ガングリフォン・ムック(仮)

名作ゲーム、ガングリフォンシリーズについて考察するブログです。他のゲームも時々語ります。更新不定期。

第三次世界大戦戦後史・番外編② ボスファルクと空挺コマンド

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当ブログで連載している仮想戦記中に登場するオリジナルのAWGSと、それを運用する部隊に関する設定を新たに書き起こしてみました。こういう趣味丸出しの企画に需要はなさそうですが、筆者自身はこういう仮想戦記ものとか架空の設定遊びが大好物なので時々こんな記事も乗っけていきます。ご興味ありましたら是非ご一読下さい。

 

*本稿はゲームアーツの3Dシューティングゲーム、「ガングリフォン」シリーズの内容を元にした架空戦記の番外編です。これ以前の内容については「架空戦記」カテゴリから閲覧することが出来ます。基本的に「GUNGRIFFON THE EURASIAN CONFLICT」から「GUNGRIFFON BLAZE」までの設定に準じていますが、一部に筆者のオリジナル設定も含まれていますので注意して下さい。

 また、本稿の内容は「第三次世界大戦戦後史・番外編 戦後のAWGS開発史」内の文章と一部重複する箇所がある他、現在の筆者の考えに基づき一部の設定を変更した箇所もありますが、ご了承下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南アフリカにおける試み

 

HIGH‐MACSの衝撃

 21世紀初頭に登場し、それまでの軍事的常識を覆すこととなった新兵器AWGS(装甲歩行砲システム)。直後に勃発した第三次世界大戦には各国の開発した最新型AWGSが続々と実戦投入され、さながらAWGSの万国博覧会の様相を呈することとなった。分けても、世界の軍事関係者に強い衝撃を与えたのが第二世代AWGSに分類されるHIGH‐MACS(高機動装甲戦闘システム)である。
 日米共同開発によるこの機体は、戦車の火力とヘリの機動力を併せ持つ全く新しいタイプの兵器であり、特に日本外人部隊の機動対戦車中隊に配備された12式と12式改は大戦を通じて驚異的な戦果を挙げ続け、戦争の趨勢に少なからず影響を与えた。大戦中期になるとこれに対抗する形でドイツも同じコンセプトのヤークトパンターを実戦投入し、ドイツ陸軍の精鋭、降下猟兵旅団に配備されて機動対戦車中隊と度々激闘を繰り広げた。

 一方、比較的情勢の安定していたアメリカでは更にドラスティックな変革が起こっていた。入念なテストの末にHIGH‐MACSをVW‐1として制式採用したアメリカ陸軍は、各機甲師団と機械化歩兵師団に置かれた航空旅団内部の攻撃ヘリ大隊、空中対戦車大隊、空中騎兵大隊に随時VW‐1を配備する一方、精鋭の第82空挺師団と第101空挺師団でもAH‐64アパッチの一部をVW‐1に更新するなど、大規模なHIGH‐MACSの配備を進めた。ヘリと違って降下後も密着した火力支援が可能なVW‐1の配備は戦術面での劇的な変革をもたらし、その威力は大戦終盤になって参戦したアメリカ軍の驚異的快進撃となって現れた。

 

 戦後になると、日米独の三カ国によってリードされた第二世代AWGS開発とその運用の牙城を崩そうと各国が凌ぎを削ったが、彼らと同等か、それに類する第二世代AWGSとそれを運用する部隊を編成し得たのはごくごく僅かな国々に限られた。

 その僅かな例外の一つが南アフリカ国防軍と、彼らが開発したボスファルク、そしてそれを運用する空挺コマンドであった。この南アフリカにおける第二世代AWGS開発とその運用部隊編成の試みは、前大戦の戦いの舞台となった北アフリカの砂漠から既に始まっていたのである。

 

ラクルナイト

 2015年2月9日のリビア砂漠。APC軍としてエジプトに派遣されていた日本外人部隊第501機動対戦車中隊(通称、ガングリフォン)は、無線封鎖下で国境に接近してきたPEU・ドイツ軍第12機甲擲弾兵師団の後方30kmに降下し、ローラーダッシュで接近。これを奇襲して大戦果を挙げる一方、世界を混乱の渦に陥れた第三次世界大戦の引き金を引くことともなった。

 

 その同時刻、戦場からそう遠くない岩場の陰にこの奇襲作戦を眺める男達の一隊がいた。僅かな月明かりの下で数頭の駱駝に跨った彼らを見た者は恐らく一人もいなかったが、もし誰かが見ていたとしても砂漠を行くベドウィンの一隊だと信じて疑わなかっただろう。

 しかし、彼らはベドウィンではなかったし、そこにいたのも偶然ではなかった。彼らはドイツ軍が国境に向かっていることを知っていた。そしてそれに合わせてエジプト軍の士官学校があるビルベイスから、8日の深夜に日本の第501機動対戦車中隊がC‐17輸送機8機に搭載されてリビア国境方面に向かって飛び立ったことも。

 

 全ては「彼ら」の監視下にあった。「彼ら」は自分達の庭先を荒らすものをそのままにするつもりは毛頭なかった。そこは「彼ら」の土地であり、「彼ら」の法が支配すべき場所だったからだ。

 

 間断なく続く砲声は男達の耳にも届いていた。不意に爆音がして、戦車の砲塔から噴き出した炎が北の空を一際明るく照らす。一隊の中から一人の男が進み出て、ナイトビジョン越しに爆発のあった方角に目を向けた。明るい炎と砂煙の向こうから、数両の戦車が全速力で後退してくる。

 レオパルドⅢ。PEU・ドイツ軍の誇る第四世代戦車にして、伝統の名を受け継ぐ三代目の鋼鉄の豹。現存する陸上兵器の中では最強と言われるその鉄の塊はしかし、今はより強力な捕食者の前になす術なく追い立てられる獲物の立場にあった。

 激しく燃え盛る別のレオパルドの残骸の向こうから、不意に「それ」は現れた。レオパルドを遥かに上回る巨体と、大きく広げられた翼、そしてその両腕に抱えられた鈍色に光る黒い砲。「それ」はその巨体に似つかわしくない鋭い動きで砂漠を滑るように駆け抜け、後退するレオパルドを追っていた。レオパルドは後方の味方車両と時折接触しそうになりながらも、左に右に車体を揺らして寸でのところでそれを回避していた。傍目からでも乗員達の動揺ぶりが伝わってくるようだった。

 

 これでは「豹」というより、まるで獅子に追われるハイエナだな。男が思わずそんな感想を思い浮かべ、後退するレオパルドが「それ」に向かって砲撃を浴びせた次の瞬間、「それ」は飛んだ。男が考えていたよりもずっと高く、速く、しなやかに。

 空中に舞い上がった「それ」の動きは、獲物を狙う鷲のようだった。射るような速さで一気に逃げ惑うレオパルドの上空に迫った「それ」の砲身は、豹の砲塔上面に狙いを着けていた。砲身の先が光るのとほぼ同時に、二、三両のレオパルドがゼンマイの切れた玩具の車のように減速しながら停止し、力なく沈黙した。男が再び目を向けた時には、「それ」はレオパルドの残骸の群れからもうもうと立ち込める黒煙の向こうへと去っていた。その黒煙の向こうでは尚も砲声と爆発の光が続いていたが、戦いの趨勢は誰の目にも明らかであった。

 

 全ては一瞬の出来事であったが、鋼鉄の翼を広げて飛ぶその異形の怪物の姿は、男の脳裏に強く刻み込まれることとなった。そのスタブウイングの先にマーキングされた、翼を持つ獅子の姿と共に。

 

 その夜から男は変わった夢を見るようになった。空を飛ぶ有翼の獅子が、豹を追い立てながら砂漠の煙の中を飛び回る夢を。その獅子が豹達の喉を喰い破り、切り裂き、その身を咥えたままうっすらと明るくなり始めた東の空へと飛び立っていく夢を。

 夢の中の世界は決まって夜だった。あの夜に見た光景と同じように、そこでは砲声と爆発音が鳴り響き、炎が辺りを照らしていた。その炎が照らす闇夜の空に、有翼の獅子の黒いシルエットが時折浮かび上がっては消えた。男はその獅子を追って、いつも空に向かって手を高く伸ばしていた。とっくの昔に失ったはずの、その右手を。

 

 夢から覚めると、男は残った方の手で反対側の肩に触れた。いつもの目覚めの儀式だったが、そこに手があったことは一度もなかった。男は残った方の手でベッドの柵に吊り下げていた水筒を取ると、片手で器用にキャップを外し、水を口に含んだ。砂漠ではいつも水が欠かせなかった。砂漠では水は命と同義語だった。

 彼は砂漠が好きだった。この世で一番美しい場所だと思っていた。そこには人もいなければ街もなかった。砂漠では全てが砂に埋もれている。死すらもだ。そこが彼の気に入った。

 

 男はベッドに戻り、再び目を閉じた。砂漠で生き残るために必要なのは日差しを遮るための一枚のマントと水、そして強固な意志であって、そこに「夢」はいらない。だが、男は分かっていた。それは夢ではなく、自分の未来なのだと。全ては偶然ではなく、必然なのだと。それは自分の使命であり、運命なのだと。男は目を瞑り、もう一度夢の中で失われたその手を虚空に向かって伸ばした。

 

 それから数年後、男の中に宿った異形の怪物はその姿を変えて、それを揺らす揺り籠と共に産声を上げることになる。

 

 

 

 

 

機体解説

 

ボスファルク/ボスファルクⅡ(ロイメック/デネル)

 南アフリカが開発した第二世代型AWGS。ヤークトパンターをベースに開発されたことを除けば、他国の第二世代型AWGSと比べて設計が保守的でこれといった特徴はないが、南アフリカらしい実用的な機体となっている。
 オリジナルに比べて各部の構造が簡略化されているものの、装甲の形状を見直すことで生存性はむしろ向上している。特に、コックピットがある砲塔前面は装甲が厚くなっており、重点的な強化が施されている。これにより重量が増加しているが、技術的な問題から背部のガス・タービンエンジンを性能の劣る国産エンジンに変更した為、空中機動性はやや低下している。
 前線での整備性を考慮してマニュピレーターは装備されておらず、武装はスタブウイングに直接搭載する形式を採用。固定武装は右腕にコッカリルMk8・90㎜低圧砲、左腕にGAU8アヴェンジャー30㎜ガトリング砲という左右非対称のスタイルになっているが、これは空挺コマンド独自のスタイルであり、他のパターンも自由に選択出来る。また、ヤークトパンター同様に状況に応じてKEMやロケットポッドも装備可能となっている。「ボスファルク」はアフリカーンス語でイノシシの意。
 ボスファルクⅡは不満の残ったエンジンをより高性能なものに換装した改良型で、他国の第二世代AWGSと比べても機動性の面で遜色がなくなっている。

 

デザイン方針

 イメージは南アフリカ製の対戦車ヘリ、AH‐2ロイファルク。機体の開発経緯も同機を下敷きにしており、フランスのピューマを流用して開発されたロイファルク同様、ヤークトパンターをベースに開発された設定とした。

 外観はヤークトパンターのスタイルにHIGH‐MACS系統の機体の外観を併せ持つ両者の合いの子的存在で、特徴らしい特徴がない、実用性重視の機体。性能的にもヤークトパンターや12式には若干劣る存在で、むしろ南アフリカ軍の軍事ドクトリンを反映した簡易で信頼性に優れる構造と前線での整備性の良好さなどが売り(もっとも、第二世代AWGSのようなデリケートな兵器を前線で整備出来るのかは怪しいところではある)。

 90㎜低圧砲という少々変わった武装を主武装としたのは、周辺に大きな軍事的脅威のない南アフリカ軍で運用されることもあって比較的軽装でも良いのではないかと考えたことと*1、三次元機動を行う第二世代AWGSにはより軽量な武装の方が向いているのではないかという考えによる(同じような理由で仮想戦記中に登場するオリジナルAWGSは90㎜低圧法を装備した機体が多い)。

 両腕で武装が異なる設定もパンターのように二種類の武器を使えた方が対応力も増すだろうという考えからだったが、相談した元自衛隊員のM氏曰く「両腕の武装が違うと発射時の反動で体勢を崩す可能性がある」と指摘を受けた。ごもっともです・・・・・・。

 とは言え、12式やヤークトパンターが空中で105㎜砲ぶっ放しているのも相当に怪しい設定ではあるので、この辺りはゲーム的な嘘としてご容赦願いたい。もっとも、M氏に言わせると90㎜低圧砲自体は射程などでは滑腔砲に劣るものの、対戦車火力としては十分実用の範囲らしいので、そこだけは安心した(Mさん、ありがとうございます!)。

 

 

 

ボスファルク開発史

 

南アフリカにおける第二世代AWGS開発の試み

 南アフリカにおける第二世代AWGS開発の試みは終戦から半年後の2016年5月に始まっていた。大戦中から各国の戦闘記録の詳細な分析を行って来た南アフリカ国防軍は、日本のHIGH‐MACSとその運用部隊である機動対戦車中隊の驚異的な戦果に早くから着目し、自軍内部にも第二世代AWGSで構成された空中機動部隊を編成する計画を打ち出したのである。

 

 この際、新部隊の創設において中心的役割を果たしたのが国防軍フレデリック・バーロウ少佐*2と、戦後に南アフリカ政府に軍事顧問として招かれていた元PEU軍の兵士達であった。バーロウ少佐は第二世代AWGSとその運用部隊のノウハウを得る為、終戦直後から国籍を問わず優秀な人材を集めており、その中には大戦中にPEUドイツ軍の降下猟兵旅団降下対戦車猟兵大隊に所属していたパイロット達も多数含まれていたのである。

 

 彼らは敗戦後にヨーロッパに吹き荒れた戦力縮小の煽りを食って活躍の場を失っていたこともあり、自らのノウハウを活かせる新部隊の立ち上げに協力を惜しまなかった。バーロウ少佐は彼らの助言を受けながら新部隊の編成を進める一方、その装備として第二世代AWGSの導入計画を進め、複数の候補案の検討に入った。


 その候補として最初に検討されたのは意外にも日米共同開発のHIGH‐MACSであった。前大戦で驚異的な戦果を挙げたHIGH‐MACSは世界中の軍事関係者の注目を集めており、この頃にはアメリカの同盟国であるイギリスでも試験的に導入が始まっていた。実際、その輝かしい戦歴はかつてのライバルであるドイツ軍降下猟兵旅団出身のパイロット達も認めざるを得ず、本格的に導入が検討されていたのである。
 しかし、HIGH‐MACSの導入に当たっては多くの問題があり、概ね次の三つの点から導入のハードルは高いと見られていた。


 一つは技術的な問題である。最先端技術の塊であるHIGH‐MACSの運用・維持には相応の技術力と設備が必要不可欠であり、整備にも高度な技術力が要求される。また、機体を構成する部品自体にも高度なものが多く、その調達や生産まで考慮すると技術的ハードルは相当に高かった。


 二つ目はコストの問題である。HIGH‐MACSの運用・維持だけでも相当なコストが掛かることに加えて、その能力を最大限に発揮させる為には空輸機や空中警戒機など、大掛かりな後方支援体制の構築が必要不可欠であり、その整備・維持に掛かる費用も含めると莫大なコストが掛かることが予想された。


 三つ目は政治的な問題である。APCとPEUという二大勢力なき後、唯一残された南アフリカ・OAUを潜在的な敵性勢力と考えているアメリカ政府が最新兵器であるHIGH‐MACSの輸出に応じる可能性は低かった。これは武器禁輸を国是とする日本も同様であり、仮に輸出に応じたとしてもパーツの調達や生産において政治的な干渉を受ける可能性は高かった。


 つまるところ、HIGH‐MACSとは高い技術力と莫大なコストを要求する非常に高価な兵器システムであり、常に充実したバックアップ体制を提供出来る一部の先進国以外にはとても運用出来ない代物だったのである。
 これは安価で堅牢且つ前線での整備性にも優れた実践的な兵器を求める南アフリカ軍の軍事ドクトリンとは相容れない要素であり、現段階ではこれらの問題を解決することは困難であったことから、HIGH‐MACSは候補から外されることとなった。


 第二の候補として検討されたのはドイツ製のヤークトパンターであった。この案は隊内に同型機の操縦経験を持つ元ドイツ軍パイロットが多数在籍していたこともあり、当初から有力視されていた案であった。
 部隊内部で改めてこの案を詳細に検討した結果、ヤークトパンターは以下の点でHIGH‐MACSよりも優れていると考えられた。


(1)HIGH‐MACSを凌ぐ高い空中機動性。HIGH‐MACSよりも軽量で空力特性が良好な分、空中機動性や近距離格闘能力においてより優れている。


(2)HIGH‐MACSと比べて簡易な構造。マニュピレーターのように整備に手間の掛かる複雑な機構が少なく、滑空翼も固定式。武装もスタブウイングに直接固定するタイプの為、整備性と信頼性の点で優れている。


(3)堅実で将来的な発展の余地を残した設計。高性能だが余り発展の余地のないHIGH‐MACSに比べて機体の構造に余裕があり、将来的な改良や改修の自由度が残されている。


(4)既に操作に習熟したパイロットがいる為、導入と同時に機体の性能をフルに発揮出来る。また、彼らを教官とすることで新しいパイロットの育成も短縮出来る。


(5)開発国の政治姿勢。兵器の輸出に際して政治的な干渉・制約が多い日米に比べてドイツからは政治的干渉を受ける可能性が少なく、輸出後のサポート体制も充実している。また、目下のところドイツとの間に目立った政治的利害が存在しない為、輸出に際して制約を受ける可能性も低い。


 これらの点は南アフリカ軍の求める兵器としても理想的であった上、輸出国のドイツが賠償金支払いの為に兵器の輸出に力を入れていたこともあり、調達のハードルが低いと考えられたこともこの案を後押しする要因となった。
 これらの点を詳細に検討した結果、ヤークトパンターは次期第二世代AWGSの最有力候補とされ、軍内部で選定に向けた動きが加速。2017年の夏までにヤークトパンターとその改良型であるヤークトパンターⅡ、輸出仕様のフォルクスパンターの三機種を数機ずつ試験的に導入され、新設された南アフリカ空軍特殊作戦部隊(後の南アフリカ空軍特殊コマンド空挺連隊)において入念なテストが繰り返された。


 テストに関わったパイロット達の多くは乗り慣れたヤークトパンターとヤークトパンターⅡに対して概ね高い評価を与えた。しかし、廉価版のフォルクスパンターの性能は到底満足のいかないものであり、現場からは不満の声が続出した。
 この為、南アフリカ軍は現場の要望を汲み取る形でヤークトパンターを次期第二世代AWGSとして選定し、その導入を決定。2018年の春までに更に数機を導入して本格的な運用を開始したが、配備から間もなく起こったスエズ危機で導入計画は再び岐路に立たされることになった。


 2018年7月、南アフリカを主体とするOAU軍は中東支配を目指してエジプトに侵攻。弱体化していたエジプト軍を破ってスエズ運河を制圧し、諸外国の介入の動きを牽制した。しかし、その一か月後に日米を主体とする国連軍の奪回作戦が開始されると状況が一変し、イスマイリア軍港の戦いにおいて南アフリカ・OAU軍は日本外人部隊の第501機動対戦車中隊の攻撃を受けて撃退されてしまったのである。


 しかもこの時、現地の部隊には南アフリカを本拠とするPMC(民間軍事企業)所属の傭兵部隊も参加しており、ヤークトパンターⅡ3機と共に軍港内部の防衛に駆け付けていた*3。しかし、彼らはゲートを破って突入して来た日本の新型HIGH‐MACSである16式の前に敗れ、軍港を奪回されてしまったのである。


 このことは導入したばかりのヤークトパンターの性能だけでなく、部隊の存在意義についても疑問を投げかける結果となった。更に、これに追い打ちを掛けるように南アフリカには国連による経済制裁が科され、アパルトヘイト以来となる武器の全面禁輸が決定。この措置により、既に引き渡されていた数機を除いてこれ以上のヤークトパンターの調達は不可能となり、第二世代AWGSの導入計画は完全に振り出しに戻ってしまったのである。
 しかし、この敗戦で身を以て第二世代AWGSの威力を知った南アフリカ軍は、導入を諦めるどころかすぐざま計画の続行を決定。その実現に向けた次なる一手として打ったのが第二世代AWGSの自主生産であった。


 第二世代AWGSの自主生産の試みは戦争終結直後から世界各国で行われていた。しかし、三次元機動の実現には技術的な問題も多く、今のところにそれに近づいたのは前述したロシアのバルチャー*4を除けばイタリアのサティロスとイギリスのハイランダー*5くらいで、それとても限定的なジャンプ機能程度のものに止まっていた。
 実は南アフリカでも第二世代AWGSの導入計画が持ち上がった時から並行して自主開発が検討されていたが、技術的な問題と開発期間の長期化が予想されたことから一度は退けられていた。しかし、武器の全面禁輸により外国からの第二世代AWGS導入の手段が閉ざされてしまったことから、自主開発の可能性が急速に現実味を帯びてきたのである。


 非公式に開発を打診されたロイメック社とデネル社は完全な新規設計ではなく、ヤークトパンターの設計を流用することで技術上の問題を解決し、開発期間を短縮することを提案。南アフリカ軍はこれを了承し、試験用に配備されていた数機のヤークトパンタ―をベースとした新型機の開発が進められることとなった(この間、部隊の機体は既に納入されていたパンターや第三国を経由して輸入されたフォルクスパンターで代用することとされた)。
 開発に当たってはパイロット達の意見も大いに参考にされ、実戦に即した改良が加えられた。特にパイロット達の要望が多かったのが生存性の向上で、操縦席のある砲塔前面を中心に装甲の強化が図られたことでオリジナル以上の高い防御力を実現した。


 車体の開発が順調に進む一方、事前に予想されていたようにいくつかの技術的な問題も浮かび上がった。特に難しかったのが三次元機動を実現する為に必要不可欠なガスタービンエンジンの開発で、デネル社は当初、ヤークトパンターに搭載されたドイツ製エンジンをコピーしたものを搭載しようと考えていたが、技術力の不足から開発は難航。将来的なパーツの調達や生産のことも考慮してフランス製のチュルボメカ・エンジンを国産化したトパーズ・エンジンの改良型に切り替えた。これにより推力や空中機動性は低下したものの、十分な三次元機動力を実現することに成功したのである。


 こうして開発開始から2年後の2020年9月、遂に試作機がロールアウトすることとなった。完成した機体はヤークトパンターによく似たフォルムを持ちながら、同時にHIGH‐MACS系のシンプルな外観を併せ持つ両者の合いの子的な外観となったが、第二世代AWGSとして十分な性能を持つ機体となった。この機体は入念なテストの末に「ボスファルク(アフリカーンス語でイノシシの意)」として制式配備が決定。2021年5月に実戦配備が開始され、直後に起こった第五次中東戦争において初の実戦を経験することとなった。


 こうして紆余曲折の末に完成したボスファルクだが、他の第二世代AWGSと比べて設計が保守的で、これといった特徴のない機体という評価もある。とは言え、南アフリカが独力で第二世代AWGSを開発したことの意義は大きく、その真価は後世の歴史が判断することとなるだろう。

 

 

 

特殊コマンド空挺連隊史

 

前途多難の船出

 南アフリカ国防空軍特殊コマンド空挺連隊(通称SCAR)は近年になって設立された新しい部隊であり、その前身は国防軍統合作戦機関のフレデリック・バーロウ少佐(当時)とヤン・ヘルツォーク少将(当時)の提唱によって空軍内部に設置された南アフリカ空軍特殊作戦部隊(通称SOF)に遡ることが出来る。

 前大戦における北アフリカの戦いはOAU加盟国であるエジプトとリビア間で繰り広げられたこともあり、当初から南アフリカ・OAUの厳重な監視下にあった。2015年2月9日の開戦からAPC・PEU間の戦闘データの調査・分析を進めていたバーロウ少佐は、その過程で日本のHIGH‐MACSとそれを運用する第501機動対戦車中隊の驚異的戦果を知ることになる。バーロウ少佐は戦いの舞台がユーラシア大陸に移った後も同隊の戦闘データの収集を続け、やがてドイツ軍やアメリカ軍内部でも同コンセプトの第二世代型AWGSを装備した部隊が登場して各地で戦果を挙げていることを知ると、自軍内部にも同コンセプトの空中機動部隊を設立する必要性を痛感するようになった。

 

 そして大戦終結から7か月後の2016年5月、バーロウ少佐の提言を受けて国防軍内部に第二世代型AWGS及びそれを支援する各種ヘリを中核とする空中機動部隊構想が立ち上げられ、本格的な運用開始に向けた準備が進められた。バーロウ少佐はこの過程で世界中から有能な人材を広く求め、特に第二世代AWGSの操縦経験を持つパイロットを多数スカウトした。その中には元PEU・ドイツ軍所属の降下猟兵旅団や、日本外人部隊の機動対戦車中隊に所属していたパイロット達も含まれており、彼らから第二世代AWGS運用のノウハウがもたらされることとなった。

 

 彼らからの助言を受けて着々と部隊の編成が進む一方、部隊の所属を巡って問題も浮上した。バーロウ少佐の構想では当初、部隊運用の柔軟性を残すべく同部隊を統合作戦機関の直属とし、陸・海・空軍から独立した指揮系統に置こうとしていたが、これに空軍が難色を示したのである。南アフリカ軍では空軍がヘリを運用する伝統があり、三次元機動能力を有する第二世代AWGSと支援の各種ヘリを装備する同部隊は空軍の指揮下に置かれるのが順当と考えられた為である。

 バーロウ少佐がこれに折れる形で空軍の要求を飲んだことから問題は一応の決着をみたものの、この結果、部隊の管理上は空軍の指揮下に入り、実際の作戦指揮においては統合作戦機関の指揮下に入るという、複雑な指揮系統を持つこととなった。この問題は後々まで尾を引き、柔軟な部隊運用に支障を来すこととなった。

 

 この為、空軍の影響力が強まるのを恐れたバーロウ少佐は部隊の独立性を維持するために部隊の任務に再検討を指示し、従来の空中機動部隊としての運用からより多様な任務に対応することを可能とした特殊部隊的性格を付与していく方針を打ち出した。後に部隊名に「コマンド」の名称が冠されたのも、こうした軍内部の縄張り争いを反映した結果であった。

 また、同隊の存在は陸軍からも快く思われておらず、この一連の問題を受けて空軍の介入を嫌った陸軍は独自のAWGS導入計画を進め、三次元機動能力を持たないドイツ製のフォルシルム・パンターを第44落下傘旅団*6に導入する遠因ともなった。

 こうして陸軍と空軍がそれぞれ独自の空挺部隊保有するという奇妙な状況が生まれることとなった上に、同隊は陸軍と空軍の双方から敵視されるという、何とも前途多難な船出となったのである。

 

その栄光と挫折

 こうした紆余曲折がありながらも、2017年の夏には同隊は空軍特殊作戦部隊として正式に発足し、主力装備の候補として挙がっていたドイツ製のヤークトパンター、ヤークトパンターⅡ、フォルクスパンターなどの試験運用が順次開始されることとなった。この試験の結果、ヤークトパンターがその次期主力装備として選定され、配備計画が正式にスタートしようとしていたその矢先の2018年7月、南アフリカ・OAU軍によるエジプト侵攻作戦が開始された。

 

 この作戦にSOFは参加しなかったものの、日米を主体とする国連軍の介入で敗れた南アフリカには経済制裁が科され、武器の禁輸措置が取られた。これを受けてヤークトパンターの配備計画も頓挫し、第二世代AWGSの配備計画は振り出しに戻ってしまうが、かねてから検討されていた第二世代AWGSの自主生産に切り替えて調達が再開されることとなる。新型機の完成までは第三国を経由して輸入したパンタ―とフォルクスパンターが代替機として配備され、部隊の名称を特殊空挺コマンド連隊と改称して本格的な部隊運用が開始されることになる。

  

 空挺コマンドの初陣は2019年6月に勃発したコンゴ動乱においてであった。南アフリカ・OAUは政府軍を支援する形で内戦に介入し、武装蜂起した反政府勢力を鎮圧するべくOAU軍を送り込んだ。この際に陸軍の反対を押し切ってその先鋒を任されたのが空挺コマンドであり、第二世代AWGSを有する同隊は一連の戦いで圧倒的な機動力と戦闘力を見せつけ、迅速な紛争の終結に貢献したことで一躍その名声を高めることとなった。これを機に同隊はアフリカ各地の紛争に投入されるようになり、南アフリカ・OAU軍の殴り込み部隊としての性格を強めていくことになる。

 

 2020年になるとOAUは中国によるチベット侵攻で表面化した中印間の対立に介入し、インドに与する形でインド領内に空挺コマンドを含む派遣軍を送り込む。空挺コマンドは初戦の対パキスタン戦で勝利を挙げたの皮切りに、ラサ奇襲、ダッカ市街戦などで活躍。取り分けてチッタゴン丘陵の戦いでは撤退するAPC軍を猛追して第503機動対戦車中隊と激闘を繰り広げ、自身も大きな被害を被りながらもこれを壊滅状態に追い込むことに成功。APC軍を崩壊の一歩手前に追い込むも、インド洋上に発生した超大型サイクロンの直撃によって戦況は逆転し、戦いは痛み分けのまま停戦へと持ち込まれた。

 

 その後、インド領内から撤退した同隊は本国で戦力の再編を受け、新型の国産第二世代AWGS・ボスファルクを受領して戦力を強化する。

 そして2021年5月、シベリアでAPCとPEUが争いている隙を突き、OAUは中東進出を目論む。アラブ諸国によるイスラエル侵攻で始まった第五次中東戦争への介入を決定した南アフリカ政府は、イスラエルの援助要請に応える形でエジプトに侵攻。その先鋒として空挺コマンドと陸軍の第44落下傘旅団を南部アスワン・ハイ・ダムに送り込み、同ダムと現地のエジプト軍を制圧させる。空挺コマンドはその後、第44落下傘旅団と共にエジプト支援の為にヨルダン南部に集結していたアラブ合同軍をワディ・ラムの戦いで破る活躍を見せ、OAU軍勝利の大きな原動力となった。

 

 しかし、その栄光は長くは続かなかった。アラブ側を援助するAPC・イランの参戦によって戦況の不透明さが増す中、PEUがOAU加盟国であるリビアと同名を結んで突如中東情勢への介入を宣言、PEU軍がトリポリに上陸したのである。

 このPEU側の動きに南アフリカ政府は直ちに反応し、リビア政府の転覆を企んで空挺コマンドと陸軍の第44落下傘旅団をトリポリに送った。空挺コマンドは16機のC‐130ハーキュリーズに搭載されて超低空でリビアに侵入し、トリポリに奇襲攻撃を敢行。同時に降下した第44落下傘旅団と共にトリポリ郊外に展開していたフランス外人部隊の先遣隊に大損害を与えて大統領府の制圧を目論むも、大統領親衛隊とそれを援護するイギリス陸軍第16空中機動旅団航空連隊の反撃を受けて失敗し、リビア領から撤退した。

 

 作戦そのもののは失敗に終わったものの、この攻撃はPEU・リビア連合軍の行動を遅らせる上で大きな効果があった一方、PEU側の戦争努力を呼び込む皮肉な結果ともなった。こうして腹背に敵を受けることとなったOAU軍はアフリカ大陸への撤退を開始し、PEUの侵攻に備えてエジプト西部のエル・アラメインに防衛線を構築する。空挺コマンドも増援として駆け付け、現代戦では珍しい大会戦が繰り広げられることとなった。

 

 この戦いの最中、空挺コマンドは圧倒的な敵の航空優勢下で不利な戦いを強いられたものの善戦し、カッタラ窪地における戦いで防衛線を突破しようとしたフランス外人部隊に大損害を与えて撤退に追い込む活躍を見せる。しかし、戦線正面の劣勢と戦線後方に降下したドイツ軍の精鋭・第26降下猟兵旅団との戦いで戦力を大きく消耗し、中隊長が戦死。戦況の不利を悟った同隊も戦場から撤退した。

 戦死した中隊長に代わって暫定的に中隊長の任を引き継いだイーベン・デ・クラーク中尉の指揮の下、同隊は友軍部隊と共にアスワン・ハイ・ダムに籠城して戦闘を続けた。クラーク中尉はこの際、ダムを包囲したAPC・PEU軍に対して日本のHIGH‐MACSとの決闘を要求。包囲側がこれに応じた為、両者の決闘が実現することとなった。

 APC、PEU、OAU三軍の将兵が見守る中、ダムの突堤部で繰り広げられた両者の激闘はクラーク中尉の敗北に終わり、中尉は自身の駆るボスファルクⅡと共にダムの底に消えた。この戦いの結果を以て空挺コマンドも包囲軍に投降し、中東における戦いは幕を閉じた。

 この後、APC、PEU、OAU三者間の間で緊張緩和に向けたカイロ合意が結ばれると、APC・PEU両軍の捕虜となっていた空挺コマンドの兵士達も解放され、帰国の途に着いた。しかし、一連の戦いで疲弊した南アフリカ軍には高価な空中機動部隊を早急に再建する余力はなく、多くのパイロット達が軍を離れて行った。バーロウ少佐は戦後も軍に残って戦後処理に当たっていたが、後に退役し、かつての部下達と共に本国でPMCを立ち上げたと言われる。

 また、歴史の影に消えた空挺コマンドの名は後に思いもよらぬ形で復活することになるが、それはまた別の話である。

 

 

 

空挺コマンドの編制(仮)

 部隊編成は日本外人部隊第1空中機動師団を参考にしたと言われているが、部隊発足時に生じた陸・空軍との軋轢から任務内容に修正が加えられた為、実際の編制には大きな相違がある。もっとも、第32空中対戦車中隊の編制は第501機動対戦車中隊と同じ二個飛行隊で編成されており、一個飛行隊は8機の第二世代型AWGSで構成されている点も同じである。尚、2019年以降はOAU軍の多国籍空中機動旅団に属している。

 

  • 統合作戦機関司令部(プレトリア
  • 特殊コマンド空挺連隊本部(ブルームフォンテーン
  • 第1空中強襲中隊(オリックス*7×16)
  • 第2空中強襲中隊(オリックス×16)
  • 第3空中強襲中隊(オリックス×16)
  • 第32空中対戦車中隊(二個飛行隊、フォルクスパンターSAV*8×16、後にボスファルク)
  • 近接航空支援中隊(二個飛行隊、AW109イルンド*9×16)
  • 空中偵察中隊(二個飛行隊、AW109イルンド×16)
  • 及び各種後方支援部隊(通信、電子戦、整備、訓練など)

 

 部隊の空輸及び後方支援に関しては空軍が担当し、第32空中対戦車中隊は任務に応じて16機のC‐130ハーキュリーズに搭載されて戦場まで空輸される。対APC戦では同盟を結んだインド空軍の輸送機Il‐76を使用したこともあり、後により円滑な部隊運用を可能とする為に同機やより大型のC‐17の導入も検討されたが、結局実現することはなかった。

 

主要装備一覧

フォルシルム・パンター

フォルクスパンターSAV

ボスファルク

オリックス

AW109イルンド

CH‐47チヌークなど

 

第32空中対戦車中隊(2020年8月時点の編制)

第1飛行隊:フォルクスパンターSAV×8

第2飛行隊:フォルクスパンターSAV×8

(定数16機、予備機2機)

 

ダッカ市街戦時には本国から補充として送られてきた重装型のフォルシルムパンターも使用していた。

 

第32空中対戦車中隊(2021年5月時点の編制)

第1飛行隊:ボスファルク×4、フォルクスパンターSAV×4

第2飛行隊:ボスファルク×4、フォルクスパンターSAV×4

(定数16機、予備機2機)

 

 


*筆者の軍事知識が乏しいので部隊の設定にはおかしな箇所が多々ある。そもそも「空挺部隊」というよりは明らかに「ヘリコプター部隊」だし、その装備から想像される任務も「コマンド」とはちょっとかけ離れているのかも知れないのだが、ここら辺はどうしても「コマンド」という単語を使いたかったという、筆者の勝手なイメージ優先で設定した部分もあるので、ご容赦願いたい。

 あと、ヘリコプターの数ちょっと多過ぎない?南アフリカの国防予算大丈夫?この辺りは書けば書くほどボロが出てくる部分なので、どんどんツッコンで下さい・・・・・・orz

 

 

 

空挺コマンドに関連する人物 

 

フレデリック・バーロウ

 南アフリカ国防軍少佐。後に昇進し、空挺コマンド初代連隊長に就任する。日本のHIGH‐MACSとその運用部隊である第501機動対戦車中隊の活躍に逸早く注目し、大戦期間中から情報の収集・分析に当たっていた人物。戦後になると国防軍内部にも同コンセプトの部隊を設立することを提唱し、部隊の創設に大きな役割を果たした。

 人事には徹底した実力主義の方針を貫いており、部隊創設に際しては国籍や経歴に関係なく世界各国から有能な人材を集めた。特に、戦後ヨーロッパに吹き荒れた軍縮の煽りを受けて行き場を失っていた元PEU・ドイツ軍の降下猟兵連隊のパイロット達を受け入れたことは部隊の練度を上げる上で大きな効果があり、同隊が設立から数年の内に南アフリカ軍内部でも有数の精鋭部隊に成長した背景には彼らの意見や経験を積極的に取り入れたことが大きかった。同隊の自由な気風や外人部隊的な性格にも、少なからず創設者の性格が影響していたと考えられる。

 2021年5月に起こった第五次中東戦争とそれに続く一連の戦いで同隊が壊滅した後も国防軍内部に残り、戦後処理に当たった。後に退役し、かつての部下達と共に本国でPMCを立ち上げたと言われる。

 

イーベン・デ・クラーク

 空挺コマンド第32空中対戦車中隊所属のパイロットで、階級は中尉。名前は偽名であり、入隊前の経歴にも不明な点が多いが、元PEU・ドイツ軍降下猟兵の出身とされる。精鋭揃いの空挺コマンドの中でも取り分けてAWGSの操縦技術に長けたエースパイロットであったようだが、乗機のボスファルクを白く塗装したり、アスワン・ハイ・ダムの戦いでは日本のHIGH‐MACSとの決闘を要求するなど、虚栄心の強い行動が目立った。

 対APC戦、第五次中東戦争などで目覚ましい活躍を見せ、一時は戦死した中隊長に代わって空挺コマンドの指揮を任されていたが、アスワン・ハイ・ダムにおける決闘で敗北し、消息不明となる。

 ちなみに、バーロウとクラークの二人の名前はある実在の政治家と軍人の名前を組み換えたアナグラムである。

 

ピーター・コッホ

 空挺コマンド第32空中対戦車中隊の中隊長で、階級は大尉。パイロットとしての腕もさることながら、その指揮能力と統率力には定評があり、初陣となるコンゴ動乱から同隊を率いてアジアと中東における戦いで活躍するも、エル・アラメインの戦いで戦死。後任は部下のイーベン・デ・クラークが引き継いだ。

 

ヤン・ヘルツォーク

 南フリカ国防軍少将。バーロウ少佐の空中機動部隊構想に早い段階から理解を示し、その実現に尽力した人物で、同隊が異例とも言える早さで発足したのも彼の軍内部における政治力によるところが大きかったと言われる。

 

 

 

 

 

 

 脚注

*1:実際、南アフリカ軍で運用されているルーイカットやイスラエル軍で運用されているメルカバは敢えて主砲のグレードを下げることで携行段数を増加させ、継戦能力の向上を狙っている。

*2:南アフリカ国防軍空軍少佐。特殊コマンド空挺連隊の創始者

*3:原作ではこの傭兵部隊について詳しい記述はない。本稿においては「AWGSを運用出来る傭兵部隊となると、PMC並みのバックアップがないと無理だ」という考えから南アフリカを本拠とするPMC所属というオリジナル設定を加えた。

*4:仮想戦記に登場するロシア製の第二世代型AWGS。ヤークトパンターのスタイルを踏襲しつつロシア独自の技術を投入した新型機で、二基のクリモフ・ガスタービン・エンジンによる高い空中機動性を発揮する。

*5:仮想戦記に登場するイギリス製のAWGS。M16の車体にガスタービンエンジンを搭載したユニークな機体で、サティロス同様、限定的な三次元機動が可能となっている。

*6:実在する南アフリカ陸軍第44落下傘連隊を改編した即応部隊。三つの落下傘連隊を基幹部隊として独立した作戦行動が可能となっている。

*7:南アフリカ空軍が運用する汎用ヘリで、フランス製の汎用ヘリ、SA330ピューマに改良を加えた海賊版。乗員3名、兵員20名を輸送出来る。

*8:従来のフォルクスパンターにデネル社製の改造キットを装備した南アフリカ軍仕様の特殊バージョン。装甲防御力が若干増している他、高性能の夜間暗視装置が搭載されるなど、オリジナルに比べてやや性能が向上している。

*9:イタリア・アグスタ社が開発した汎用ヘリ。民間向けから軍用まで広く使用されているヘリであり、偵察型から近接航空支援型まで多くの派生型がある。