ガングリフォン・ムック(仮)

名作ゲーム、ガングリフォンシリーズについて考察するブログです。他のゲームも時々語ります。更新不定期。

エジプトの守備隊、チベットのトーチカ、ウェイファンの砲兵陣地

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初代ガングリフォンを象徴するステージが連雲港であることに異論を挟む人は少ないと思うが、その次のステージであるウェイファンも中々どうして印象深いステージの一つである。

 

このステージは中国本土北部に向かって撤退する味方部隊を援護し、追撃してくるアメリカ・AFTA軍の猛攻から守り切る護衛ミッションである。恐らく、難易度的には連雲港とそう変わらない難しさで、シリーズでもトップクラスの難関ステージの一つと言える。

 

その難しさの大きな理由は後半に大量に登場するM19A1ブルータルクラブ(通称、蟹)部隊に帰せられる。連雲港同様に連続して現れるこの高速機動AWGSは作中でもトップクラスの早さでプレイヤーを翻弄する難敵で、これが次々に現れて味方部隊目掛けて突撃してくるのだからたまらない。

 

一度接近を許せば照準に捉えることすら困難で、仕留め損ねた蟹に気を取られている内に後続の蟹部隊がどんどん進出してきて、気付けば周囲は蟹だらけという、正に悪夢のような光景がしばし生まれる。

 

これを回避するためには蟹の現れる方角の戦闘エリア境界線上で待ち、出現と同時にATMで撃破するのがセオリーだが、連雲港と違って敵の出現位置が離れて設定されているためにやや難度が高くなっている。しかも、蟹との激闘の後には三体ものVW‐1が登場し、異常なほどの正確さを誇るGUNを鳴らしながら突撃してきて、疲弊したプレイヤーにプレッシャーを掛けるのだからその鬼畜振りここに極まれりである。

 

はっきり言って、これが現実の戦闘だったら100%脱出することは不可能だろう。実際、このステージをクリアしたすぐ後で、プレイヤーの所属する第504機動対戦車中隊と味方部隊はアメリカ軍への投降を余儀なくされ、彼らの戦いはひとまずの終わりを見ることになる。

 

しかし、このウェイファンの特色は実は前半にある。そして恐らく、前半部に関して言えば連雲港より難易度は上かも知れない。というのも、ウェイファンには連雲港にはない、厄介な敵の砲兵陣地が存在するためだ。

 

ここで言うウェイファンの砲兵陣地とはマップ中央付近、味方部隊の撤退路上のすぐ脇の起伏に囲まれた地形に設けられた敵部隊の陣地のことを指す。ここにはアメリカ軍のADATS(もしかしたらM12LOSATだったかも知れない)とMLRSとV‐22オスプレイが配置されており、その外周を数両のM1A3戦車が警護している。

 

このステージをプレイしたプレイヤーなら分かると思うが、実はこの陣地、ちょっとやそっとのAWGS部隊より遥かに厄介な存在なのである。というのも、このM1とADATS、MLRSの三種の通常兵器が有機的に組み合わさることで、非常に強固な防衛システムとして機能しているからだ。

 

この陣地を放っておくと味方部隊にも被害が及ぶため、自然、プレイヤーはこの陣地を潰すために接近することになる。しかし、外周を警護するM1の足止めを受けている間に陣地内のMLRSが砲撃を行ってきて、プレイヤー機に大量のRPを降り注いでくるのである。しかも、陣地の周囲を囲む起伏のせいでMLRSの姿を見ることは出来ないため、外周から先制攻撃を喰らわせるのは不可能である。

 

では先にMLRSを破壊しようとローラーダッシュからのジャンプで陣地内部に突っ込むと、今度は待ち伏せしていたADATSによるATMの猛連射を受けて大ダメージを喰らい、最悪そのまま撃破されてしまうことになる。この二段構えの対策によってこの陣地はシリーズでも一際強固な防御力を発揮しており、その実に嫌らしい配置と共に強いインパクトをプレイヤーに残す。

 

もっとも、攻略法が全くないというわけではない。MLRSの射程に入らないようにGUNでM1を射程ギリギリから倒し、ジャンプで陣地内に飛び込んで中の部隊をRPで一気に殲滅すれば良いのだ。このように、一度攻略法を確立すれば難易度はグッと下がるわけだが、少しでも操作を誤れば返り討ちになること必至の厄介な陣地であることに変わりはない。

 

しかしながら、この砲兵陣地のギミックは実に良く練られたもので、筆者は結構好きである。ゲームとしても面白いが、そこに配置された兵器の本来の運用方法から言っても理に適っている上に、三種の兵器が有機的に組み合わせられた実に美しいシステムを形成していると思うのだ。この辺りが筆者がウェイファンを好きな理由だったりする。

 

 

 

さて、そこで筆者はこのような「防御陣地」ないし「複数の敵が組み合わさることで強烈な防衛力を発揮しているシチュエーション」は他にもあっただろうかと考えてみた。その結果、上記のような条件に当てはまるステージ、それに準じるステージは次のものではないかという結論に至った。

 

ノボシビルスク

チベット

・エジプト

 

この内、最も分かり易い例はチベットだと思う。中国軍によって再併合されたチベットの解放を目指すこのステージは、シリーズでも珍しい要塞攻略型のステージで、防衛用のトーチカが多数登場するという点でも特異なステージである。

 

狭い山道に配置されたコラートと13式を倒して山頂に到達すると、待ち構えている巨大トーチカ陣地の出迎えを受けることになる。この陣地を突破して破壊目標のある奥に向かうには、トーチカを狙撃で破壊するか、或いは接近してトーチカの砲の俯角が取れない真下に潜り込む必要があった。そもそも、それを突破した先に待ち構えている破壊目標ホットケーキも、山頂に設けられた三台の巨大砲台だ。

 

もっとも、難易度で言うとウェイファンほどの難しさはない。というのも、トーチカ自体は連射型GUN二発で破壊出来る上に、近くには遮蔽物となる壁も存在するため、そこに隠れて狙撃すればかなり安全に破壊出来てしまうためだ。また、同時に登場するティーガーやホーカムとの連携もそこまで密接なものではないため、ウェイファンほど苦戦はしないだろう。

 

初代に狙撃モードがあったら、或いはブレイズに狙撃モードがなかったらこの限りではないのだろうが、何も考えずに突っ込めばボロボロにされてしまうことには変わりがなく、慎重な行動が求められるステージではある。

 

逆に、エジプトにはトーチカのような要塞型の防衛施設はも何も存在しないが、チベットよりもう少し有機的な防衛陣地が形成されているように思う。

 

エジプトのスエズ運河を制圧し、イスマイリア軍港に立て籠もる南アフリカ・OAU軍の排除が目的となるこのステージは、全部で三つほどのシークエンスに分けられる。それはスタート地点である砂丘の戦いと、中盤の軍港ゲート前に展開する敵守備隊との戦い、そして終盤の軍港内部における戦いの三つのシークエンスである。

 

スタート直後に始まる砂丘での戦いは、サティロスとビットヴァイパーという二つのAWGSと戦うことになる。この二体の敵はどちらも厄介な存在で、サティロスは耐久力が高い上に遠距離からはATM、近距離ではグレネードを連射してきてプレイヤーに大ダメージを与えてくる。

 

ビットヴァイパーは攻撃力自体はそこまでではないものの、非常に小型の上にすばしっこいので照準に捉え辛い。おまけに砂の中に潜りこむわ、大ダメージを喰らうとプレイヤー機の近傍で自爆するわ、超絶イライラムーブをかましてくる。しかも、戦場となる砂丘自体が見た目よりも起伏が大きいために戦いづらく、序盤の内に思わぬ大ダメージを喰らうことも少なくない。

 

これを突破すると、軍港ゲート前の開けた砂地に展開する敵の本隊が見えてくる。その陣容は前衛のレオパルドⅢを先頭にそれを援護するように展開するバリアント、ツングースカ、そして基地を囲む崖沿いに配置されたエレファントで構成されており、ここがウェイファン以上の強固な防御力を発揮する。

 

砂丘を突破した後、何も考えずにこの本隊に突っ込んだプレイヤーは地獄を見ることになるだろう。前衛のレオパルドⅢの主砲に叩かれ、バリアントの76㎜ライフル砲に叩かれ、ツングースカのATMに追い立てられ、シリーズ最強の威力と射程を持つエレファントの140㎜滑腔砲に殴られる。泣きっ面に蜂どころか、泣きっ面に象である(またウマいこと言ってしまったゾウ?*1)。

 

この守備隊の中でも取り分けて問題なのは最後方に位置する四機のエレファントで、重装甲のために多少の攻撃ではびくともしない上に、16式の連射型GUNでは狙撃しても十分に近づかないと弾かれてしまう。おまけに長射程の140㎜砲がウェイファンにおけるMLRSのRPと同じ役割を果たしており、かなり遠い距離からでもこちらを認識して強力無比な砲撃を繰り返してくる。この主砲に狙われるプレッシャーはMLRSのそれの比ではなく、遮蔽物に隠れながらでもなければまともな戦闘が出来ない。

 

また、地味に痛いのがバリアントの76㎜砲で、直撃すると結構な衝撃が来て機体の視点が変わってしまうため、極力回避したい。バリアントは耐久力も高く、中途半端な距離からの狙撃だと弾丸が弾かれる場面が多い上に、他の機体に比べて上面装甲が若干狙いにくいなど、防御面でも隙のない相手だ。

 

更に、これらに気を取られている内にツングースカのATMが飛んで来る。こちらも有効範囲が広い上に、直撃するとかなりのダメージを受けるため、常に警戒を怠ってはならない。

 

レオパルドⅢ、ツングースカ、バリアント、 エレファント。この四種類の敵が有機的に形成する防御陣形はウェイファンの砲兵陣地より規模がかなり大きく、そのカバーする範囲の広さもさることながら、その防御力の点でもより強固である。

 

さて、ではこのゲート前守備隊を攻略する手立てはあるのか?

 

勿論ある。しかも、ウェイファンのそれよりも楽かも知れない方法が。それはスタート地点から見て左側の侵攻ルートを通り、バリアント二機が陣取っている小高い丘の上からジャンプして軍港を囲む崖の上に登る方法である。この崖の上からだとエレファントの上面装甲を狙えるため、正面から挑むのとは比べ物にならないくらい素早く、安全に倒すことが可能になる。

 

勿論、崖の上にはそれを見越してトラップの爆弾が仕掛けられている上に、地上のエレファントやツングースカ、バリアントもこちらを狙って攻撃を仕掛けてくるため、油断は出来ないのだが、崖の斜面を使って敵弾を防ぐことが可能だ。加えて、敵の上面装甲を狙い放題のため、破壊するのに必要な弾数もグッと節約出来る。正面突破するよりも遥かに少ない労力で敵の守備隊を撃破出来てしまうわけだ。これは特に、HELLモードのを素状態でプレイする場合などには必須の攻略法となる。 

 

もちろん、手段を選ばないならブレイズで一気に増えたオプショナルウェポンを使うのも良いだろう。クラスター爆弾で広範囲の敵を一挙に片付けるのも良い手だし、少々勿体ないが、燃料気化爆弾で部隊ごと吹き飛ばしてしまうのもアリだ。或いは、強力な貫通砲やATMを装備した9式や13式なら正面からでも突破することも可能だろう。

 

このように、エジプトもウェイファン同様、攻略法が見つかるとその難易度がグッと下がるという点は共通している。おまけに、この攻略法を使うとエジプトで怖いのはほぼ最終盤に登場するクイーン三機だけになるので、その辺りはちょっと攻略法が固定化されてしまってつまらないなと思ったりもするのだが*2、それはそれとして敵の防御機能が有効に発揮されたステージと言って良いだろう。

 

また、筆者は長らくブレイズから自走砲というジャンルが削除された理由が分からなかったのだが(他の兵器のようにモデリングすら用意されていない)、もしかしたらエレファントにそのヒントがあるのかも知れない。

 

すでに書いたように、エジプトのエレファントの主砲はその威力・射程共に初代の砲兵以上で、かなりの距離から砲弾が飛んで来る。これは狙撃モードを実装し、拡大した交戦距離に合わせた結果であるが、もし自走砲を登場させた場合、 その射程はこのエレファント以上にならなければならない。

 

そうなると、現実の自走砲と同じくこちらが視認出来ない距離から撃たれることになり、それこそフィールドのどこにいてもほぼ射程範囲ということになりかねない。ブレイズのステージが旧作に比べて拡大したのは確かだが、もしエレファントの射程を超える自走砲を登場させた場合、ブレイズのフィールドでも狭く感じてしまうだろう。

 

また、自走砲榴弾は空中から降り注ぐため、遮蔽物によって避けるのが難しく、トンネルのような天井のある場所にでも入らねば避けることは出来ない。それこそフィールドのどこにいても空からRPが降り注いでくるのでは、落ち着いて狙撃が出来ない可能性があるのだ。と言って、フィールドをこれ以上大きくすればデータ処理や容量の問題に直面するであろうことは目に見えている。

 

この辺りが砲兵隊が削除された理由なのかも知れない。入れようと思えば入れられたのだろうが、いっそ砲兵を削除して有視界戦闘に限定した方が良いという判断があったのかも知れない。エレファント以上の長大な射程を持つであろうと予想される自走砲が存在しないという事実は、同時にブレイズのフィールドの限界を示すものなのかも知れない。かも知れないばっかりですいませんかも知れない。

 

 

 

さて、最後は前回の記事でも取り上げたノボシビルスクである。

 

もしかしたら、「ノボシビルスクに防御陣地ないし強力な守備隊なんてあったか?」という人もおられるかも知れない。実際、ノボシビルスクにはウェイファンやエジプトのような大規模な防御陣地も防衛部隊もいない。

 

にも関わらずこの例として挙げたのは、ステージ全域を覆う「森」と「吹雪」そのものが防御機能の役割を果たしていると考えられるからである。

 

前回の記事でも触れた通り、ノボシビルスク全域に広がる森は自機のレーダー機能やローラーダッシュを阻害する、正に自然の障壁であった。これに加えて視界を落とす吹雪のせいで視界も狭まっており、とにかく敵の位置を把握し辛い。おまけに、レーダーに映らない森の中に伏兵部隊が置かれているため、不用意な行動は大きな危険を伴う。

 

スタート地点の前方奥、鉄道沿線の一歩手前辺りの森に展開しているツングースカとBMXの部隊はその最たるものであり、知らぬ間に近づいてMGの猛連射を喰らって大ダメージを受けるということが頻発する。また、攻略中ではパンター2機のコンビが増援として何度か登場するが、これも森の中を進んでくるために接近に気付かず、補給ヘリが撃墜されたり、味方部隊への被害が拡大することが多い。

 

これらの敵はエジプトやウェイファンのそれに比べればいずれも小規模な部隊であるが、森と吹雪のせいで実際の戦力以上に厄介な敵となっている。破壊目標となる列車の到着直前には増援として数体のAUTRUCHEとツングースカが現れるが、こちらも数体を同時に相手にすると被害が拡大するので、出来れば戦闘エリアに入る前に各個撃破しておきたい相手である。

 

さて、このように見てきて気付いたのだが、Ⅱには上記のような敵が守備体制を固めたステージはなかったように感じる。強いて言えばタンチェンやチーナンがそれに当たるのかも知れないが、タンチェンは敵が守備体制を取っていると言ってもウェイファンのような強力な陣地を形成しているのではなく、筆者の想定からは少し外れる。

 

チーナンはもう少し当てはまるような気もするが、二本の狭い橋の上に部隊が展開しているだけなので、有機的な防衛体制を構築しているとまでは言えないだろう。もっとも、裏技でジャンプ出来ない機体などを使用する場合は印象も大分変わってくるのだろうが、少なくとも12式改などを使う限りはそこまで困難も感じないはずだ。

 

恐らく、これは敵のAIの進化やそれによるドッグファイトに重きを置いた結果だと思う。百霊廟のミヒャエル・ハルトマンとの決闘のように、敵AWGSとの高機動戦こそⅡの醍醐味であり、それが故に初代のウェイファンのようなステージ構成はむしろ地形戦を軸としたブレイズに多くその子孫を見ることになっているのかも知れない。

 

とまぁ、今回は守備を固めた敵を中心とするステージをいくつか見てきた。ウェイファン、チベット、エジプト、どれも攻略しがいのある楽しいステージである。ただ、この中でどれが好きかと聞かれたら、やはりウェイファンを選んでしまうかも知れない。前半の砲兵隊もさることながら、後半に続々と現れる蟹やVW‐1との戦闘が楽しいのもその理由だ。あの緊張感は中々癖になるものがある。

 

エジプトも決して悪くはないのだが、効率を追求すると攻略ルートが限定されてしまうのがちょっと面白くないなと個人的には思う。また、後半のクイーン三機もまともに旋回戦を挑んで倒すのはまず無理なので、どうしても外からチビチビ倒す方法になりがちなのが辛い。手段を選ばないならクイーン到着前にモーションセンサーを巻いておいたり、空からクラスター爆弾を降り注いだり、燃料気化爆弾を打ち込むなど色々方法はあるのだが、素の状態だと入り口のところから連射型GUNを小まめに当てていくくらいしか確実な方法がないのが何とも面白くない。13式に至っては、何をいわんやである。

 

とは言え、エジプトやチベットのステージ構成を見るにつけ、そこにウェイファンの砲兵陣地の名残のようなものを筆者は見てしまう。ノボシビルスク同様に、ウェイファンもまた後のシリーズのステージ構成に大きな影響を与えたステージの一つだったと言えるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

脚注

*1:タヒネ。

*2:ブレイズのステージの特徴の一つが展開の多様性やリプレイ性の高さであることを考えると、エジプトはやや変化に乏しいステージになってしまっている。