ガングリフォン・ムック(仮)

名作ゲーム、ガングリフォンシリーズについて考察するブログです。他のゲームも時々語ります。更新不定期。

第三次世界大戦戦後史・番外編⑩ フロッシュとバルフンド

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 当ブログで掲載している仮想戦記の番外編第10弾。今回は仮想戦記中に登場するイタリア軍とそのオリジナルAWGSに関する設定を新たに書き起こしてみました。ご興味ありましたら是非ご一読下さい。


*本稿はゲームアーツの3Dシューティングゲーム、「ガングリフォン」シリーズの内容を元にした架空戦記の番外編です。これ以前の内容については「架空戦記」カテゴリから閲覧することが出来ます。基本的に「GUNGRIFFON THE EURASIAN CONFLICT」から「GUNGRIFFON BLAZE」までの設定に準じていますが、一部に筆者のオリジナル設定も含まれていますので注意して下さい。
 また、本稿の内容は「第三次世界大戦戦後史・番外編 戦後のAWGS開発史」内の文章と一部重複する箇所がある他、現在の筆者の考えに基づき一部の設定を変更した箇所もありますが、ご了承下さい。

 

 

 

 

 

 

フロッシュとバルフンド

 

スウェーデンとスイスにおけるAWGS開発の試み

 第三次世界大戦を通じてその有効性を証明した新兵器、AWGS。戦後はAFTA軍が鹵獲したヨーロッパ諸国やアジア諸国のAWGSが第三世界に大量に流出する一方、その開発技術も急速に普及し、イスラエルオーストリア、スイス、ブラジルといった国々でも次々に国産AWGSの開発計画が立ち上げられることとなった。

 これらのAWGS新興国の中でも取り分けて軍事関係者が注目していたのがスウェーデンである。スウェーデン武装中立を旨とする伝統的立場から国産兵器の開発に熱心であり、その装備も国情を反映したユニークなものが多かった。戦後世代の戦車としては珍しい無砲塔型のSタンクや水上航行能力を備えたlkv91はその最たるものである。

 

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戦後にスウェーデンが開発した第二世代戦車Strv103、通称「Sタンク」。砲塔をなくして主砲を直接車体に固定した突撃砲や駆逐戦車に近い戦車で、同世代の西側戦車より強力な長身砲タイプの105㎜滑腔砲を搭載している。また、無砲塔型特有の極度の低姿勢やディーゼル・エンジンとガスタービン・エンジンの併用、フロントにエンジンを置くことで乗員の生存性を向上させる設計など、ユニークな特徴の塊となっている。


 そのスウェーデンが満を持して開発したのが水陸猟の四脚型AWGS・フロッシュである。同機は湖沼や起伏の多いスウェーデンの地形でゲリラ戦を行うことを前提に開発されており、追加装備や大幅な変形機構に頼らずに単独で水上浮航する能力が求められた。この要求に応えるため、車体後部にはウォータジェットが装備されており、水上航行時にはその推進力で推力を得て単独で水上を航行することが可能となっている。

 浮力確保のために装甲は圧延防弾鋼板の全溶接構造を採用し、四脚型としては軽量な部類に入る。その分だけ装甲防御力も低くなっているが、状況に応じてリアクティブアーマーを装着することで防御力を補うことが可能となっている。

 基本武装も四脚型としてはやや軽装のボフォース社製40㎜機関砲だが、105㎜低反動滑腔砲も選択可能であり、対戦車戦闘もこなすことが出来る。ただし、105㎜低反動滑腔砲を装備したタイプは水上浮航能力に制限を受ける。また、オプションとしてKEMランチャーも装備可能である。

 

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水陸両用機能を持ったフロッシュ。Sタンクやlkv91同様に、スウェーデンの国防政策が色濃く反映された機体となっている。

 

 ユニークな機能と実用性を併せ持ったフロッシュは高く評価され、地理的条件の似た北欧諸国などで採用された。また、トルコでは海兵旅団用の後継機トライアルでアメリカのM15A1シークラブを破って選ばれており、2021年3月に勃発したロシア内戦ではクリミア半島上陸作戦においてその性能を如何なく発揮することとなった。

  また、内戦後半にはロシア救援のために駆け付けたPEU北欧諸国合同軍の主力としても活躍し、APC軍をシベリアから追い払うのに貢献した。

 このフロッシュの登場以降、水陸両用機能は戦後のAWGS開発における一種のトレンドとなり、ブラジルのラーナやアメリカのアリゲーターといった水陸両用AWGSが続々と登場することになる。AWGSの中でもトップクラスの実用性を持つと言われるM15A1が先鞭をつけた水陸両用機能を継承したという点でも、フロッシュの存在は非常に大きいものがあると言えるだろう。

 

 スウェーデン同様に戦後になって新たにAWGS開発に参入したのがスイスである。永世中立を国是とするスイスは前大戦にも参加せず、また、その国土も戦火に巻き込まれることはなかった。しかし、国土の大半が山岳部ということもあってスイス陸軍は大戦前からAWGSに高い関心を寄せており、ドイツ製のティーガーやイタリア製のリットリオなどを導入して運用データの収集に当たっていたのである。

 AWGSの有効性が実証された大戦後の2016年になると、スイス陸軍は同国の国情に合わせた独自のAWGS開発の必要性を感じるようになり、国産AWGSの開発プロジェクトを正式にスタートさせることになった。このプロジェクトにおいて求められたのは何よりもアルプスの山々を踏破可能な高い不整地踏破能力で、他の性能は二の次とされた。

 トライアルに参加したモワク社はこの要求に沿って機体の開発を進め、脚部の関節を増やすことでどのような地形でも柔軟な姿勢を保てる独特の歩行システムを考案。こうして開発されたのが四脚型のバルフンドで、AWGSとしては小柄な部類の機体ながらその不整地踏破性能はリットリオに次ぐ性能を持っていた。同機は評価試験で群を抜く成績を収めて見事トライアルに勝利し、スイス陸軍への制式採用が決定。後にスイスだけでなく北欧・ベネルスク諸国などでも採用され、輸出市場でも成功を収めることになった。

 

 バルフンドはその汎用性の高さから数多くのバリエーションが作られることになったが、その中でも取り分けて目を引くのが工兵部隊向けに改修されたバルフンド・アインハンダーである。

 この機体は通称型のバルフンドの車体から武装を取り払い、名称の由来となった一本のクレーンアームとドーザーブレードを装備可能なアームを備え付けた工兵用車輛で、その高い不整地踏破性能を活かして通常の工兵車輛では登っていけない急斜面などでの回収作業にあたることが任務とされた。車体後部には機体の名称の由来となった一本のクレーンアームと前腕駆動用のAPU(補助電力装置)が備え付けられており、あらゆる状況下での作業が可能である。

 このアインハンダーは通常型のバルフンドと共に北欧諸国の工兵部隊などでも採用され、シベリアの戦いにも多数の機体が参加。破壊された味方車輛の回収や障害物の除去などの任務で活躍した。

 

 このフロッシュとバルフンドは水陸両用と山岳地用の違いこそあれ、AWGS本来の長所である不整地踏破性能の向上を狙ったという点でそのコンセプトは共通していた。装甲・火力共に戦車に劣るAWGSにとって、やはり最大の特徴は不整地踏破性能なのである。

 一方、オーストリアではこれらとは全く別のアプローチからAWGSの可能性の追求が試みられた。それがダイムラー・シュタイアー・プフ社の開発したフサリア歩行戦闘車である。

 最大の特徴は高度に共通化された車体コンポーネントの拡張性の高さで、砲塔や各部パーツの交換によって多彩な任務に対応することが可能となっている。また、モジュール装甲を採用しているため、新たな装甲素材が開発された際にも早急に対応出来るのもメリットである。

 AWGSとしては後発の部類に入るため、全車にコンバットタイヤが標準装備されており、機動性も高い。多様な要求に応える拡張性の高さも相まって途上国などでも採用の動きが広がっており、普及が進んでいる。

 各国ではすでに同車の砲塔を交換して取り付けた独自の派生型なども登場しており、将来的には前線で規格統一されたパーツを組み替えることも検討されていると聞くが、これはややテレビゲーム的な発想に過ぎるだろう。

 そもそも、そのような多様なパーツを前線で管理出来る状況がどれほどあるのか疑問であるし、パーツの交換・整備、移送やそれに伴う労力を考えると、むしろ兵士や兵站の負担を増大させる可能性が高い。現状ではこれを実現するためには様々な難問をクリアせねばならず、また、その労力の割に効果は薄いと言わざるを得ない。

 とは言え、こうしたことが検討されているということ自体が、AWGSの開発技術が一般化して来たことを示している。この機体はAWGSの新たな可能性を示すと同時に、AWGSが現代の兵器体系の中に確実にその地歩を固めたことを例証する存在ともなっている。

 

 

 

機体解説

 

グスタフ(ボルシェ/クルップMak)

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右がグスタフのベースとなったパンター。ドイツが生み出した傑作機である。

スウェーデン版のパンターで、脚部にコンバットタイヤを装備したストゥームパンターをベースに各所に改良を加えている。オリジナルとの最大の違いはその装甲防御力で、胸部を中心に増加装甲を装着して生存性を高めている。また、内部の電子機器もよりグレードの高いものに変更されている。

 これらの改良によってオリジナルを遥かに凌駕する性能を獲得するに至った本機は、数あるパンターのバリエーションの中でも最強の性能を持つ機体の一つと考えられている。

 

フロッシュ(ボルボ/BAE)

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スウェーデンが開発した四脚型AWGS。森林と湖沼の多い同国の地形に合わせて水陸両用として設計されており、単独で河川を渡河出来る水上浮航野力を備えている。短時間ならば水中に潜航することも可能で、水中に潜んで敵を待ち伏せするゲリラ的運用が想定されている。

 装甲は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、密閉性を高めている。主武装は四脚型としてはやや軽装なボフォース製40㎜機関砲だが、より強力な90㎜低圧砲を装備したタイプも存在する(ただし、90㎜低圧砲タイプは水上浮航能力に制限を受ける)。本機はスウェーデン陸軍に採用された後、地理的条件の似た北欧各国やトルコでも採用されている。

 

バルフンド(モワク)

・偵察用に開発された四脚型AWGS。コンパクトな車体に低い姿勢、単独での水上浮航能力等、随所にユニークな特徴を兼ね備えた車両となっている。歩行システムもスタイルこそオーソドックスな四脚型だが、他のAWGSよりも関節の多い脚部により多脚型の中でも一際高い不整地踏破性を備えており、険しいアルプスの地形でも難なく走破することが出来る。

 装甲は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、固定武装は30㎜機関砲のみとなっているが、40㎜機関砲や90㎜低圧砲を搭載したタイプも存在する。また、オプションとして小型KEMランチャーも搭載可能となっている。

 その不整地踏破性の高さが評価され、本国のスイス陸軍だけでなく、オーストリアやイタリアの山岳部隊、スウェーデン等の北欧諸国でも広く採用されている。

 

バルフンド・アインハンダー(モワク)

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・バルフンドに工兵隊向けの改修を施した車両回収車仕様。不整地における優れた姿勢制御を活かし、通常の回収車両では対応出来ない急斜面等での車両の回収や障害物の除去作業を行う。

 車体上には名前の由来となった大きな一本のクレーンアームを装備しており、車両を回収する際などに使用する。車体前部に追加された二本のアームはドーザーブレードを装着しての塹壕構築や障害物の撤去作業等に使用出来る他、クレーンアーム使用時や歩行時に車体を支える為のリフトアームとしての機能も果たす。これらのアームは全て電気駆動式となっており、車体後部に増設された補助動力で駆動する。

 本格的な戦闘任務は考慮されていない為、武装は自衛用の20㎜機関砲のみとなっている。

 

フサリア歩行戦闘車(シュタイアー・ダイムラー・プフ)

オーストリアが開発した四脚型AWGS。最大の特徴は高度に共通化された車体コンポーネントによる拡張性の高さで、偵察型や火力支援型、指揮車型や対戦車型などの多種多様な派生型を生み出している。装甲もモジュラー式の為、拡張性や整備性に優れ、パーツを少し変えるだけで様々な任務に対応することが可能となっている。AWGSの中でも後発の機体の為、コンバットタイヤが標準装備されているのも大きな特徴。

 最も一般的な偵察型の武装は30㎜機関砲とKEMが基本だが、90㎜低圧砲や105㎜低反動滑腔砲を装備した対戦車戦闘能力を付与したタイプも存在する。その汎用性の高さから本国のオーストリア以外にもベルギーやアルゼンチン、ガボン、ナイジェリア、アルゼンチンなどが採用している。

 フサリアとは近世の軍隊で流行した「有翼騎兵」を意味する。

 

 

 

 

 

脚注