ガングリフォン・ムック(仮)

名作ゲーム、ガングリフォンシリーズについて考察するブログです。他のゲームも時々語ります。更新不定期。

第三次世界大戦戦後史・番外編⑦ ロシア共和国軍とロシア内戦

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当ブログで連載している仮想戦記の番外編第七弾。今回は仮想戦記第三弾「ロシア崩壊」のに登場するロシアのAWGSとロシア共和国軍及びロシア内戦についての文章を書き起こしてみました。設定遊びが好きな方、ご興味がある方は是非御覧下さい。

 *本稿はゲームアーツの3Dシューティングゲーム、「ガングリフォン」シリーズの内容を元にした架空戦記の番外編です。これ以前の内容については「架空戦記」カテゴリから閲覧することが出来ます。基本的に「GUNGRIFFON THE EURASIAN CONFLICT」から「GUNGRIFFON BLAZE」までの設定に準じていますが、一部に筆者のオリジナル設定も含まれていますので注意して下さい。
 また、本稿の内容は「第三次世界大戦戦後史・番外編 戦後のAWGS開発史」内の文章と一部重複する箇所がある他、現在の筆者の考えに基づき一部の設定を変更した箇所もありますが、ご了承下さい。

 

 

 

 

 

 

ロシア共和国軍とロシア内戦

 

ロシアにおける第二世代AWGS開発

 ロシアにおける第二世代AWGS開発の試みは、日米共同開発によるHIGH‐MACSのプロトタイプが完成した直後の2012年頃から既に始まっていた。この従来の常識を覆す画期的兵器の登場に刺激を受けたロシア軍は、アメリカへの対抗意識から直ちに同コンセプトの兵器の概念研究を始め、ロシア陸軍及び空挺軍向けの第二世代AWGS開発計画に着手したのである。実際の開発を担当したのはBMX歩行戦闘車を開発したシャバリン設計局と、ヘリ開発で実績のあるミル設計局であった。
 開発は当初、シャバリン設計局がイニシアティヴを取り、BMXの車体にヘリ用のガスタービン・エンジンを搭載する方向で進められた。しかし、BMXの車体では三次元機動の実現が困難であり、計画は難航した。パンターをベースにヤークトパンターを開発しようとして失敗した、ドイツと同じ轍を踏むことになったのである。
 また、畑の違う設計局同士の主張の対立や縄張り争いも計画を遅らせる大きな要因であった。あくまでも既存のAWGSをベースに開発を続けようとするシャバリン設計局に対し、新規の車体を提案するミル設計局の連携は当初から上手く行っていなかった。
 こうしたこともあり、計画は遅れに遅れた。大戦勃発後も開発は続けられ、BMX‐2のプロトタイプがロールアウトするが、満足な成果を得ることは出来なかった。その後も改良は続けられたが、目ぼしい成果を上げることもないまま戦局の悪化と共に計画は中止となり、敗戦とその後の内戦による混乱で計画自体が放棄されてしまうこととなる。
 しかし、内戦終結後の2017年になると状況が一変する。ロシア共和国政府は国内の深刻な食糧危機を解決する為には隣国ウクライナの穀倉地帯を再併合するしかないという判断を下し、弱体化したロシア軍の再建と軍拡を急速に推し進めた。この過程で一度は放棄された筈の第二世代型AWGSの自主開発計画に再び光が当たり、計画が再開されることとなったのである。


 ここでロシア版HIGH‐MACS開発に名乗りを上げたのがカモフ設計局である。カモフ設計局はKa-50ホーカム攻撃ヘリなどを開発した実績のある設計局で、HIGH‐MACS開発には欠かせないヘリ開発の豊富なノウハウを持っていた。これは丁度、HIGH‐MACSを開発したMDM社の前身であるマグドネル・ダグラス社がAH‐64アパッチを手掛けていたのと似ていた。
 カモフ設計局はHIGH‐MACSが登場した頃から独自にその分析を進めており、概念研究を続けた結果、従来のAWGSとは全く異なるアプローチが必要であることを掴んでいた。カモフ設計局はロシア軍に対し、車体を含めた完全な新規開発を提案。ロシア軍はこれを受け入れ第二世代AWGSの開発計画を再開させ、前回の反省に立ってトライアル方式で機体を選定することとした。このトライアルには有力候補とされたカモフ設計局の他に数社が参加し、シャバリン設計局とミル設計局も改めて新規の機体を提案した。


 最初にプロトタイプが完成したのはシャバリン・ミル設計局側であった。前回の失敗を活かした両社の案はドイツ製のヤークトパンターを模した堅実なもので、保守的な設計ながらも十分な三次元機動力を兼ね備えた機体となっていた。
 これに対し、カモフ設計局の試作機は同じヤークトパンターを参考にしながらも、空中機動性や空戦能力の更なる強化を狙いつつ、全く新しいコンセプトを実現しようとした野心的なものであり、やや遅れて完成した試作機はあらゆる評価テストでシャバリン・ミル設計局側の試作機を上回る性能を見せつけた。このテストの結果が決め手となり、トライアルはカモフ設計局が勝利。2019年の8月に「ヴァンピール」として制式化され、量産が開始されることとなったのである。

 しかし、紆余曲折を経て完成したヴァンピールが陽の目を見ることはなかった。ロシアはこの頃、ウクライナ北方領土への侵攻失敗と国連の経済制裁によって経済が低迷しており、 高価な第二世代AWGSを揃える余力がなくなっていたのである。部品価格の高騰もあって調達数は当初の計画を大きく下回り、代替機として一時的に導入されていたドイツ製フォルクスパンターを引き続き調達することで第二世代AWGSを揃える方針に転換されたのである。
 ヴァンピールが再び歴史の表舞台に登場するのは2021年の1月、モンゴル・ウランバートルにおける中露両軍の軍事衝突においてであり、中国・モンゴル軍を相手に多大な戦果を挙げ、日本の16式とも同等に渡り合ったとされる。

 

ブルータルクラブの衝撃と新たな試み

・HIGH‐MACS同様にロシア軍に衝撃を与えた兵器がもう一つあった。それはアメリカが開発したM19ブルータルクラブである。この機体は史上初の多脚型AWGSとなったM15ランドクラブの武装と装甲を強化した改良型で、強力な140㎜滑腔砲に40㎜機関砲と25㎜ガトリング砲、更に長距離タイプのL‐KEMまで兼ね備えた、正に動く武器庫であった。後にコンバットタイヤを装備したA1型が登場すると、走攻守が揃った最強の機体の一角として軍事関係者から評価され、ロシア軍もこれに対抗するために多脚型AWGSの開発に乗り出すこととなる。

 この計画が始まった時点でロシアはすでにIMR‐X戦闘工兵車とBMX歩行戦闘車の二機種を開発していたが、新たなAWGSにはそれらの機体とは全く別の性能が求められることとなった。ブルータルクラブを上回る不整地踏破性能と火力、装甲、機動性、ロシア軍の厳しい要求性能をクリアするために、トライアルに参加した各設計局は知恵を絞った。

 トライアルに参加した設計局にはBMXの開発で実績のあるシャバリン設計局の他、戦車開発で実績のあるモロゾフ設計局も参加しており、主任設計士であるウラジミール・バフチンを中心に試作機の開発が進められた。 

 バフチンはロシア軍の要求性能を慎重に検討した結果、その全てを満たすことは不可能と判断し、装甲防御力と火力を徹底して高めることを主張。武装には新開発の140㎜滑腔砲とKEMを搭載する一方、車体前部に新開発のカクタス装甲を装着することで防御力を高めた。これによる重量増加に対処するため、ブルータルクラブで採用されていた腕部はオミットし、対空用を兼ねた20㎜機関砲を砲塔上部に搭載することとした。

 こうして完成した機体は必ずしもロシア軍の要求性能を満たすものではなかったものの、装甲と火力の点ではブルータルクラブを上回っており、十分に対抗出来るだけの性能を有していた。

 

 そして2014年末、ロシア軍はモロゾフ設計局の試作案を次期主力多脚型AWGSとして選定し、直ちに開発の続行を指示するが、翌2015年2月に勃発した第三次世界大戦がこの機体を運命を大きく変えることになる。大戦中も開発は続行されたものの、戦局の悪化と共にロシア軍もこの機体に興味をなくし、大戦終盤に完成した試作機も倉庫の片隅で埃を被ることとなったのである。敗戦後のロシア国内の混乱もあって計画は頓挫し、長い間忘れ去られた幻の計画となっていた。

 この機体に再び陽の目が当たったのは大戦から3年後の2018年になってからで、深刻な食糧危機によって海外への膨張政策を取らざるを得なくなったロシア政府が、急速な軍備拡大を推し進めている最中のことであった。この過程で新たな新型AWGSを必要としたロシア軍は、忘れ去られていたモロゾフ設計局の試作機に注目。性能試験において比較対象となったM19ブルータルクラブやティーガーを上回る性能を示したことから、BMX‐19としてロシア共和国軍に制式採用されたのである。

 

 しかし、その高性能の代償として機体価格が上昇してしまったことから、ロシア軍は当初予定していた配備数を大幅に削減し、ごく少数の機体が一部の部隊に配備されるに止まった。このため、ロシア政府は貴重な外貨獲得の手段としてアラブ諸国などへの積極的な売り込みを図ったため、本国よりもむしろアラブ諸国での採用が進むという逆転現象が起きることになった。

 

 一方、戦前に行われたトライアルで敗れたシャバリン設計局は、その際に開発した試作機のデータを基に新たな機体の開発を進めていた。この機体は空挺部隊の火力支援用に開発された多脚型という珍しいコンセプトの機体であり、やはりシャバリン設計局が開発したBMX歩行戦闘車の性能を補完することが想定されていた。

 BMX自体は優秀な機体ではあったものの、二脚型特有の車高の高さと低い安定性から30㎜ガトリング砲以上の大口径砲を装備することが出来ないという弱点を抱えていた(副武装のATMは装弾数が8発と少なく、最小射程もある)。また、前大戦では不整地踏破性能の不足から歩兵部隊に追随出来ない場面も多く、実際の運用に際してやや柔軟性を欠くことが指摘されていた。

 

 シャバリン設計局はこれらの問題点を解消するべく、軽量の多脚型AWGSを空挺降下させるアイデアを発案し、2016年末頃から本格的な開発作業を開始した。不整地踏破性能と安定性に優れた多脚型ならば歩兵の行動にも追随出来る上に、より強力な火砲を搭載することも可能であった。

 空挺部隊向けということもあり、開発に当たっては軽量化が最優先とされ、装甲にはBMXと同じアルミニウム合金が採用された。これによる装甲防御力の不足を補うため、やはりBMXと同じくリアクティブ・アーマーを装備することで生存性を高めることとした。

 武装には作戦運用上の柔軟性を高めるために2A7・100㎜滑腔砲を採用する一方、副武装としてKEMを装備。これによって対戦車戦闘から火力支援まで幅広く対応することが可能となり、その高い不整地踏破性能と相まってより密着した火力支援が可能となった。

 こうして完成した機体は海外への戦力投射能力の拡充に努めていたロシア軍の目に留まり、数度の性能試験を経てBMX‐18パウークとして制式採用されることとなった。BMX同様にコストパフォーマンスに優れることもあり、こちらの機体は2020年からロシア空挺軍の各空挺師団に順調に配備が進められ、2021年のモンゴル騒乱やシベリアの戦いに投入された。

 

内憂外患に苦しむロシア

 ・2015年10月12日、APCとPEU、AFTAの三者間で争われた第三次世界大戦終結した。しかし、ロシアにおける戦いは終わっていなかった。戦闘終結宣言から十二日後の10月24日、ロシア共和国がサンクト・ペテルブルグへの遷都を決定した正にその日、軍のバックアップを受けた旧共産党派が蜂起し、放射能汚染の残るモスクワを首都としてロシア連邦政府の樹立を宣言、瞬く間に内戦状態へと突入することとなったからである。

 内戦はほぼ一年近くに渡って続けられ、アメリカやGEUをはじめとする旧西側諸国の支援を受けたロシア共和国の勝利によって幕を閉じた。

 しかし、前大戦に続くこの内戦がロシアの地にもたらした被害は深刻であった。2010年から続く凶作とそれによる深刻な食糧危機は国内に大量の餓死者を生み出し、内戦による戦火によって経済活動もストップし、国民の生活は極度に困窮した。それに追い打ちを掛けるようにして始まった急速な寒冷化は作物の生育を阻み、作付けを諦めた農民は土地を放棄して南へと流出、後には鍬を入れる者とてない畑だけが残された。

 追い詰められたロシア政府は武力による問題の解決を図り、周辺国に対する軍事侵攻を繰り返すようになる。2017年8月29日には穀倉地帯の併合を目指して再びウクライナに侵攻する一方、2019年には日本の北方領土に侵攻し、日本とロシアの企業が共同開発していた天然ガス施設を制圧し、資源の独占を図った。しかし、この時はどちらも日米を主体とする国連のPKO部隊によって阻まれ、逆に国連による経済制裁の対象となってしまう有様であった。

 

 しかし、2020年になるとロシアにとってまたとないチャンスがやって来る。アメリカ内戦の勃発である。首都ワシントンへの核テロ攻撃によって三つに分裂したアメリカは、北部と南部の衝突から瞬く間に内戦状態へと陥り、国外問題に関わる余力はなくなっていった。

 事実、この時を狙っていたかのように中国が独立していたチベットの併合に乗り出し、インドによる妨害を受けつつもこれを成功させていた。中国は更に周辺国に対して圧力を掛けてAPCを復活させ、対インド包囲網を敷いたが、これもアメリカの軍事的プレゼンスがすでに機能していないことを意味していた。

 

 そして2020年5月、アメリカの介入はないと見て取ったロシア政府はこのチャンスを最大限に活かすべく、大部隊を以てウクライナに侵攻。ロシアの強大化を恐れる東欧諸国やトルコの妨害を受けつつも、首都キエフを陥落させてドニエプル川以東の領土を併合したのである。

 しかし、苦労して併合したウクライナ東部の穀倉地帯は度重なる自然破壊と戦災でその大部分が砂漠化しており、ロシア政府が望んだような食糧危機の根本的な解決には至らなかった。それどころか、ロシアの南下を警戒するトルコはこのウクライナ侵攻を契機としてロシア政府に対する対決姿勢を強め、黒海を挟んだ緊張関係が生まれることともなったのである。

 

 このようなロシアの不安定な状況は黒海を挟んで対峙するトルコだけでなく、国境を接する全ての周辺国にとっても大きな脅威であった。それはロシアと軍事同盟を締結していたた中国も例外ではなく、先のインドとの紛争でロシアが密かにインド側に武器を供与していたこともあり、両者の関係は急速に冷却化していく。

 そして2020年末、記録的な寒波の到来を契機として起こったモンゴルにおける騒乱から、中国とロシアの関係は一触即発の事態へと発展する。親中派の政府とそれに抗議する民衆の衝突から起こった大規模な暴動は、鎮圧に出動した軍の一部部隊が民衆側についたことで一気に混迷の度合いを深め、ウランバートルに派遣されてきた中国軍とロシア軍が激しい市街戦を演じることとなる。

 この時には折からのマイナス70度という強烈な寒波によって両軍とも戦闘継続が不可能となり、辛うじて停戦が合意されたものの、これが両者の戦いの始まりに過ぎないことは誰の目にも明らかであった。

 これを裏付けるように、ロシアが翌3月に早くもウクライナ西部への侵攻を再開すると、中国はシベリアへの侵攻を決断。密かにシベリア各共和国の高官たちと会談し、中国・APC軍の侵攻と共にロシアからの独立を宣言することを確認していた。更に、侵攻に際しては先の内戦で中国に亡命していた旧共産党派が密かにサンクト・ペテルブルグでクーデターを起こし、ロシア政府の動きを抑える手筈になっていた。

 それはシベリアのエネルギー・鉱物資源と食糧を手に入れ、あわよくばロシアそのものをその政治的影響下に置こうという、中国政府の遠大な計画であった。この中国の用意周到な侵攻作戦の存在自体が、中国とロシアの軍事同盟が仮初のものに過ぎないことを如実に物語っていた。

 

 ロシアがウクライナを巡ってトルコと対立を深め、トルコ側の動きを牽制するためにバクー油田に侵攻すると、トルコ政府は中国・APCに支援を求めた。これを好機と見た中国は要請を快諾し、日本外人部隊の第504機動対戦車中隊をバクー油田に派遣。油田を占領していたロシア軍部隊を奇襲し、これを撃破することに成功する。

 更に、中国政府は国境に集結させたAPC軍と共にロシア太平洋艦隊司令部のあるウラジオストクを奇襲・占領すると、電撃的にモンゴルからロシア領内に侵攻。シベリア各共和国も密約通りに独立を宣言し、中国・APC軍を解放軍として迎え入れた。

 

 慌てたのはロシア政府である。首都でのクーデターこそ辛うじて鎮圧することが出来たものの、この間にも中国・APC軍は電撃的にシベリア東部を席巻し、現地のロシア軍部隊を各個撃破、或いはシベリア共同体軍として吸収しつつ、シベリア最大の都市であるノボシビルスクに迫っていた。更に、カフカス地方ではトルコの支援を受けたチェチェン、タゲスタン、イングーシなどの三共和国もロシアからの独立を宣言し、ロシアは大混乱に陥ったのである。

 

 そしてノボシビルスクAPC軍の手に陥落した4月になって、事態は急速に動き出す。カフカスとシベリアの二つの戦線で苦戦するロシアの苦境を救うべく、それまで反目し合っていたヨーロッパ諸国が急遽PEUを再結成し、ロシアへの派兵を決定したのである。エネルギーや資源の大部分をシベリアに依存するヨーロッパ諸国にとっても、ロシアの崩壊は見過ごせない事態だったのである。

 こうしてPEU軍が参戦したことにより、戦いの流れは一気に変わることとなる。PEU軍の先遣隊として派遣されたPEU・ドイツ軍とイギリス軍の空挺部隊によるAPC軍主力への奇襲攻撃を皮切りに、猛烈な反転攻勢を展開するPEU・ロシア軍。一方、守勢に立たされた中国・APC軍はノボシビルスク前方のオビ川を防衛線として頑強に抵抗し、戦いは次第に膠着化していく。

 

 時間の経過と共に事態はPEU・ロシア軍の優勢に傾いていく。PEU外交団の粘り強い交渉が実を結び、トルコ政府がロシア軍のウクライナからの完全撤退と北キプロス問題での大幅な譲歩、そしてトルコ自身のPEUへの加盟を条件に停戦に合意したのである。ウクライナからの撤兵はロシア政府にとって苦渋の決断であったが、背に腹は代えられない状況であったため、これを了承した。これによってシベリアに兵力を集中することが可能となったロシア・PEU軍の攻勢は勢いを増し、ノボシビルスクが陥落。中国・APC軍は劣勢に立たされ、シベリア東部のイルクーツクまで撤退することとなった。

 

 しかし、ここで誰もが予想しなかった事態が起こる。サンクト・ペテルブルグでのクーデター失敗後、オムスクからカザフスタンセミパラティンスクへと逃れていたロシア連邦軍がロシア軍の基地から強奪した移動式核ミサイルの内の一基をサンクト・ペテルブルグに向けて発射したのである。これによってサンクト・ペテルブルグは消失し、大統領を含むロシア共和国政府のメンバーも壊滅。ロシアは一時的に無政府状態となったのである。

 ロシア連邦軍は核による示威を背景に全世界に向けてテレビ放送を行い、全ての海外勢力のロシアからの撤退を要求。この事態を受け、APC軍とPEU軍は一時的な停戦に合意し、セミパラティンスクにPEU・ドイツ軍の第26降下猟兵旅団とイギリス軍の第16空中強襲旅団からなるHIGH‐MACS部隊が送りこまれた。両隊は激戦の末に残された核ミサイル三基の内の二基を破壊することに成功するが、一基の核ミサイルの発射を許してしまう。発射された核ミサイルはAPC軍占領下のウラジヲストクに投下され、市街を廃墟と化したが、事前に投下地点が予告されていたこともあり、人的被害は最小限で済んだ。

 

 二つの核ミサイルの投下によってロシア国内は大混乱に陥り、APCとPEUはこれ以上戦争を継続することが出来なくなった。ここに来て両者は制式に停戦に合意し、無政府状態となったロシアの平和維持と核兵器の適正な管理を行うことで一致をみる。ロシア国内でも直ちに超党派による政権が誕生し、国内の混乱収拾に当たった。

 しかし、一連の戦いによってロシアは更なる荒廃に追いやられ、国民の生活は窮乏の極みに達した。独立を反故にされたシベリアでは不満が燻り、テロが頻発する一方、カフカス地方では今なお戦闘が継続され、トルコの支援を受けたチェチェン・タゲスタン・ングーシ各共和国とロシア軍との紛争が続いている。 ロシアの民衆の春は遠い。

 

 

 

ロシア内戦関連年表

 

2015年
  • 10月9日、AFTA軍、ロシアの首都モスクワ占領。
  • 10月10日、PEU軍残党過激派がウラル山脈の戦略ロケット基地を制圧。AFTA軍占領下のモスクワは同基地より核攻撃を受けて壊滅。
  • 10月12日、AFTA軍、戦略ミサイル基地奪回作戦を成功させる。ロシア軍、無条件降伏を受諾。アメリカ、第三次世界大戦終結を宣言。ロシア軍の武装解除開始。
  • 10月24日、ロシア共和国、サンクトペテルブルグに遷都を決定。旧共産党派は、軍のバックアップにより、放射能汚染の残るモスクワを首都とする新政府、ロシア連邦の樹立を宣言。内戦勃発。
  • 10月末、治安維持を理由にロシア共和国軍の再武装開始。

 

2016年
  • 8月14日、ロシア共和国軍、ロシア連邦の首都モスクワを制圧。ロシア内戦の終結を宣言。ロシア連邦のメンバー多数が中国などに亡命。

 

2017年
  • 3月2日、ロシア軍、頓挫していた第二世代型AWGSの開発計画を再スタート。
  • 8月29日、ロシア、ウクライナに対して本格的侵攻を開始。
  • 9月3日、日本外人部隊・第501機動対戦車中隊はPKOとしてウクライナ・ボルタバ市街に派遣され、ウクライナ軍の撤退と市民の避難を援護。
  • 11月17日、ギリシャとトルコの継続的な紛争が全面戦争に移行。国連はトルコ側の一方的侵略と判断し、ギリシャに派兵を決定。先鋒として日本外人部隊・第501機動対戦車中隊と再編された第1空中機動師団をアテネに派遣、トルコ軍との戦闘開始。
  • 11月30日、中国・ロシアが軍事同盟を締結。

 

2018年
  • 9月、長期間雨の降らなかったモンゴルで大規模な山火事が発生。火は3ヶ間も消えず、国土の1/4を焼失。火事は隣接する中国やロシアの山々にまで及ぶ。

 

2019年
  • 2月21日、北方領土択捉島)で日本とロシアの企業が共同開発していた天然ガス施設に、協定を一方的に破棄してロシア軍が侵攻。
  • 2月24日、事態を重く見た日本政府は第502機動対戦車中隊を派遣。施設に拉致されていた邦人技術者の救助に成功。日本政府の迅速な対応に国民は拍手。
  • 8月、ロシア軍がカモフ社案の新型第二世代AWGSをKa‐75ヴァンピールとして制式化(アメリカ軍におけるコードネームはバルチャー)するも、資金難から生産数はごく少数に止まる。
  • 11月2日、ロシア軍、新型の多脚型AWGSをBMX‐19ヤーシリツァとして制式化するも、資金難から当初の計画よりも大幅に配備数を縮小。配備されなかった機体は中東諸国へ輸出される。

 

2020年
  • 5月、ロシアがウクライナに侵攻。ウクライナ軍は東欧諸国やトルコ・グルジアなどの支援も受けて果敢に抵抗したものの、ドニエプル以東地域の大半を占領される。
    5月、ゴラン高原イスラエルとシリアが衝突。イスラエル軍によってシリア軍の装備するBMX‐19数機が鹵獲される。
  • 11月、イスラエル軍、鹵獲したBMX-19を改造し、ミュルメクスとして制式化。
  • 12月、モンゴルで記録的な寒波。首都ウランバートルで行われていた親中派の政府に対するデモが暴動に発展し、騒乱状態となる。モンゴル政府は暴動鎮圧のために軍を出動させるも、市民に同情的な軍の一部部隊が市民側に回り、政府に対して反旗を翻す。
  • 中国、モンゴルの騒乱が内蒙古自治区に飛び火するのを恐れ、人民解放軍の投入を決定。モンゴル政府の要請という形をとってウランバートルに急派する。これに対し、モンゴルを中国との緩衝地帯としたいロシアもモスクワ軍管区の第106親衛空挺師団を急遽ウランバートルに派遣し、両者の睨み合いとなる。
  • 事態への対応に苦慮するモンゴル政府はGEUに調停を求めるが、結束の緩いヨーロッパ各国は一致した行動が取れず、対応はロシア政府に一任されることとなった。

 

2021年
  • 1月、ウランバートル市内でデモ隊と政府当局の部隊が衝突。デモ隊に加担する軍部隊が政府軍側に発砲したことを受けてウランバートル郊外で待機していた中露両軍もウランバートル市内に突入し、大規模な戦闘状態に突入する。ウランバートル市街戦。
  • 同日、第502機動対戦車中隊は劣勢に陥った中国・モンゴル軍支援のためにウランバートル郊外の南の草地に空挺降下。ロシア軍の猛攻を退け、市内の中心部を制圧することに成功する。
  • ロシア軍、国境で待機させていた機甲部隊の投入を決定。貧弱な国境守備隊を破ってウランバートルに迫り、中露両軍の間で激闘が繰り広げられる。
  • 1月末日、折からのマイナス70度という異常な寒気によって両軍の兵器、人員にトラブルが続出。戦闘の継続そのものが難しくなったため、両者は一時的な停戦に合意した。
  • 2月、カムチャツカ半島の火山群が一斉に噴火。舞い上がった火山灰がシベリアから極東アジアに至る広範囲の地域で日照不足を引き起こす。折からの猛烈な寒波の影響もあり、シベリア東部の交通はストップ。経済も停滞する。
  • 2月末日、ロシア軍がウクライナに侵攻。前年に併合したドニエプル川以東の地域から侵攻を開始したロシア軍は、ウクライナの首都キエフを電撃的に陥落させ、全土の制圧を目指す。ウクライナ政府はクリミア半島セヴァストポリに首都機能を移転し、徹底抗戦の構えを取る。
  • トルコ政府はロシア政府を非難し、紛争への介入を宣言。セヴァストポリ空挺部隊を送ってウクライナ支援の姿勢を鮮明にする。
  • 3月4日、トルコ軍が大規模な反攻作戦を実施。無傷のトルコ海空軍による強力な支援の下、トルコ海兵隊クリミア半島に上陸してロシア軍の進撃をストップさせる。
  • ロシア軍はトルコ側の動きを封じるため、南部軍管区の数個師団をもってアゼルバイジャンに侵攻。バクー油田を制圧し、グルジア、トルコを経由してヨーロッパへと延びる石油パイプラインを抑える作戦に出る。
  • トルコ政府は早期の内にパイプラインを奪回するべく、ウクライナ政府を通じて中国・APCに援助を要請。密かにシベリアへの領土的野心を抱く中国はこれに応じ、両者の間に同盟が結ばれる。
  • 3月9日、中国第15空挺軍の空挺師団と第503機動対戦車中隊がロシア軍占領下のバクー油田に空挺降下。海側からの奇襲でロシア軍を撃破して油田を奪回するも、撤退するロシア軍は油田に火をつけるという暴挙に出る。
  • 北京で中国政府とシベリア各共和国の高官が秘密裡に会談。シベリア側代表が中国・APC軍のシベリア進駐を要請し、中国政府もこれを快諾。
  • 3月14日未明、中韓を主力とするAPC軍が突如ロシア極東部に侵攻。第502機動対戦車中隊もロシア太平洋艦隊司令部のあるウラジヲストクに空挺降下し、激戦の末にこれを制圧することに成功する。ウラジヲストク陥落の報告と同時にシベリアの各共和国が独立を宣言し、ロシア政府はパニック状態に陥る。
  • 同日、ロシア共和国の首都サンクトペテルブルグで旧共産党派の部隊によるクーデターが発生。政府庁舎の入るマリインスキー宮殿が襲撃されるも、間一髪のところで大統領は難を逃れ、クーデター部隊も来援した第103親衛空挺師団の猛攻を受けて鎮圧される。
  • 動揺はモンゴル領内のロシア軍にも伝染し、各部隊が独断で本国への撤退を開始する。中国・APC軍はこれを追って執拗な追撃戦を展開、撤退するロシア軍に甚大な被害を与えつつロシア領内に逆侵攻し、シベリア共同体軍との合流を果たす。
  • ロシア旧共産党派の部隊がオムスクで武装蜂起し、ロシア連邦軍を呼称。カフカス地方でトルコ・グルジア軍が攻勢に出てロシア軍を撃退、チェチェン・タゲスタン・イングーシの三共和国にも独立の動きが広がる。
  • 3月、APC各国は中国の要請を受けてシベリアに部隊を派兵。韓国の数個機甲師団とタイ・マレーシア・インドネシアシンガポールなどからなる東南アジア諸国の部隊が続々と派兵される。日本もインド戦で活躍した第101及び第102機甲師団を増派。
  • 中国、ヨーロッパ諸国の動きを封じるため、シベリア鉄道の要衝カザフ共和国に寝返りを打診。カザフ政府に圧力を掛けるため、アゼルバイジャンで待機していた第503機動対戦車中隊に出撃が命じられ、バイコヌール宇宙基地に降下してロシア軍施設を制圧する。しかし、これに反発したカザフ政府は態度を硬化させ、GEUへの同盟継続を決定すると共に、GEUに支援を要請する。
  • 4月12日、APC・シベリア共同体軍がシベリアの中心的都市であるノボシビルスクを陥落させ、ヨーロッパ各国政府に衝撃が走る。
  • 4月14日、GEU諸国が緊急会合。ロシア救援のためにGEUの解体とPEUの再結成、PEU軍の再編成を決定し、先遣隊としてドイツ軍の第26及び第31降下猟兵旅団とフランス軍の第11落下傘旅団、そしてイギリス軍の第16空中強襲旅団などからなるPEU軍空中機動部隊がシベリアに派遣される。
  • 4月20日、オムスクに向かって進撃中のAPC・シベリア共同体軍、ドイツ軍の第26降下猟兵旅団とイギリス軍の第16空中強襲旅団による奇襲を受けて大損害を受ける。第502機動対戦車中隊はイギリスのHIGH‐MACS部隊を相手に果敢に戦い、これを撃退するものの、ドイツ軍のヤークトパンター部隊の猛攻を受けて壊滅。第101機甲師団も甚大な被害を受け、APC・シベリア共同体軍は撤退を余儀なくされる。
  • ほぼ同時刻、ロシア連邦軍の制圧するオムスクにもロシア共和国軍が進撃。ロシア空挺軍の第7親衛空挺師団とフランス軍の第1驃騎兵落下傘連隊及びフランス外人部隊の第1外人騎兵連隊も攻撃に参加し、これを奪回することに成功する。ロシア連邦軍の部隊は甚大な損害を受けるも、南のカザフスタンへと辛くも逃れた。
  • 5月、エジプト・シリア・ヨルダンを中核とするアラブ連合軍が三方からイスラエルに侵攻。イスラエル軍は開戦当初こそ戦いを有利に進めたが、アラブ側のミサイルの傘によって航空戦力を損耗。次第に劣勢に立たされる。
  • イスラエル政府はトルコに支援を求めるが、ロシアとの戦いで中東諸国の支援を必要としたトルコは直接的な支援を行わず、消極的な非難声明を出すに止まる。
  • トルコに見切りをつけたイスラエル政府は南アフリカ・OAUに援助を要請。これに応えてOAU軍がエジプトと国境を接するスーダンに集結を開始。
  • 5月、アメリカ北部連邦、西部連邦との間に結ばれた休戦協定を破棄。テキサス州から西部連邦領内に侵攻を開始。
  • 6月3日、トルコ政府がロシア・PEUとの停戦を発表すると同時に、PEUへの加盟を宣言。中国・APCはトルコ政府を非難するも、グルジアアゼルバイジャンも同日中に停戦に合意。ウクライナもロシアに併合された地域の返還を条件として停戦に合意し、戦いから離脱する。
  • 6月5日、ウクライナ国内に残っていた第503機動対戦車中隊は空路で撤退。途中、同隊を乗せたC‐17輸送機がトルコ軍機の追撃を受ける一幕もあったが、トルコ軍機は同隊の通過を黙認。
  • 6月7日、壊滅した第502機動対戦車中隊、千歳で再編。相次ぐ戦闘で16式だけでは定数を満たせなかったため、多少旧式化した12式(近代化改修型)を受領して即時シベリアに派遣される。
  • 6月14日、第502機動対戦車中隊、東南アジア諸国の合同部隊と共にシベリア鉄道襲撃作戦に参加。一時的にPEU軍の展開を遅らせることに成功するも、PEU軍の主力がノボシビルスク近郊に到達。ノボシビルスク攻防戦開始。
  • 6月20日、北京で食糧の配給を求めていたデモ隊と当局の小競り合いが大暴動に発展。鎮圧のために人民解放軍が投入されるも、一部の部隊が民衆側についたことから事態は緊迫。騒乱は中国国内の各自治区にも飛び火し、これに呼応するかのように敵対するインド・ベトナムも国境に部隊を集結して不穏な動きを見せたことから中国全土に混乱が広がる。
  • 6月、混乱は前線の中国・APC軍にも伝染し、ノボシビルスク前面の防衛線に乱れが生じる。これを好機と見たPEU軍は全線で攻勢を展開し、防衛線の突破を図る。これに対し、PC軍総司令部はノボシビルスクの保持は不可能と判断。全軍にイルクーツクまでの撤退を指示すると同時に、日本外人部隊に殿を命じる。
  • 6月26日、PEU軍がノボシビルスクを奪還。撤退するAPC軍を追って執拗な追撃戦を行い、日本外人部隊の第101機甲師団を壊滅させる。
  • 6月28日、オムスクから逃れていたロシア連邦軍の残党がカザフスタンセミパラティンスクを制圧。ロシア国内から持ち出していた移動式核ミサイルをサンクトペテルブルグに向けて発射し、ロシアは無政府状態に。APCとPEUを含むあらゆる外国勢力のロシアからの即時撤退を要求。
  • 6月29日、事態を重く見たPEUとAPCは一時的な停戦に合意。更なる核ミサイル発射阻止のため、PEU・ドイツ軍の第26降下猟兵旅団とイギリス軍の第16空中強襲旅団が直ちにセミパラティンスクに急派される。両隊は激闘の末に残された三発の内二基を抑えることに成功するも、あと一歩のところで残る一基がAPC軍占領下のウラジヲストクに向けて発射されてしまう。
  • 7月14日、APCとPEUは正式に停戦に合意。両軍のロシアからの撤退と同国の混乱収拾に向けて協力することで一致。

 

 

 

機体解説

 

Ka‐75バルチャー(カモフ設計局)

・ロシアが開発した第二世代型AWGS。開発計画そのものは戦前から存在していたが、紆余曲折を経て戦後にカモフ設計局がリードする形で開発が完了した。ロシア軍による正式名称は「ヴァンピール(吸血鬼)」だが、西側諸国においては米軍におけるコードネームである「バルチャー」が一般的な呼び名として定着している。
 基本的なスタイルはドイツ製のヤークトパンターを踏襲しているが、より空戦能力に重きを置いた設計がなされている。この為、スタブウイングはオリジナルよりもやや長めに取られており、その両端にフレア・ディスペンサーが装備されている他、装甲の形状も空力特性を考慮したより流線形に近いものとなっている。
 最大の特直は背部に装備された二基のクリモフ・ターボシャフト・エンジンで、それが生み出す大出力の推力と可変ノズルは他の第二世代AWGSと比べても高い空中機動性を機体に与えることに成功している。固定武装は改良型のGsh‐6‐30・30㎜ガトリング砲と2A70・100㎜低圧砲の選択式で、ヤークトパンター同様、ATMやロケットポッドも装備出来る。
 この機体は評価試験において高い評価を得てロシア陸軍及び空挺軍に採用されたものの、資金難から配備は進んでおらず、ごく一部の部隊に少数が配備されているに留まっている。 


BMX‐19ハンマーヘッドモロゾフ設計局)

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・ロシアが開発した四脚型AWGS。アメリカのブルータルクラブに刺激を受けたロシアが戦前から極秘に開発を進めていたもので、新機軸のコンセプトを多数詰め込んだ野心的な機体となっている。アメリカ軍によるコードネームは「ブラックジャック」。
 最大の特徴は車体を前面を覆う半円状の巨大なカクタス装甲で、複合装甲と爆発反応装甲を組み合わせた特殊装甲により高い防護力を発揮する。武装は低反動140㎜滑腔砲と長射程のL‐KEMを装備しており、申し分のない攻撃力を有している。
 本機は評価試験において高い評価を得てロシア軍に採用されたが、敗戦後の混乱と資金難から少数が配備されるに止まっており、むしろ中東諸国等で輸出仕様型の採用が進むという逆転現象が起きている。

 

BMX‐18パウーク(シャバリン設計局)

・ロシアが戦後に開発した四脚型AWGSで、開発はBMX歩行戦闘車で実績のあるシャバリン設計局が担当した。BMX同様に空挺部隊の火力支援用として開発された機体で、全備重量は22tと多脚型の割に非常に軽量である。BMX同様にIl‐76輸送機やAn‐122アントノフでの空輸が可能で、降下時にはパラシュートや逆噴射式ロケットを装備して降下する。空挺降下後は多脚型特有の高い不整地踏破性能を駆使し、いかなる地形でも歩兵部隊に追随して火力支援を行うことが可能である。

 主砲には100㎜滑腔砲、副武装にはKEMを装備しており、歩兵の直協支援から対戦車戦闘まで幅広い任務に適応出来る。軽量化のために装甲にはアルミ合金を採用しているが、砲塔と車体前部にリアクティブ・アーマーを装備することで生存性の向上を図っている。

 この機体は本国のロシア空挺軍で採用され、空挺師団の砲兵連隊などに配備されている。

 パウークはロシア語で「蜘蛛」を意味する。

 

BMX歩行戦闘車(シャバリン設計局f:id:sitri:20201203234807j:plain

・ロシアが開発した二脚型AWGS。小型・軽量を旨とするロシアらしい機体で、当初から空挺作戦を考慮して設計されている。装甲はアルミ合金製となっているが、全身にリアクティブ・アーマーを装着することで生存性の向上を図っている。武装にはZSU30機関砲とKEMを装備。日本のマニュピレーターは給弾等の各種作業に使う他、歩行時にはウェイトバランサーの役目も果たす。

 BMX-30は空挺師団の高射部隊用に改良されたタイプで、四基の対空ミサイルと対空レーダーを装備している。これによる重量増加に対処する為、リアクティブアーマーは取り外されている。

 コストパフォーマンスに優れることから戦後はインドや中東・アフリカ諸国を中心に広く普及が進んでおり、輸出市場でも成功を収めている。

 

 

 

 

 

脚注