ガングリフォン・ムック(仮)

名作ゲーム、ガングリフォンシリーズについて考察するブログです。他のゲームも時々語ります。更新不定期。

滝の上のコラート

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まるでジブ〇映画のタイトルみたいな記事タイトルだが、勿論、こんなタイトルのジ〇リ映画は存在しない。これはブレイズのチベットに登場するタイ製のAWGSコラートとそれがいる場所を差した言葉であり、ガングリ界隈では「チベット名勝十選」*1にも選ばれたことのある由緒正しき景勝地でもある。中でも「滝の上のコラート」に「洞窟の中のコラート」、「岩の下のコラート」を加えた「チベット三大コラート」はつとに有名であり、チベットを訪れる者の目を楽しませてくれるという。

 

今回、ガングリフォン・ムック(仮)取材班は個性豊かなコラート達が多数生息するという秘境・チベット高原はラサに飛び、そこに生きるコラート達の知られざる生態に迫った。地球に残された最後のコラートの里とも呼ばれるラサ。そこで取材班が目にした、コラート達の驚くべき生態とは?

 

これはヒマラヤの高山地帯に生きるコラート達を20年に渡って見つめた取材班による、80万字にも及ぶ渾身のルポタージュである(嘘です三日で書きました。ついでに10000字です)。

 

 *本稿は肩の力を抜いてお読みになるようお勧めします。間違っても年代物の上等なワインとつまみをご用意して読んだりなさいませぬよう。無駄になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレイズ三大コラート

 

滝の上のコラート

はい、ここからはいつも通り行きます。

 

さて、早速だがまずは「滝の上のコラート」から見て行こう。 

 

この「滝の上のコラート」、チベットのどこにいるのかすぐには思い出せない人もいるかも知れないので一応書いておくと、滝の上にいる。スタート地点の反対側、右手に見える崖沿いに進むと階段状の滝と滝つぼ、そこから静かに流れる川が見えてくるのだが、この滝の中腹で修行中の修験者の如く滝の水を頭から被っているのが第一のコラート、「滝の上のコラート」である。

 

この滝つぼ付近にはもう一匹一機のコラートと一機のティーガー、二両の5式戦場防空車輛が展開しているが、それらは皆地上にいるのに、このコラートだけはなぜか階段状の滝の二段目にいるのである。

 

この「滝の上のコラート」、足場が狭いこともあってほとんど動かないのだが、滝の水流と壁面の風景に溶け込む迷彩のせいで発見し辛いこともあり、初見プレイヤーと彼の出会いは大抵の場合、コントローラーを震わせる彼の先制攻撃で始まるので第一印象最悪、「もうどこ見てんのよ!」どころか「どこ見て撃ってんだ!」、「てか、どこにいるんだテメーは!?」状態で、古参プレイヤーほどパニック状態に陥りやすい。

 

最初に彼を見た多くのプレイヤーはきっとこう思うだろう。

 

「なんであそこにいるんだ?」

 

「どうやってあそこに登ったんだ?」

 

真っ当な疑問である。

 

確実に自力で登ることは不可能である。滝の壁面はほぼ垂直に近い絶壁で、AWGSどころか人間にだって早々登っていけるものではない。人間が登るにしても、ロッククライミングのような技術が求められるだろうし、当然のことながらAWGSはロッククライミングしない。

 

コラートは他の機種に比べて腕部に油圧系の駆動システムを使っているので腕の力が物凄いという設定があるが、それはジャングルの木々を切り開くためのものであって、ロッククライミングのためのものではない。というかAWGSはロッククライミングしない。

 

そもそも、AWGSは自分の腕で自重を支えることは出来ないので、転倒したら自力で起き上がることすら出来ない欠陥兵器であるとN氏も今から十数年以上前に書いておられている。そんなAWGSがあの絶壁をロッククライミングしたというのは無理がある。

 

では上から降りたのだろうか?

 

あの滝の上は開けた地勢になっており、飛び降りること自体は可能だろう。だが、仮にコラートの車高が12式などとそう変わらない8m前後と仮定した場合、下までの距離は少なくともコラート二機分くらいはありそうなのでその高さは最低でも16mから20mくらいになる。もっとかも知れない。

 

16mも下の地面に飛び降りたら、流石に脚部に相当なダメージがきそうである。コラートの腕はパワーがあるが、脚にパワーがあると聞いたことはない。いや、パワーがあると言ってもそれは頑丈さを意味しているのではなく、ただ単にパワーが出るというだけの話であって、パワーがあったって壊れるものは壊れる。ここはドラゴ〇ボールの世界ではないのだ。そもそもパワー関係ない。

 

「それを言ったら12式だってビュンビュン空を飛んでいるじゃねーか」とご指摘される方もいるかも知れない。その通り、12式だって12式改だって、16式だってヤクパンだって、ビュンビュン空を飛んでいる。2、30mはあろうかという遥か上空から着地している。

 

が、初代のオープニングムービを見れば分かるように、実はあの12式たちは着地直前にガスタービンエンジンを吹かして落下直前に機体を浮かせるアクションをしている。だから、実質地上から4、5mくらいのところから落着しているわけで、地面に直撃しているわけではない。この辺りはブレイズ以降、ゲーム中でも再現されるようになっており、ポルタヴァ市街をビュンビュン飛び回わるフォルクスパンターも旧作のようなドッスン着地はしていない。

 

また、岡田厚利氏の記したHIGH‐MACS開発史には着地時に脚部が折れる事故が多発したことが描かれているが、装甲を減らすことでこれに対処したと書かれてあり、この問題はクリアされている旨の記述がある。

 

つまり、基本的にHIGH‐MACSの脚部は頑丈である。12式や12式改は飛ぶために作ってあるので、当然降りる時のことも考えてあるし、コラートに比べて重量も抑え目だろうから、その程度の段差は問題ないのだろう。最悪、ガスタービンエンジンを使えば着地時の衝撃は和らげられるのだから、出来ないことはないわけだ。

 

だが、コラートはどうだろう?彼は飛ぶために作られたのではなく、ジャングルの木々をその屈強な腕で切り開き、進んでいくために作られたのではなかったか?その能力自体は数あるAWGSの中でも唯一無二のものなので評価すべきものではあるが、滝の上から飛んでその途中に着地するために作られてはいないのだ。

 

おまけに12式より遥かに重そうだし(実際には24tなので、全備重量の12式よりは軽い。ただ、スペースドアーマーを採用した割には重いらしい)、腕が脚部と同じくらいあるんじゃないかという程長く、太い。腕や武装が上体に集中しているために、重心バランスも上半身に偏ってしまったという公式の記述まである。はっきり言って、これが飛び降りたら大惨事は免れないのではなかろうか?

 

もっとも、N氏によればコラートの腰の作りは全てのAWGSの中でも最も重心移動に向いている(別の言い方だったかも、うろ覚えですみません)らしいので、その腰の低さとも相まって(性格的な問題ではなく)、実は着地時の衝撃を和らげたり、バランスを取るのに向いている可能性もあるのだが、それにしたって滝から飛び降りるためにそんな腰のデザインにしたわけじゃないで、腰はやっぱ関係ない。

 

では、ウィンチで大型ヘリに吊り下げ、あそこに持ち上げたのだろうか?多分、3,4機のヘリを使えば重量の問題はクリア出来るし、何なら武装を外して個別に上げても良いわけで、論理的には出来そうである。滝付近でのヘリの操縦には危険が伴うだろうが、ロッククライミングしたり、飛び降りたりするよりはまだ無事に落着出来る可能性がある。問題はそこまでするメリットがどこにあるのかということだろう。

 

そもそも、滝の上にコラートを配置するメリットとは何だろう?

 

よくよく考えて見ると、ラサを制圧した中国軍はあそこから敵が侵攻してくる可能性があると思ったからこそ部隊を置いていた筈である。しかも、それは滝を登れる第二世代AWGSやヘリを想定していた筈である。敵の主力となるであろう第一世代の9式などでは登れる筈はないので、それらしか来ないと思っているのならそもそもあそこに部隊を配置する必要すらない。

 

ということは、敵の第二世代AWGSがジャンプで滝を登ってくる可能性を予期していたということだろうか?そういうことなのだろう、多分。そうでなければあそこに部隊を置く意味がない。そして、コラートを滝の上に配置する意味がない。仮に第一世代AWGSや戦車を主力とする敵が攻めてきたとしても、敵の攻撃を避けようのない滝の上にいるのは単なる自殺行為である。部隊の連携という観点からも、上にいるよりは下にいた方が何かと都合が良い。

 

ではどうして滝の上にいるんだ?

 

仮にHIGH‐MACSによる滝突破を想定しているのなら、むしろ滝を登り切った場所に部隊を置いた方が得策であるはずで、崖の上から眼下の敵を狙撃する方が遥かに合理的である。実際、ステージ上部のトーチカ群や敵部隊を制圧した後で滝下の部隊を攻撃すると、上面装甲を狙いたい放題のため、狙撃モードなどで一方的に撃破することが可能である。たまに滝の上にいるコラートのことを忘れて強力な反撃を喰らったりするが、注意していればそんなこともなく、直ちに撃破出来てしまう。

 

あそこにコラートがいようがいまいが、難易度にはそこまで影響はない。それこそウェイファンにおける砲兵陣地のような強固な防御力をこの滝つぼの部隊が発揮しているわけでもなく、また、この滝の上のコラートがその要になっているというわけでもない。せいぜい、プレイヤーをびっくりさせるくらいの意味しかない。

 

ではどうして滝の上にいるんだ? 

 

そこで取材班の中でも若手の一人がはたと気付いた。彼はこう言ったのだ。

 

「恐らく、プレイヤーに『ここ登れますよ~』と言いたかったんじゃないでしょうか?もしあそこにコラートがいなかったら、あの滝を登って行けることに気付くプレイヤーはぐっと少なくなるんじゃないですかね?」

 

なるほど。確かにあそこにコラートがいなかったら、あの滝を登ってみようと試みる輩はいないかも知れない。恐らく、古参のファンほどそうだろう。

 

「ガングリはそんなゲームじゃねえんだ!」

「滝登りがしたくてガングリを買ったわけじゃねえんだぞ!」

「俺達のことを馬鹿にしてんのか!」

「いいからレーダーと補給ヘリを復活させろ!クソゲー!」

 

そんな古参ファンの怨嗟の声が聞こえてきそうであるが、彼らならずとも滝登りを試そうというプレイヤーは少ない筈だ。何せ発売当時は皆、ガングリがそういうゲームだとは思っていなかったのだから。

 

しかし、それはそれとしてこの結論には一定の妥当性が認められるように思われる。あの「滝の上のコラート」は、「お客さん、良い子いますよ!」としきりに客にすがりついてくる繁華街の客引き、もとい、プレイヤーに「お客さん、この滝登れますよ!」と教えてくれる、チベットの水先案内人であったということが出来るだろうか。

 

最後に残された謎はやはりどうやってあそこに登ったのかという謎であるが、このような理由から推測するに余り考えても意味はないのだろう(いや、最初から気付いてはいたけど)。

 

そもそも、よく考えるとカッタラ窪地やギリシャパンターなどはこの滝の段差より遥かに高い崖を平気な顔して降りて来ているし、ヴォストーチナャ・リツァのBMXも逆噴射ロケットやパラシュートなしにムリヤから高さ30mくらいの降下を楽々こなしている。或いは、ポルタヴァのBMX-30も普通にやはり高さ2,30mはありそうな崖から飛び降りている。

 

だから、「ゲーム的な嘘で良いじゃん!あんま深く考えんなよ!」ということなのだろう。うん、いやまぁ全くその通りなのだ。だからあのコラートは、滝の上から降り、そこに陣取ったということなのだろう。ゲーム的には。

 

取材班は何だか釈然としないものを胸に抱えつつも、30秒くらい悩んだ後におもむろに顔を上げ、「次行こう、次!」と気持ちを切り替えて更にラサの奥地に進んだ。しかし、そこには「滝の上のコラート」を遥かに超える、更に驚愕のコラートが取材班を待ち受けていたのである・・・・・・。

 

洞窟の中のコラート

次に見て行く「洞窟の中のコラート」は、地元住民から「巌窟王」と呼ばれる特に変わったコラートの一変種である。付近に住む住民によれば、この「岩窟王」は何とチベットの地下に設けられた洞窟の中に住んでおり、昼間はおろか夜になっても姿を見せないのだと言う。おまけに、洞窟の位置は巧妙に隠されており、質量センサーでも使わない限り発見は困難だというのだ。

 

地元で猟師を営むカシュ・ワギ氏は取材班の取材に応じてこう語ってくれた。

 

カシュ・ワギ:「大体の場所は分かっているが、それでも発見するのは難しいだろうな。何せ奴はシャイな奴で自分からは出てこないし、洞窟の入り口は一見するとただの地面にしか見えない。ただ、洞窟の入り口は武器で攻撃するとHIT判定が出るから、俺たちはそれを頼りに探すんだ。長年やってても見つけ出すのは簡単じゃないがね、ハハハハハ!」

 

洞窟の中には一体全体何があるのか?そもそもなぜそのコラートは洞窟の中に籠っているのか?そんな疑問を彼にぶつけて見ると、彼はこう答えた。

 

カシュ・ワギ:「一度だけ、昔亡くなった爺様の猟に一緒に連れて行ってもらったことがある。中国軍払い下げの古い13式に乗ってな。あれに揺られて十数分、爺様は所定のポイントで狂ったようにMG1を乱射してたよ。何せ弾だけは腐るほどあったからな。そこいら中に弾丸を浴びせまくってたな。700発くらい撃ったところでようやく入り口を見つけたのさ」

 

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取材班の想像するお爺様。

 

取材班:「それであなたは中に入ったんですか?」

 

カシュ・ワギ:「勿論。爺様とオンボロ13式と一緒に中に入った」

 

取材班:「中には何があったのですか?」

 

カシュ・ワギ:「まぁ、勿体つけて話すようなものは何もないよ。ドデカイ弾薬箱とジェリカン、それに大きな星、クリスマス・ツリーの天辺についてあるような大きな奴、それだけさ」

 

取材班:「そしてコラート?」

 

カシュ・ワギ:「そう、『巌窟王』だ」

 

取材班:「そのコラートは攻撃してこなかった?」

 

カシュ・ワギ:「勿論してきたよ。奴は住処に勝手に入られてカンカンだったみたいだね、俺達を見つけるやキツイ大砲をぶっ放してきたよ、ハハハハハ!」

 

取材班:「それでどうしたの?あなたとお爺さんは?」

 

カシュ・ワギ:「爺様はカンカンだったな!爺様があれほど怒ったのを見たのは後にも先にもあの時だけじゃないかな。爺様は顔を真っ赤にして一緒に持ってきたショットガンをコラートのドテっ腹にお見舞いしてやったんだ。数発で奴はお陀仏したよ。そして俺と爺様は奴の溜め込んでた宝物を全部奪って村に帰ったんだ。地面にのびてる奴に向かって『また来る』って言い残してな、ハハハハハ!」

 

この証言を元に、取材班は「巌窟王」の住処を探してカシュ・ワギ氏から借り受けたオンボロ13式で出撃した。カシュ・ワギ氏に案内されての捜索だったが、既に前回の猟は何年も前ということもあり、入り口が中々見つからない。業を煮やした取材班の一人は念の為に用意してきた燃料気化爆弾を使用する寸前まで行ったが、「それを使ったら奴ごと吹っ飛んじまうぞ?」というカシュ・ワギ氏の説得によって思いとどまった。

 

そして付近を探すこと20分、遂に質量センサーに反応があった。取材スタッフは反応があった周辺に連射型GUNを撃ち込んでHIT判定を見つけると、嬉々として洞窟内に突入した。暗い洞窟内を慎重に進むと、入り口からそう遠くない場所にずんぐりとした人型のシルエットを見つけた。その影は我々に背を向けて佇んでいたが、その姿は間違いなくカシュ・ワギ氏の言っていた特徴に合致する。そう、「巌窟王」だ!

 

 

 

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巌窟王」を見つけて叫ぶ取材班。



 

巌窟王」はこちらに背を向けたまま、動かなかった。こちらの気配に気づいていないらしい。そこで取材班は「巌窟王」の生態を探るべく、カメラを回しながら慎重に近づいていく。と、次の瞬間、「巌窟王」がこちらに振り向き、手に持った大砲を取材班目掛けて撃ってきた。取材班の乗る13式に凄まじい衝撃が来て、モニターがあらぬ方向を向いてしまう。慌てる取材班を尻目に、「巌窟王」がこちらに向かって走って来る。

 

もうダメだ!

 

その時、カシュ・ワギ氏の操る9式が放った新型貫通砲が「巌窟王」の左腕を吹き飛ばさなかったら、我々は今ここにはいなかっただろう。我々は態勢を立て直すとすぐさまカシュ・ワギ氏に加勢し、尚も向かって来ようとする「巌窟王」に向かってMG1の掃射を浴びせた。モニターに「MISS!」の文字が並んだが、取材班は構わず撃ち続けた。

 

 

 

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反撃に出る取材班とカ「シュ・ワ」ギ氏(手前)。



 

間もなく「巌窟王」はその胴体を折って崩れ落ち、洞窟の闇の底に消えた。周囲にもうもうと立ち込める硝煙の匂いを嗅ぎながら、取材班は「巌窟王」の遺体を探したが、どこかの穴にでも落下したのか、二度とその姿を見つけることは出来なかった。

 

しかし、あのコラートは一体、どうしてあんな場所にいたのだろう? どうやって地下に潜ったのだろう?パワーのある腕で掘り進み、パワーのある腕で埋め直したのだろうか?それとも他に協力者がいたのだろうか?まぁ、滝の上にロッククライミングしたり、降りたりするよりはもう少し無理のない推論である。

 

だが、依然として分からないのはなぜコラートがあの洞窟の下にいたかだ。

 

ここで例の若手の取材クルーが再び言った。

 

「恐らく、滝の上のコラートと同じように辺りを色々掘ると何かあるよと教えたかったのかも知れません。多分、そうでもしないとまず地面を掘ったりしようとするプレイヤーはいないので・・・・・・」

 

最後の方は何か小声になっていたが、確かに彼の言うことにも一理ある。恐らく、古参のプレイヤーほど武器で地面を掘ったりはしないだろう。なぜなら、なぜなら、発売当初はガングリがそんなゲームだとは誰も思っていなかったからである・・・・・・。

 

 

「ガングリはそんなゲームじゃねえんだ!」

「穴掘りをしたくてガングリ買ったわけじゃねえんだぞ!」

「俺達のことを馬鹿にしてんのか!」

「いいからレーダーと補給ヘリを復活させろ!クソゲー!」

 

そんな古参ファンの怨嗟の声が聞こえてきそうである。いやしかし、そもそもこの洞窟、普通にプレイしていたらまず気付かないし、掘ろうと思うこともなかったと思うのだが・・・・・・。「滝の上のコラート」のように分かり易い目印があるわけでもないし・・・・・・。考えれば考えるほど、謎は深まるばかりである。

 

「滝の上のコラート」の経験から最早その謎の解明にさしたる興味を持てなくなっていた取材班は、足取りも重く更にラサの奥地に進んだ。 そこには「洞窟の中のコラート」の更に斜め上を行く、とんでもない一発芸を披露するコラートが取材班を待っていたのである・・・・・・。

 

 

 

岩の下のコラート

チベット三大コラート」の最後を飾るのはその名も「岩の下のコラート」、略して「岩下コラート」である。何だか某極道映画の主演女優みたいなタイトルだが、映画とも主演女優とも全く関係ない。

 

 さて、この岩下コラートはどこにいるかというと、チベットのスタート地点からトーチカの点在する高原地帯までを結ぶ細い山道、その最初の曲道の先に一機ぽつんと立っている。恐らく、ラサを訪れた観光客が最初に出会うコラートで、他のコラートと比べて何か際立った特徴もない、全く普通のコラートである。

 

そん彼女(彼?)がなぜ「岩下コラート」などという俗名で呼ばれるようになったかという、それは彼の真上の、山道の間に挟まった巨岩に由来している。何と彼の上にはAWGSと同等か、それ以上に大きな巨岩があり、山道上部の崖と崖の間にすっぽり挟まっているのである。プレイヤーがこれを狙って撃つと、この巨岩はコント番組でよく見かけるスチール製のたらいよろしくコラートの上に降ってきて、哀れ岩下コラートはその名の通り岩の下敷きとなり、一撃で破壊されてしまうのである。繰り返す。一撃である。

 

岩が落下する直前、岩下コラートが「覚悟しいや!」と言ったか言わぬかは定かならぬが、プレイヤーの多くは「ゴンッ!」という、あのスチール製のたらいが幾多の芸人達の頭に落ちてきた時の懐かしい音を聞いたに違いない。かくて岩下コラートの一発芸は伝説となり、「チベット名勝十選」の一つとして語られることになったのである。

 

それにしても、なぜ彼女(彼)は岩の下にいたのだろう?

 

この一発芸を見せるためだったのだろうか?

 

最初に見た「滝の上のコラート」の前例にならうなら、「お客さん、この上に良い岩ありますよ!ちょいと撃ってみて下さい!」てな感じか。案外、サービス精神の塊みたいなコラートだったのかも知れない。もっとも、筆者は20年近くプレイしていて、最近ようやくこの奇岩の存在を知ったのだが・・・・・・。

 

まぁ、岩が山道の上にハマっているのは自然現象なので、そういうこともあるんだろうなぁと取材班は自分達を納得させ、更に足取り重くラサの奥地へと進んだ。そこにはこれらの「三大コラート」に匹敵する、多種多様なコラート達が取材班を待ち受けていた・・・・・・。

 

その他のコラート

さて、ここからは 「チベット三大コラート」以外のコラートについても見て行きたい。いずれも上記の三大コラートに負けず劣らずのユニークな生態を持った、可愛らしいコラート達である。

 

ニコラット

ステージ上部に登る山道沿い、「岩下コラート」を抜けたすぐ先に待機するもう1機のコラート。「岩下コラート」を倒して安心するプレイヤーに強烈な一撃をお見舞いしてくる嫌な奴。狭い参道ということもあって回避行動が制限される上、遮蔽物もないのが地味に痛い。ジャンプして空からRPでぶち殺してやろう。ちなみに禁煙に悩んでいるわけではない。

 

Jコラート

山道を抜けた先のトーチカ群の、向かって右側の戦闘エリア外から増援としてやって来るコラート。味方部隊の攻撃に合わせて他の地区からやって来たようだが、その走ってくる様子が少女漫画にありがちなシチュエーションを思い起こさせるため、この名前が付いた(というか勝手に付けた)。その軽快なステップは「いっけなーい、遅刻、遅刻!」とパンを咥えたまま走ってきて道の門でぶつかる女子高生を思わせると人気だが、当然、重量24tにも及ぶ圧延防弾鋼板の塊なので生身で彼女(彼?)の前に立ちはだかるのは賢明ではない。彼女(彼)の気を引きたいならむしろ上面装甲の辺りをトップアタックするのが良い。これで彼女もイチコロである。

 

天井なしの家コラト

山道を抜けてすぐのところにある古びた建物に現れるコラート。この建物は大量のジェリカンや弾薬が山積みされた補給所になっているのだが、一定時間が経つと増援のコラートがやって来て建物内に陣取り、補給のために戻って来たプレイヤーを驚かせる。建物の中で静かに待ち伏せ、プレイヤーを今か今かと待っているその姿がお茶目と人気だが、逆に空中からRPをお見舞いしてびっくりさせてやるのがブレイズ流だ。

 

最コーラト

巨大トーチカ群の最も滝川、そのコンクリートの裏の高所に陣取っているコラート。恐らく、確認される限りチベットで最も高い所にいるコラートで、最も厄介なコラートの一つである。プレイヤーを発見次第、ATMやGUNをばんばかお見舞いしてくるので、油断が出来ない。近くには別の部隊も存在するため、早めに倒しておくのが吉。

 

クソコラート 

山道を抜けた先のトーチカ群の手前、滝に最も近い破壊目標であるビショップ(ティーガー)の近くに展開しているコラート。近くにティーガーや5式戦場防空車輛、トーチカ、最コラートまでいることから迂闊には手を出しにくく、本人もかなり強気。GUNやATMでしきりにこちらにちょっかいを出してくる。正にその名の通り虎の威を借る「クソコラート」であり、このような手合いに対しては情け容赦なく上面装甲を撃ち抜いてやるのが賢明である。

 

滝の下のコラート

「滝の上のコラート」がいる滝の滝つぼ付近に配置されたコラート及びそれを撃破すると滝つぼ付近にやって来る増援のコラート。二機一組で仲良くやって来るため、若いカップルではないかと思われる。滝の下に現れるので放置していても攻略上は何の問題もないが、大抵の場合、嫉妬したプレイヤーに滝の上から上面装甲目掛けて狙撃されることが多い。ちなみに、なぜか三体が同時に展開して三角関係のように見えることもあり、腐女子の方にはお勧めのポイントである。

 

だんコラート三兄弟

ホットケーキのある盆地に増援としてやってくる三機一組のコラート。仲良く一列で登場する姿が可愛いと評判。性格は比較的大人しく、近くに9式がいても反撃は控えめ。むしろ9式にボコられる場合が圧倒的に多いので、可哀そうという声も。 「黒い三コラート」という別名もあるとかないとか(ない)。 

 

だるまさんがコラート

最後にご紹介するコラートはその名も「だるまさんがコラート」である。このコラートは黒い三コラートと同じく盆地に登場し、破壊目標であるホットケーキの背後の丘付近に現れる。ホットケーキを無事破壊した後、周囲の建物を破壊して得点稼ぎに走るプレイヤーの背後から突如襲ってくるために、この名がつけられた。クリアリングさえしっかりしていれば先に発見して破壊することも可能なのだが、何せ迷彩効果で背景に溶け込んでいる上に存在感が地味なため、思わぬ先制攻撃を受けやすい。ちなみに振り向いても動きを止めたりはしない。念のため。

 

 

 

コラートよ、永遠に

 

編集後記

こうして取材班のチベット調査の旅は終わった。何かしらの収穫があったような気もするし、なかったような気もする。多分、何もなかった。取材班の顔に一様に浮かぶのは、「疲労困憊」の四文字である。ウンベルト・エーコの『前日島』のあとがきにもそんなことが書いてあったが、全てを読み終えた読者の抱く感想も似たようなものかも知れない。

 

こうして取材班を乗せたCH‐47チヌーク・ヘリはラサを後にした。地上には大量のコラート達が集まり、別れを惜しむかのようにこちらに手を振っている。取材班がそれに応えてヘリの窓に身を乗り出し、眼下のコラート達に手を振り返す。

 

思えば大変な旅であったが、コラート達の生態について迫れたことは良いことだったのかも知れない。全てのコラートを探すためにチベットを走り回って、改めてチベットというステージの魅力にも気づいた。何よりコラートは数あるAWGSの中でも一際ユニークなAWGSであり、一部のAWGSマニアからの人気も高い。いずれこのコラートの里にも開発の手が及ぶ時がやって来るかも知れないが、この地球に残されたコラート最後の楽園は絶対に守らねばならぬ。

 

そのためにも一刻も早く帰国し、このコラートの生態を母国の人々に伝えなければと取材班が使命感を新たにした時、ふと窓を覗いたスタッフの一人が今さっきあとにしたばかりの地上にいくつもの光が明滅しているのを見つけた。その光がすごい速さでヘリに迫ってくる。

 

それはコラート達の右肩に装備された紅竜Ⅱ連装ランチャーから放たれた十数発のATMのバックブラストの光、ヘリから放たれたフレアの輝き、そして取材班の目に浮かんだ涙の煌めき、命の輝き、驚き桃の木山椒の木。 

 

 

 

 

 

脚注

*1:筆者の独断と偏見によるチベット名所ポイント十選。「滝の上のコラート」、「洞窟の中のコラート」、「岩の下のコラート」、「だるまさんがコラート」、「自爆する13式」、「射撃の通る兵士用通路」、「巨大トーチカ群」、「ホットケーキ」、「滝つぼ」、「トーチカ群前の廃墟」