。戦後になると手持ち式の小口径砲が開発されたが、詳細は良くわかっていない。

 

ハヌマン偵察歩行車(?)

・タイとシンガポールが共同開発した偵察用AWGS。開発は車体と駆動系をタイが、内部の電装品などをシンガポールが分担して進められた。

 そのゴリラのような独特な歩行システムもさることながら、非常に小型かつ軽量なことも特徴の一つで、他のAWGSでは行動が制限される狭い空間でも行動可能な高い自由度を誇っている。装甲はアルミ合金製の全溶接構造で、状況に応じてロシア製のリアクティブアーマーを装着することで防御力を高める。固定武装は車体に直接マウントされた30㎜機関砲のみだが、オプションとしてKEMランチャーやグレネードランチャーを肩に装備することも出来る。

 コラートで得られた技術を基にユニークな新コンセプトを多数投入した本機は、アジアにおけるAWGS開発技術が習熟してきたことを示す好例として高く評価されている。

 

*発想の元ネタは某パトレイバーの同名機。ただ、形状はむしろ角ばったものを想定していて、どちらかと言えば小さなサティロスといった趣である。コンプリートファイルのインタビューにあった「(AWGSの動きを作る上で)ゴリラの観察ビデオを参考にした」という広部滋氏の言葉を参考に、ゴリラのような二脚型と四脚型の中間的存在として設定した。

 

ヤークトパンター/ヤークトパンターⅡ(ポルシェ/クルップMak)

・ドイツが開発した第二世代AWGS。そのコンセプトの類似からドイツ版HIGH‐MACSとも称されるが、HIGH‐MACSを凌ぐ高い機動性を誇る。

 マニュピレーターは装備しておらず、武装はスタブウイングに直接搭載する方式を採用している。30㎜ガトリング砲二門が固定武装だが、105㎜滑腔砲を装備したタイプも存在し、ATMやロケットポッドも装備可能となっている。

 この機体はドイツ陸軍の降下猟兵旅団などに配備された後、第三次世界大戦に投入されるも、パイロットが三次元機動に不慣れだったことから大した戦果を挙げることなく終戦を迎えた。しかし、戦後になると再評価が進み、トルコや南アフリカなど各国で採用されて後の第二世代AWGSの一つの潮流を形作った。

 ヤークトパンターⅡはその上位モデルで、総合性能が多少向上している。両腕に105㎜砲を装備したタイプが良く知られており、大戦中に一部のエースパイロットなどに支給された他、戦後もヤークトパンターの上位機種として世界各地に輸出されているようである。

 

ヤークトパンター

・ヤークトパンターの後継機。優秀な基本構造はそのままに各部をフラッシュアップし、軽量化と細部の形状変更、空力特性の見直しなどで総合性能を高めている。その基本コンセプトは日本の16式と共通するものがあり、FCSの強化で多彩な武装を運用出来るようになっている点も似ている。

 旧型との最大の違いはその空中機動性で、一連の改良と新型エンジンの搭載、脚部の形状変更によるジャンプ力の強化でHIGH‐MACS以上と言われた機動性に更に磨きが掛かっている。

 

*12式に対する16式のようなもので、多少の形状変更はあるが、基本はオリジナルのヤークトパンターに近い機体として設定した。

 

フォルクスパンター/フォルクスパンターSAV(ポルシェ/クルップMak)

・ヤークトパンターの構造を簡略化し、低コスト化を図った廉価版。正式名称はヤークトパンターAVだが、パイロット達が「AV」の呼称を嫌った為、輸出仕様の名称であるフォルクスパンターが通称となっている。 

 基本構造はそのままに各部を簡略化することで生産性を向上させており、二基あったガスタービン・エンジンは一基に変更。これによる出力低下に対処する為、武装や装甲はグレードダウンされているが、安価に第二世代AWGSを手に入れられるメリットを考えれば十分魅力的な機体と言える。

 本機は本国のドイツ以外にもロシアやトルコ、南アフリカなどが採用し、自国の第二世代AWGS開発の参考にしたと言われている。

 フォルクスパンターSAVはデネル社製の改修キットを装着した南アフリカ軍仕様の特殊バージョンで、装甲防御力が僅かに向上している他、改良型の夜間暗視装置を搭載している。また、武装も右腕に90mm低圧砲、左腕に30mmガトリング砲という左右非対称のスタイルになっている。

 

Ka‐75バルチャー(カモフ設計局)

・ロシアが開発した第二世代型AWGS。開発計画そのものは戦前から存在していたが、紆余曲折を経て戦後にカモフ設計局がリードする形で開発が完了した。米軍のコードネームは「バルチャー」。

 基本的なスタイルはドイツ製のヤークトパンターを踏襲しているが、より空戦能力に重きを置いて設計がなされている。この為、スタブウイングはオリジナルよりもやや長めに取られており、その両端にフレア・ディスペンサーが装備されている他、装甲の形状も空力特性を考慮したより流線形に近いものとなっている。

 最大の特徴は背部に装備された二基のクリモフ・ターボシャフト・エンジンで、それが生み出す大出力の推力と可変ノズルは他の第二世代AWGSと比べても高い空中機動性を機体に与えることに成功している。固定武装は改良型のGsh‐6‐30・30㎜ガトリング砲と2A70・100㎜低圧砲の選択式で、ヤークトパンター同様、ATMやロケットポッドも装備出来る。

 この機体は評価試験において高い評価を得てロシア陸軍及び空挺軍に採用されたものの、資金難から配備は進んでおらず、ごく一部の部隊に少数が配備されているに留まっている。

 

*イメージはKa‐50ホーカムとSu‐25フロッグフット。ガングリフォンの世界ではカモフ社の存在感が強いので(何せ登場するヘリの大半がホーカムなので)、ロシア軍の第二世代AWGS開発を担当するのもカモフなのではないかと想定した。ちなみに、型式番号の法則が分からないので型番はかなり適当に着けており、仮想戦記中でも統一されていなかったりする。もしかしたら既に使われている形式番号かも知れない。誰か教えて下さい・・・・・・orz

 

ボスファルク/ボスファルクⅡ(ロイメック/デネル)

南アフリカが開発した第二世代型AWGS。ヤークトパンターをベースに開発されたことを除けば、他国の第二世代型AWGSと比べて設計が保守的でこれといった特徴はないが、南アフリカらしい実用的な機体となっている。

 オリジナルに比べて各部の構造が簡略化されているものの、装甲の形状を見直すことで生存性はむしろ向上している。特に、パイロットの登場する砲塔前面は装甲が厚くなっており、重点的な強化が施されている。これにより重量が増加しているが、技術的な問題から背部のガス・タービンエンジンを性能の劣る国産エンジンに変更した為、空中機動性はやや低下している。

 前線での整備性を考慮してマニュピレーターは装備されておらず、武装はスタブウイングに直接搭載する形式を採用。固定武装は右腕に90㎜低圧砲、左腕に30㎜ガトリング砲という左右非対称のスタイルになっているが、これは空挺コマンド独自のスタイルであり、他のパターンも自由に選択出来る。ヤークトパンター同様、状況に応じてKEMやロケットポッドも装備可能となっている。「ボスファルク」はアフリカーンス語でイノシシの意。

 ボスファルクⅡは不満の残ったエンジンをより高性能なものに換装した改良型で、他国の第二世代AWGSと比べても機動性の面で遜色がなくなっている。また、武装に105㎜滑腔砲を採用することで火力の増強も図られている。

 

*イメージは南アフリカが開発した戦闘ヘリ、AH‐2ロイファルク。ヤークトパンターのスタイルとHIGH‐MACS系統の角張った外観を合わせ持つ合いの子的存在とした。

 

パンター/ストゥームパンター(ポルシェ/クルップMak)

・ドイツが開発した二脚型AWGS。その高い完成度からPEU共通二脚歩行マシンにも選ばれた名機で、多少旧式化した現在でも各国が独自の改良を加えながら運用し続けている欧州の「標準AWGS」である。

 装甲は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、全面に渡ってスペースドアーマーを採用。操縦席がある砲塔前面には複合装甲を採用し、乗員の生存性向上を図っている。武装はGAU-8アベンジャー30㎜ガトリング砲とKEMを装備。重量増加を抑える為にマニュピレーターは装備されておらず、武装は肩に直接マウントする方式となっている。

 脚部にコンバットタイヤを装備した高機動型のストゥームパンター空挺部隊用のフォルシルムパンターなど多彩なバリエーションがある一方、採用国に合わせた仕様変更も積極的に行われており、シリーズの中でも最も重武装と言われるスウェーデン仕様はオリジナルを遥かに超える性能を有している。また、戦後はその高い普及率を当て込んだ改修キット・ビジネスも展開されており、南アフリカ・デネル社製の改修キットを装着したスーパーパンターなどが特に有名である。

 ドイツ以外にもオランダ、デンマーク、ベルギーなどで採用されている他、戦後はスウェーデン、トルコ、南アフリカなども相次いで採用を決定した。

 

ティーガー/ストゥームティーガー(クラウス・マッファイ/GM

・ドイツとアメリカが共同開発した四脚型AWGS。旧PEU共通多脚歩行マシンにも選定された名機で、世界各国で採用された実績を持つ。日本でも三菱重工が製造権を取得してライセンス生産を行っており、10式歩行戦闘車として制式化された。 

 最大の特徴は戦闘部と車体を連結するシステムであり、他のどのAWGSよりも高い不整地踏破性を発揮することを可能としている。主武装のラインメタル社製140㎜低反動滑腔砲は多脚型の中でも最も威力の高い武装の一つである。

 ストゥームティーガーは脚部にコンバットタイヤを装備した高機動型で、安定性の関係で通常型では行えなかった行進間射撃を可能にしている。

 

フロッシュ(ボルボ/BAE)

スウェーデンが開発した四脚型AWGS。森林と湖沼の多い同国の地形に合わせて水陸両用として設計されており、単独で河川を渡河出来る水上浮航野力を備えている。短時間ならば水中に潜航することも可能で、水中に潜んで敵を待ち伏せするゲリラ的運用が想定されている。

 装甲は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、密閉性を高めている。主武装は四脚型としてはやや軽装なボフォース製40㎜機関砲だが、より強力な90㎜低圧砲を装備したタイプも存在する(ただし、90㎜低圧砲タイプは水上浮航能力に制限を受ける)。本機はスウェーデン陸軍に採用された後、地理的条件の似た北欧各国でも採用されている。

 

*モデルはCV90(スウェーデン軍の制式名称はstrv90)。CV90の砲塔にティーガー型の車体と脚部を付けたものを想定した。水上浮航能力を持っている為、装甲の形状もやや丸みを帯びたものとなっている。

 

バルフンド(モワク)

・偵察用に開発された四脚型AWGS。コンパクトな車体に低い姿勢、単独での水上浮航能力等、随所にユニークな特徴を兼ね備えた車両となっている。歩行システムもスタイルこそオーソドックスな四脚型だが、他のAWGSよりも関節の多い脚部により多脚型の中でも一際高い不整地踏破性を備えており、険しいアルプスの地形でも難なく走破することが出来る。

 装甲は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、固定武装は30㎜機関砲のみとなっているが、40㎜機関砲や90㎜低圧砲を搭載したタイプも存在する。また、オプションとして小型KEMランチャーも搭載可能となっている。

 その不整地踏破性の高さが評価され、本国のスイス陸軍だけでなく、オーストリアやイタリアの山岳部隊、スウェーデン等の北欧諸国でも広く採用されている。

 

*モデルはボストン・ダイナミックスなどが最近開発している四脚型のロボット。犬のようなイメージを想定しており、歩行速度もかなり早い。

 

アインハンダー(モワク)

・バルフンドに工兵隊向けの改修を施した車両回収車仕様。不整地における優れた姿勢制御を活かし、通常の回収車両では対応出来ない急斜面等での車両の回収や障害物の除去作業を行う。

 車体上には名前の由来となった大きな一本のクレーンアームを装備しており、車両を回収する際などに使用する。車体前部に追加された二本のアームはドーザーブレードを装着しての塹壕構築や障害物の撤去作業等に使用出来る他、クレーンアーム使用時や歩行時に車体を支える為のリフトアームとしての機能も果たす。これらのアームは全て電気駆動式となっており、車体後部に増設された補助動力で駆動する。

 本格的な戦闘任務は考慮されていない為、武装は自衛用の20㎜機関砲のみとなっている。

 

*ロシアのIMR‐X歩行戦闘工兵車と同じく、工兵部隊向けのAWGSという珍しい機体。名前の元ネタは同名のSTGゲームから。

 

リットリオ(フィアット/OTTブレダ

・旧PEU共通多脚型マシン構想に基づいてイタリアが開発した六脚型AWGS。トライアルではドイツのティーガーに敗れたものの、その高い不整地踏破性能から戦後に再評価が進んだ。

 装甲をアルミ合金製の全溶接構造とすることで大幅な軽量化を実現しており、六脚型の割に重量は軽く、機動力も高い。武装には低反動化した120㎜滑腔砲と長射程のL‐KEMを装備しており、十分な火力を有している。

 本機はイタリア陸軍の山岳部隊に配備されている他、戦後はロシアやトルコ、スウェーデン、インド、エチオピアなどでも採用されるなど、再評価が進んでいる。

 

ベリサリエリフィアット/OTTブレダ

・イタリアが開発した四脚型AWGS。戦後の重い賠償金支払いの為、当初から輸出を前提に開発が進められており、同社製のリットリオに比べて構造の簡略化とコストダウンが図られている。

 リットリオとは対照的に平地での機動性を重視した機体で、コンバットタイヤを標準装備している。装甲はアルミ合金製の全溶接構造だが、砲塔前面には複合装甲を採用。被弾の多い脚部にもリアクティブアーマーを取り付けて生存性の向上を図っている。武装には120㎜低反動滑腔砲と小型KEMランチャーを搭載。

 輸出は好調であり、リビアエチオピアなどで採用された他、本国のイタリア陸軍でも配備が進んでいる。

 

*モデルは特にないが、リットリオの四脚版、ストゥームティーガーに寄せたリットリオと思ってもらえれば(どんなやねん)。

 

サティロス(?)

・イタリアが開発した二脚型AWGS。背部に設けられたガスタービン・エンジンによって短時間ながらもジャンプが可能で、重量級特有の機動力不足をある程度解消している。三次元機動と言えるほどの代物ではないが、第一世代AWGSと第二世代AWGSの中間に位置するユニークな機体である。

 ややトップヘビー気味の為、武装はKEMとグレネードのみとなっているが、厚い装甲から来る防御力の高さが強み。ユニークな特徴を持つ本機は、本国イタリアの他に南アフリカエチオピア等が採用している。


フサリア歩行戦闘車(シュタイアー・ダイムラー・プフ)

オーストリアが開発した四脚型AWGS。最大の特徴は高度に共通化された車体コンポーネントによる拡張性の高さで、偵察型や火力支援型、指揮車型や対戦車型などの多種多様な派生型を生み出している。装甲もモジュラー式の為、拡張性や整備性に優れ、パーツを少し変えるだけで様々な任務に対応することが可能となっている。AWGSの中でも後発の機体の為、コンバットタイヤが標準装備されているのも大きな特徴。

 最も一般的な偵察型の武装は30㎜速射機関砲だが、90㎜低圧砲を装備したタイプなども存在する。その汎用性の高さから本国のオーストリア以外にもベルギーやアルゼンチン、ガボン、ナイジェリア、アルゼンチンなどが採用している。

 

*モデルはオーストリアが開発したパンデュール装甲車。従来の四脚型より一回り小さく、装甲車に近い存在として設定した。

 

バリアント/バリアントMk2(アルビス

・イギリスが開発した二脚型AWGS。偵察・火力支援、対戦車戦闘任務を遂行する為に開発された装甲歩行兵器である。駆動系はディーゼルターボエンジンで発電機を稼働させてリニア・アクチュエーターを動かす駆動システムを採用している。

 重量増に繋がるマニュピーレーターは装備されておらず、武装は直接砲塔にマウントするタイプとなっている。最も一般的な対空型の武装は35㎜KDA機関砲と62口径76㎜砲であるが、任務に合わせて様々な武装のバリエーションがある。

 対空型には対空レーダーが装備されていないが、これは航空機のステルス性が高まりレーダーの有効性が低下したことと、高価なレーダーを排してコストを抑える為である。

 バリアントMk2は優秀なバリアントの基本構造はそのままに、増加装甲の搭載で防御力を向上させた新型機である。これによる重量増に対処する為、エンジンもより高出力のものに変更されている。

 この機体は本国のイギリス陸軍以外にも、南アフリカやオーストラリア、クウェートやヨルダンなどが採用している。

 

*バリアントMk2はチャレンジャーに対するチャレンジャー2みたいなものである(AUTRUCHEに対するSUPERAUTRUCHEと読み替えても可)。

 

AUTRUCHE/SUPERAUTRUCHE(ルノー

・フランスが輸出市場を狙って開発した二脚型AWGS。ダチョウのような独特の歩行システムと軽快な機動性を持ち、コンバットタイヤを装備していない二脚型の中ではかなりの機動力を誇る。装甲はアルミ合金製だが、モジュラー装甲を採用している為、運用国の要望に合わせてよりグレードの高い装甲に交換することも可能となっている。

 SUPERAUTRUCHEはその改良型で、旧型との大きな違いは35㎜二連装機関砲を可動式としたことで、これにより砲身のみを動かすだけで一定の射角が取れるようになっている。

 サウジアラビアエチオピアなどで採用された後に、本国のフランス陸軍でも採用された。また、戦後はAFTA軍に鹵獲された機体が中南米諸国等にも流通し、アルゼンチンやチリなどで配備が進んでいる。

 

BMX歩行戦闘車両/BMX-30高射機関砲(シャバリン設計局)

・ロシアが開発した二脚型AWGS。小型・軽量を旨とするロシアらしい機体で、当初から空挺作戦を考慮して設計されている。装甲はアルミ合金製となっているが、全身にリアクティブ・アーマーを装着することで生存性の向上を図っている。武装にはZSU30機関砲とKEMを装備。日本のマニュピレーターは給弾等の各種作業に使う他、歩行時にはウェイトバランサーの役目も果たす。

 BMX-30は空挺師団の高射部隊用に改良されたタイプで、四基の対空ミサイルと対空レーダーを装備している。これによる重量増加に対処する為、リアクティブアーマーは取り外されている。

 コストパフォーマンスに優れることから戦後はインドや中東・アフリカ諸国を中心に広く普及が進んでおり、輸出市場でも成功を収めている。

 

BMX‐19ブラックジャックモロゾフ設計局)

・ロシアが開発した四脚型AWGS。アメリカのブルータルクラブに刺激を受けたロシアが戦前から極秘に開発を進めていたもので、新機軸のコンセプトを多数詰め込んだ野心的な機体となっている。アメリカ軍によるコードネームは「ブラックジャック」。

 最大の特徴は車体を前面を覆う半円状の巨大なカクタス装甲で、複合装甲と爆発反応装甲を組み合わせた特殊装甲により高い防護力を発揮する。武装は低反動140㎜滑腔砲と長射程のL‐KEMを装備しており、申し分のない攻撃力を有している。

 本機は評価試験において高い評価を得てロシア軍に採用されたが、敗戦後の混乱と資金難から少数が配備されるに止まっており、むしろ中東諸国等で輸出仕様型の採用が進むという逆転現象が起きている。

 

*ロシア版ブルータルクラブ。モデルはロシアが開発していた幻の戦車チョールヌイ・オリョールで、半円形のカクタス装甲を装着した砲塔など、大体そのまま。コードネームの「ブラックジャック」は棍棒の意だが、侮蔑的な意味ではなく、その形状を指している。

 

IMR‐X歩行戦闘工兵車(?)

・ロシアが工兵部隊向けに開発したAWGS。外観や歩行システムを含め詳しい情報は不明だが、モグラのように塹壕を掘り進むことが可能とされる。この機体はロシア軍の機甲工兵機材中隊に配備され、戦後になるとイラクUAEといった中東諸国などでも採用された。

 

エレファント(アームスコー/ロイヤル・オードナンス・ファクトリー)

 ・南アフリカが開発した四脚型AWGS。装甲車両としては規格外の巨体を持ち、他を寄せ付けない高い火力と重装甲を誇る。

 アフリカ大陸での運用を前提に全天候下・全地形において単独で敵陣深く侵攻し、索敵・撃滅任務を行うことを想定している。その為、車内には長期間の任務にも耐えられるよう、食料や水などの生活必需品を搭載出来るスペースが設けられている。武装は140㎜滑腔砲と長射程のL-KEMを装備。南アフリカ製の主砲は現存するAWGSの中でもトップクラスの威力を誇り、毎分12発の発射が可能となっている。

 この機体は開発国である南アフリカとイギリス以外にも、地理的条件の似ているオーストラリアやカナダ、インド等でも採用されている。 

 

メギド(イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ/ラファエル)

イスラエルが戦後に開発した六脚型AWGS。同じ六脚型ながら機動性を追求したリットリオに対し、重装甲を追求した対照的な機体となっている。

 武装は120㎜低反動滑腔砲と6脚型にしては控えめだが、リットリオのそれよりも砲身長が長く、初速を高めた強力なタイプである。六脚型の特性である射撃時の安定性の高さから行進間射撃が可能で、高性能なFCSにより高い命中率を発揮する。

 砲塔は圧延鋼板の全溶接構造で、特に被弾の多い砲塔前面には複合装甲を採用。砲塔は避弾経始が良く考慮された良好な形状をしており、被弾投影面積も少ないものになっている。

 

*モデルはメルカバMkⅠで、初期型に近い砲塔を持っている。メギドという名前は中二病ぽいけど、他に良いのが思いつかなかった・・・・・・。もっと良いのがあれば速攻変えます(真顔)。

 

メギドMkⅡ(IMI/ラファエル)

・メギドで得られたデータを基に重装甲、高火力を更に押し進めた改良型。旧型の最も大きな違いは極端に大型化した砲塔で、全周囲に複合素材の増加装甲を取り付けて装甲防護力を強化している。これは特に歩兵の持つ対戦車ミサイルRPG対策を意識したもので、ラファエル社製のAPS(アクティブ防護システム)も標準装備されている等、徹底した生存性の向上が図られている。主砲も新開発の140㎜低反動滑腔砲に換装されており、AWGSの中ではエレファントと並び最強クラスの火力を有している。

 しかし、これらの改良によってただでさえヘビー級の重量が更に増加することとなり、その機動力はAWGSの中でも最低クラスのものになってしまった。もっとも、狭い国土の防衛戦を想定した運用の性格上、イスラエル軍ではあまり問題にされていない。

 

*モデルはメルカバMkⅣで、カネゴン砲塔に脚部を付けた重装甲の機体として設定した。が、「それだったらメルカバで良くない?」という気は正直してる。ただ、それを言い出すとガングリのAWGSはその大半が存在意義を失う気がするのでそこには触れないでおこう(もう触れてるやん)。

 

ジェリコ(IMI/ラファエル)

イスラエルアメリカから供与されたM15ランドクラブに独自の改良を加えた機体。基本は通常のランドクラブと変わらないが、砂漠での運用を考慮して防塵用のフィルターが各部に装着されており、「サンドクラブ」と呼称されることもある。

 また、歩兵のRPG攻撃を想定して車体の周囲に増加装甲と柵状装甲を追加したのに加えて、ラファエル社製のAPSを標準装備するなど、徹底した防御力の強化が図られているのも大きな特徴である。

 

ミュルメクス(IMI/ラファエル)

イスラエルがアラブ側から鹵獲したロシア製BMX-19を改造し、独自の改修を加えた機体。外観上の大きな特徴であった半円状のカクタス装甲が取り外され、その代わりに傾斜した増加装甲が装着されている為、印象が大きく異なる。

 主砲こそ30㎜ガトリング砲にダウングレードされているものの、これは敵を欺くダミーである。実際の主武装は車体後部に装備されたラファエル社製の四連装スパイクミサイルNLOSで、砂に潜って敵を待ち伏せ、射程外から撃破するタンクキラーとしての運用が本来の用途である。その最大射程は25㎞にも達し、砲兵的な運用すら可能となっている。

 この機体はイスラエル軍機甲旅団の砲兵連隊や対戦車中隊などに配備された。

 

*元ネタはイスラエル軍のペレフ。外観も砲塔後部が膨らんでいるなど、多少似ている。

 

サウル(IMI)

・メギドとペアを組むことを前提に開発された四脚型AWGS。小回りの利かないメギドをサポートする、戦車に対する歩兵戦闘車的存在。ティーガーに似た連結システムを持ち、小柄ながら高い不整地踏破性を持つ。また、砲塔と車体前面に複合装甲を採用している為、生存性も高い。固定武装は30㎜機関砲のみとなっているが、オプションとしてKEMやグレネードランチャーも装備可能。

 この機体はイスラエル軍機甲旅団や機械化歩兵師団の偵察中隊、機械化歩兵大隊に配備された他、その完成度の高さから南アフリカ軍でも採用されている。

 

*モデルは特になく、強いて言えばイスラエル軍が採用している戦車の車体を流用した歩兵戦闘車のイメージに近い。

 

ダビデ歩行戦闘車(IMI/ラファエル)

イスラエルアメリカから供与されたM16を改良した二脚型AWGS。基本はM16と大差ないが、乗員の搭乗する砲塔や頭部に増加装甲が施されている為、外観が多少異なる。防塵フィルターが各部に追加されるなど、砂漠での運用を考慮した改良が施されているのも大きな特徴である。

 この機体はイスラエル軍機甲旅団と機械化歩兵旅団の機甲偵察中隊や対戦車中隊などに配備された。

 

ビットヴァイパー(?)

イスラエルが開発した六脚型の小型無人AWGSで、AWGSというよりはロボットに近い存在と言える。砂に潜行する能力を持ち、攻撃を受けると敵の近傍で自爆して被害を与える。砂漠の炎熱下でも壊れないAIの開発をアメリカに依頼して完成した。イスラエルだけでなく、アメリカや南アフリカでも採用されている。

 

VW‐2(マグドネル・ダグラス・三菱/DAPRA)

・長らく後継機計画の持ち上がらなかったVW‐1の正統な後継機で、正式名称はHIGH‐MACSⅣ。前大戦で鹵獲した日本の12式改に衝撃を受けたアメリカが密かに開発を進めていたもので、12式改同様に重装化を推し進めた機体となっている。

 そのフォルムも12式改に良く似ており、VW‐1に比べて胸部や脚部、滑空翼が大型化しているが、軽量な新素材を使うことで重量増加を抑えつつ12式改以上の防御力を実現している。装甲の形状もステルス性を考慮したより電波を反射しにくいものに変更されており、その装甲表面にコーティングされた電波吸収材と合わさることで高いステルス性を獲得するに至った。

 エンジンも12式改の採用しているF400系のジェット・エンジンに改良を施したより高性能なエンジンに換装されており、高い空中機動性を確保する一方、素早い加速を可能とすることで地上での機動力も大幅に向上することとなった。

 また、最新型のFCSによって16式並みに多彩な武装を扱える他、射撃能力も30%ほど向上しているなど、カタログスペックではあらゆる面で12式改を上回る性能を誇っている。12式改以上の高コストと燃費の悪さが玉に瑕だが、HIGH‐MACSシリーズの中でも最強の機体の一つであると考えられている。

 

*米軍がVW‐1の後継機を開発するとしたら12式改のような重装型を志向するだろうという推測を元に設定した機体。あらゆる面で恵まれている米軍だからこそ運用出来る高級機であり、レーダーを掻い潜って戦うステルス戦闘機的な存在でもある。メインカラーはVW-1同様に黒。

 

VW‐1(マグドネル・ダグラス・三菱)

・米軍仕様のHIGH‐MACS。後継機のVW‐2がステルス戦闘機並みに高価な機体になってしまったことから、数の上では未だ主力機の座に位置している。日本の12式に比べて多彩な武装が用意されていることから汎用性の面で僅かに優れており、*3米軍では今後も細かい改修や改良を続けながら運用を続ける方針である。

 戦後はアメリカ以外にもイギリス陸軍などで試験的に配備が進められており、AH‐64W*4の更新として空中強襲旅団の航空連隊などに配備された。

 

M16/M16A1二脚歩行戦闘車 (ユナイテッド・ディフェンス・LP/ビィッカース)

アメリカとイギリスが共同開発した史上初の二脚型AWGS。電気駆動式のマニュピレーターやモジュール装甲など、数々の新機軸を盛り込みつつ後のAWGSの基本形を作った傑作機。

 固定武装は頭部の20㎜機関砲のみだが、マニュピレーターを装備している為、状況に合わせて120㎜低反動滑腔砲などのより強力な武装に素早く換装することが可能。また、モジュラー装甲を採用したことで被弾した箇所の修理・交換が容易となっている他、よりグレードの高い装甲への交換も可能となっているなど、汎用性と拡張性の高さが目立っている。多少旧式化しているものの、その高い信頼性からアメリカ軍では今後も改良を加えながら使用し続ける方針である。

 A1型は脚部にコンバットタイヤを装備した高機動型で、アメリカ軍が保有するM16の大半はこのタイプに改修されている。

 本機はM2ブラッドレー歩兵戦闘車の更新として米軍に配備された後、イギリスやカナダ、オーストラリアでも採用された。また、戦後はイスラエルにも多数が供与され、独自の改良を加えたダビデ歩行戦闘車として制式化された。

 

M14/ハイランダー二脚歩行戦闘車(UDLP/ビィッカース)

・イギリスが開発した二脚型AWGS。M16の車体をベースにガスタービンエンジンを搭載した新型機で、イタリアのサティロスと同じく限定的な三次元機動力を持たせることで機動力の向上を図ったユニークな機体である。空中機動こそ出来ないものの、サティロスよりも軽量な為、かなり高い位置までジャンプすることが可能で、ローラーダッシュによる助走と併用することで従来のAWGSでは越えられない段差や障害物でも難なく突破することが出来る。空中機動をオミットしたことで第二世代AWGSほど燃費が悪くないのもメリットである。

 装甲はM16と同じアルミ合金製だが、モジュラー装甲を採用している為、状況に応じてよりグレードの高い装甲に交換することも可能。武装もM16とほぼ同じものが扱えるが、軽量化された120㎜低反動ライフル砲が基本武装となっている。

 この機体はイギリス陸軍に採用された後、アメリカ陸軍でもM14として制式採用された。また、ヨルダンやサウジアラビ、クウェートなど、伝統的にイギリスとの関係が深い中東諸国でも採用の動きが広がっている。

 空挺部隊向けの改修を施したタイプはエアランダーと呼ばれ、一部の武装や装甲を変更するなどして軽量化が施されている。この機体はイギリス陸軍の第16空中強襲旅団に配備された。

 

*M16をやや細身にしたイメージ。M16の車体で飛んだり跳ねたり出来るのかは良く分からない。米陸軍の採用名であるM14のネーミングは同名のバトルライフルにちなんでいるが、米陸軍の命名規則が良く分からないのでイメージ優先でつけた。というか、単にM14が好きなだけなのだけど。

 

M15/M15A1ランドクラブ(ジェネラル・ダイナミクス

・「不整地踏破性能を持つ射撃プラットフォーム」というコンセプトに忠実に設計された史上初の多脚型AWGS。車体前部に二本のマニュピレーターを装備しており、ドーザーブレードを装備することで即席の塹壕を掘ることも可能となっている。

 A1タイプは海兵隊の水陸両用大隊向けに開発されたタイプで、他機に先駆けて海岸に強襲上陸し、味方舟艇の上陸を援護する。軽量化の為に主砲はオミットされ、武装は30㎜機関砲とKEMのみとなっている。脚部による不整地踏破性能の高さから、従来の水陸両用車に比べて上陸地点を選ばないのがメリット。

 戦後はアメリカ陸軍や海兵隊以外にもイギリスやオーストラリアが採用した他、イスラエルが供与された機体に独自の改良を施してジェリコとして制式配備している。

 

M19/M19A1ブルータルクラブ(ジェネラル・ダイナミクス

・ランドクラブにより強力な武装と装甲を施した改良型。新開発の複合装甲を追加して防御力の向上を図る一方、前部右腕に40㎜速射機関砲、左腕に20㎜ガトリング砲を装備することで火力の向上を図り、これらの改良により総合的な戦闘力は大きく増している。A1型は脚部にコンバットタイヤを装備した高機動型で、現存するAWGSの中でも最も高速な機体の一つである。

 

VV-1キマイラ(ジェネラル・ダイミナクス/GM

アメリカが開発した新型兵器で、目下のところ世界初の第三世代AWGSと目される可変型AWGS。通称、「V‐MACS」。型式のVVとは「可変車両」を意味する。

 最大の特徴は歩行形態から車両形態への変形機構で、二つの形態を使い分けることであらゆる不整地を突破することを可能としている。車両形態時は8輪駆動という贅沢な仕様で、通常のコンバットタイヤ装備型のAWGSよりも高速かつ安定した姿勢で移動出来る。また、戦車並みの低姿勢に加えて無砲塔型の為、被弾投影面積を最小限に抑えられるのも大きなメリットである。歩行形態時は四脚型となり、急峻な斜面や入り組んだ地形でも楽々踏破していける為、行動範囲が他の兵器に比べて格段に広くなっている。

 その反面、複雑な機構を搭載するが故に重量効率が極端に悪く、同重量の戦闘車両に比べて武装や装甲の面で制限を受けるなど、問題点も多く抱えている。固定武装は車体後部にマウントする方式で、長砲身の105㎜低反動滑腔砲とGAU‐8の選択制。オプションとしてKEMも装備出来る。

 この機体はアメリカ北部連邦軍機甲師団の偵察小隊などに配備された後、アメリカ陸軍内部に新設された機動戦闘旅団に配備された。

 

*コンプリートファイルの設定画とは違い、非常に低い姿勢が特徴の無砲塔戦車のような機体として設定した。ラフ画のデザインのままだとそのまま登場させるのは厳しい気もするので、もうちょっと重機ぽいイメージを想定していて、設定の方針もガングリフォンのリアルな世界観の中に入れこまれた時に違和感の出ないようにすることを第一とした。型式番号は正直適当に付けているが、VW‐1と混同し易い気がするので変えた方が良いと思う。

 ちなみに、V‐MACSの「Vって何の略なのだろう?「vehicle」?「variable」?まさかの「victory」?

 

EE-WG40ラーナ(エンゲサ)

・ブラジルがアマゾンの防衛用に開発した水陸両用AWGS。水上浮航能力を持ち、脚部による歩行と併用することで通常の車両では進入困難なアマゾンの複雑な地形を踏破することが出来る。

 開発に当たっては技術力の不足を補う為にドイツとフランスの協力を受けており、タイのコラートのように世界各国からパーツを調達して開発されている。エンジンはドイツ製、FCSはベルギー製、武装アメリカ製といった具合である。軽量化の為、装甲はアルミ合金製の全溶接構造、武装は30㎜チェーンガンと軽装となっているが、オプションとして小型のATMランチャーやグレネードなども装備可能となっている。

 この機体はブラジル陸軍アマゾン軍の機械化騎兵旅団に配備された後、アルゼンチンやコロンビア、イランでも採用された。

 

*外観のモデルはブラジルの試作MBTであるEE‐T1オゾーリオ。オゾーリオの砲塔にティーガーのような脚部を想定している。ちなみに、「ラーナ」とはポルトガル語で「カエル」の意(スペイン語だったかも)。形式番号は相変わらずry。

 

その他の架空兵器

 

クランプファルキー(アームスコー)

南アフリカが開発した自走ロケット砲システム。G6ライノ155㎜自走榴弾砲の車体を利用した大型の装輪式車両で、車体後部にロケット砲発射機を搭載した南アフリカ版MLRSである。MLRS同様、ロケット砲のみならず大型のミサイルやクラスター爆弾、散布式の地雷なども発射可能だが、コストが安価な分、精度や射程といった性能もそれなりに抑えられている。クランプファルキーとはアフリカーンス語で「ハリネズミ」の意。

 

*仮想戦記の第三弾で、OAU軍がエル・アラメインに地雷原を構築する際に急遽必要になって設定した。もしかしたら、南アフリカ軍は地雷を投射するような兵器を別に持っているような気もするが。

 

 

 

 

 

脚注

 

*1:南アフリカ国防軍空軍少佐。特殊コマンド空挺連隊の創始者

*2:原作ではこの傭兵部隊について詳しい記述はない。本稿においては「AWGSを運用出来る傭兵部隊となると、PMC並みのバックアップがないと無理だ」という考えから南アフリカを本拠とするPMC所属というオリジナル設定を加えた。

*3:資料によっては逆のことが描かれている場合もあるが、どちらが正しいのかは不明。ここでは米軍の方が豊富な武装を用意されているのが自然だと思う為、こちらの設定を採用した。

*4:マグドネル・ダグラス社製AH‐64アパッチをイギリス・ウエストランド社がライセンス生産した機体。