ガングリフォン・ムック(仮)

名作ゲーム、ガングリフォンシリーズについて考察するブログです。他のゲームも時々語ります。更新不定期。

第三次世界大戦戦後史・番外編⑧ ハイランダーと第16空中強襲旅団

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 当ブログで掲載している仮想戦記の番外編第8弾。今回は仮想戦記中に登場するイギリス軍とオリジナルAWGSに関する設定を新たに書き起こしてみました。ご興味ありましたら是非ご一読下さい。

 
*本稿はゲームアーツの3Dシューティングゲーム、「ガングリフォン」シリーズの内容を元にした架空戦記の番外編です。これ以前の内容については「架空戦記」カテゴリから閲覧することが出来ます。基本的に「GUNGRIFFON THE EURASIAN CONFLICT」から「GUNGRIFFON BLAZE」までの設定に準じていますが、一部に筆者のオリジナル設定も含まれていますので注意して下さい。
 また、本稿の内容は「第三次世界大戦戦後史・番外編 戦後のAWGS開発史」内の文章と一部重複する箇所がある他、現在の筆者の考えに基づき一部の設定を変更した箇所もありますが、ご了承下さい。

 

 

 

 

 

 

ハイランダーと第16空中強襲旅団

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イギリスにおけるAWGS開発の試み

 

LOW‐MACSの登場

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左がハイランダーのベースとなったM16。世界初のAWGSであり、その後のAWGS開発に大きな影響を与えた。

 21世紀に入って各国の軍隊に急速に普及し、第三次世界大戦においてその有効性を証明した新兵器AWGS。今や戦場には欠かせない兵器の一つとなったが、その記念すべき第一号となったM16二脚歩行戦闘車の開発にはイギリスも関わっていたことは余り知られていない。

 M16は世界初の二脚型AWGSでありながら、ディーゼル・ターボエンジンでアクチュエーターを電気的に稼働させる革新的システムや被弾した箇所の修理・交換が容易なモジュラー装甲、持ち替えだけで武装の換装が可能なマニュピレーターなどの斬新なコンセプトを多数提示し、その後のAWGSの潮流を決定づけた傑作機である。

 その開発にはアメリカのUDLP社とイギリスのビィッカース社が共同で当たり、アメリカ陸軍で行われたAWGSプロジェクトにおいて見事トライアルを勝ち抜いたM16は、多脚型のランドクラブと共に米軍に採用された史上初の実戦用AWGSとなった。 

 イギリスはその後もアルビス社が単独でバリアント支援戦闘車両を開発する一方、旧王立造兵廠が南アフリカ製エレファントの開発に協力するなど、AWGS開発の分野において各国をリードしていった。

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バリアント支援戦闘車両。高い装甲防御力と火力を兼ね備えたバランスの良い機体である。図の機体は対空型バージョンで、他にも様々なタイプが存在する。

 しかし、日米共同開発のHIGH‐MACSの登場によってその地位は急速に揺らぐこととなった。AWGSにガスタービン・エンジンを搭載することでヘリのような空中機動を可能としたHIGH‐MACSは、戦車とヘリの特徴を併せ持つ革命的兵器であり、2015年に勃発した第三次世界大戦において多大な戦果を挙げ、従来のAWGSとは異次元の戦闘能力を見せつけたのである。

 このHIGH‐MACSに衝撃を受けた軍事関係者は多く、世界各国で追随する動きが見られたが、大戦中に同コンセプトの機体を投入出来たのは僅かにドイツのヤークトパンターのみで、日米独に続く新たな第二世代AWGSが現れたのは戦後数年が経ってからのことだった。

 ビィッカース社もHIGH‐MACSに衝撃を受けた企業の一つであり、その登場直後からヘリ開発で実績のあるウエストランド社と共同で対抗機種の開発・研究を開始していたが、これまでの兵器とは一線を画す全く新しい兵器ということもあり、開発には相当の時間が掛かることが予想された。

 このため、ビィッカース社は敢えてヘリのような空中機動性を付与することは狙わず、限定的な三次元機動に止めることで従来のAWGSの性能を向上させた、HIGH‐MACSのコンセプトを流用した新型機の開発に乗り出すことになった。それがLOW‐MACS(低機動装甲戦闘システム)と呼ばれる新カテゴリの兵器であった。

 

 もっとも、LOW‐MACSのコンセプト自体を最初に提示したのはイタリアのサテュロスで、この機体は背部に二基のガスタービン・エンジンを搭載することで限定的な三次元機動を付与した、第1.5世代とでも言うべきユニークな存在であった。そのジャンプ力は「飛ぶ」というよりは「跳ねる」に近いものだったが、それでも他のAWGSでは登れない段差を踏破したり、ATMなどへの緊急回避手段として有効であった。

 しかし、サテュロスが実戦でこの三次元機動を用いた例は驚くほど少ない。というのも、重装型のサテュロスは三次元機動を行うにはやや重量過大で、何度もジャンプしていると車体や脚部に大きな負荷を掛け、損傷してしまうトラブルが多発したためである。

 これは後に重量バランスの調整や軽量化、脚部の機構を見直すことで対処されたものの、着地時に機体に掛かる不可は依然として大きく、機械トラブルの頻発から稼働率を低下させることに繋がった。*1

 このため、前線のパイロット達には緊急時でもない限りジャンプは使用しないよう通達がなされていた他、後期型になるとガスタービン・エンジンそのものを排してその分の浮いた重量を装甲や武装の強化に回したタイプが主流となっていった。三次元機動力を持ちながらも実際には跳ばないサテュロスのイメージは、こうして作られていったのである。

  もっとも、実用性にやや難点があったとは言え、サテュロスの示したコンセプトがAWGSの汎用性を押し広げるものであったことは間違いない。HIGH‐MACSのような高い空中機動性とまではいかずとも、従来型のAWGSに限定的な三次元機動力を付与することで不整地踏破性を向上させる方法論は、AWGSがもっとも得意とする奇襲の効果を何倍にも高める可能性を秘めていたからである。

 

 しかしながら、このサテュロスのコンセプトをより実用的なものとし、LOW‐MACSと呼ばれるカテゴリーとして定着させた功績はビィッカース社が送り出したM14/ハイランダー二脚歩行戦闘車に求められる。

 この機体は現行のM16の車体にガスタービン・エンジンを搭載することでサテュロス同様の三次元機動力の付与を目指した機体で、その行動範囲を広げることでより高い汎用性を獲得することが期待されていた。M16がベースとして選ばれたのはサテュロスよりも軽量な上に、装甲がモジュール化されているため、新しい機能の搭載にも対応する余地があったからである。


 サテュロスの例を教訓に、開発に当たってはジャンプ力の確保と着地時の衝撃を緩和することが最大の目標とされ、ガスタービン・エンジンを搭載することも考慮して車体の徹底した軽量化が行われた。装甲はM16が複合装甲素材であったのに対してアルミ合金を選択、武装も従来の120㎜滑腔砲から105㎜ライフル砲に変更された。

 また、脚部はそのままでは強度不足であることが明らかになったため、MDM社製のHIGH‐MACSの脚部を参考にアクティブ・サスペンション及びショック・アブソーバーの強化・改修が行われた。

 事前に予測されていたことだが、開発に当たってもっとも難航したのは背部に搭載する予定のバーニア部分とガスタービン・エンジンだった。バーニア部分の設計についてはヘリ開発で実績のあるウエストランド社が担当し、新開発のロールス・ロイスガスタービン・エンジンを搭載することが検討されていたが、同社のAWGS開発経験の浅さもあって開発は難航。最終的にこれもMDM社の技術協力を受けることで問題をクリアした。

 

 こうして完成した機体は性能試験テストにおいて高い運動性能を見せつけ、居並ぶ軍関係者を驚かせた。二基のガスタービン・エンジンの生み出す推力と、脚部のコンバットタイヤによるローラダッシュを組み合わせることでかなりの高い段差でも飛び越えることが可能であり、その行動範囲を飛躍的に増大させることに成功していた本機は、正にハイランダー(英語で「高地に住む人」の意)の名に恥じない高い不整地踏破性能を発揮したのである。

 その後、この機体は数度のテストと改良を経て2020年頃にイギリス陸軍に制式採用され、部隊配備が開始。2021年2月に起こったシベリアの戦いでイギリス軍が投入し、初めての実戦を経験することとなった他、同年5月に勃発した第五次中東戦争においてもヨルダン軍の第40機甲旅団が運用し、イスラエル軍との戦いで使用した。

 また、降下時にガスタービン・エンジンを使用すれば着地時のショックを和らげられることもあり、後に空挺部隊向けの改良を施したタイプも開発された。こちらの機体もエアランダーとして制式採用が決定し、VW‐1と共に精鋭の第16空中強襲旅団への配備が進められた。

 このエアランダーの名声を一躍高めたのが2022年に行われた第二次フォークランド紛争である。2022年6月、AFTAから離脱したアルゼンチンがフォークランド諸島に再侵攻すると、イギリス軍は大規模な奪回作戦を決行。エアランダーを装備した同旅団も奪回作戦に参加し、アルゼンチン軍のレーダー施設破壊のため、パタゴニア平原に空挺降下した。

  大西洋からの強風に煽られながらの空挺降下は非常な困難を伴ったが、新型の逆噴射式ロケット付きパラシュートと自機のガスタービン・エンジンによる逆噴射を併用することで着地時の衝撃を大幅に緩和出来たため、降下時の衝撃で損傷した機体は僅か一機に抑えられた。APC軍の到着もあって作戦そのものは失敗に終わったものの、悪条件の中での降下を成功させた同隊の技量とエアランダーの性能は高く評価されることになった。

 

 もっとも、実戦での運用を重ねるに連れて機体の問題点も多数炙り出されることになった。イギリス軍は前線でハイランダーを運用したパイロット達の意見を集約した結果、 LOW‐MACSの問題点として次のような報告をまとめている。

 

  • ガスタービン・エンジンを搭載する関係上、従来機よりも開発コストが高価になりがち。第二世代型AWGSほどではないものの、燃費も相応に悪く、ジャンプを多用すると活動時間が短くなりがちであり、費用対効果の点で疑問がある。
  • 一定の三次元機動力を確保するため、どうしても装甲が薄くなりがちになる。ただでさえ装甲の薄いAWGSにとってこれは見過ごせない問題であるが、かといってリアクティブ・アーマーや増加装甲などを装着するとLOW‐MACS本来の三次元機動力を殺すことになるため、根本的な解決が難しい。
  • このことから基本的に敵の攻撃は機動力で回避することが主体になるが、ただでさえ高い車高と広い車幅のせいで被弾投影面積が大きいこともあり、被弾率はどうしても高くなる。また、機動力そのものも第二世代型AWGSほどではなく、ジャンプ能力を除けば従来機と大差ないため、やや信頼性に欠ける。
  • 第二世代型AWGSのように空中を滑空することや滞空することは不可能なため、戦車に対して大きなアドバンテージがあるわけではない。これはつまり、高度差や起伏に乏しい平地での戦闘においては従来の第一世代型AWGSと何ら変わらない性能しか発揮出来ないどころか、装甲の薄さなどからむしろ不利になる可能性が高いことを意味している。

 

 つまるところ、LOW‐MACSは従来型のAWGSとHIGH‐MACSの中間的な性能を持つが故に、下手をすればどっちつかずの中途半端な性能しか発揮出来ない、扱いの難しい兵器でもあったのである。

 これらのことから、イギリス軍ではLOW‐MACSの運用についてパイロット達に以下のような指針を与え、地形を活かした戦術の重要性を説いている。

 

  • LOW‐MACSをHIGH-MACSのような攻撃的兵器と認識すべきではない。HIGH‐MACSのように滑空も滞空も出来ない以上、平地で正面から戦車に対して挑むような戦い方は自殺行為である。
  • LOW‐MACSはあくまでもそのジャンプ力を活かして戦術上有利な高所を素早く占める、従来機では踏破不能の段差や起伏を突破して敵の予想しない地点から奇襲するといった、地形を活かした戦い方を心掛けるべきであって、ジャンプ機能そのものも攻撃手段としてではなく、あくまでも戦場で取り得る選択肢を増やすためのものと解釈すべきである。

 

 LOW‐MACSはHIGH‐MACSのような革命的兵器ではなく、あくまでも従来の第一世代型AWGSの延長上に位置する兵器であるというのがイギリス軍の認識のようである。もっとも、ガスタービン・エンジンによる垂直ジャンプはそれだけでも非常に有用であり、AWGSの兵器としての価値を高めるものであることは間違いない。第二世代型AWGSよりも安価で操縦もし易いことを考慮すれば、将来的にはLOW‐MACSがAWGSの主流となっていく可能性も大いにあり得る。

 それを裏付けるように、ビィッカース社はこの数年後にハイランダーの車体をベースに一から再設計したウォードレイダー二脚歩行戦闘車を開発。より洗練され、完成度を高めたLOW‐MACSとして高い評価を得ることになるが、これはまたもう少し先の未来の話である。

 

戦間期イギリスの対外政策

 冷戦終結後、唯一の超大国アメリカの覇権の下に展開していた世界情勢は、2005年にアメリカがAFTAを締結して国際社会から離脱したことで大きな転換点を迎えることとなった。

 第二次大戦以降、一貫して対米追従を外交の基本としてきた日本もその影響を大きく受けた国家の一つであり、日米安全保障条約の一方的な破棄とそれに伴う米軍の撤退を受け、その対外政策の機軸をアジア諸国との関係に移さざるを得なくなった。この際、アメリカに代わって超大国化する中国に対抗するべく、東南アジア諸国やオーストラリアと共に結成されたのがAPCであったが、後に当の中国をも取り込んでその強い政治的支配下に入ることになる。

 

 この日本と同様に、アメリカとの同盟を基軸として対外政策を行ってきた国がもう一つある。イギリスである。

 イギリスとアメリカの関係は宗主国とその植民地という関係から始まったが、やがてその植民地が独立して宗主国に匹敵するほどの国力を持つに至ると、その関係は徐々に逆転していった。イギリスは第二次大戦において戦勝国となったものの、その勝利はアメリカの参戦と援助によって辛うじて得られたものに過ぎず、枢軸国との争いによって疲弊したこともあってその海外植民地の大半を失うことになったのである。

 これ以降、イギリスはアメリカとの同盟を外交の基軸として展開してきたわけだが、そのイギリスにとってもアメリカの国際社会からの離脱は大きな影響を与えずにはおかず、PEUの枠組みの中でヨーロッパ諸国との関係に機軸を移さざるを得なくなる。

 

 もっとも、イギリスと他のPEU加盟国との立場には当初から大きな隔たりがあった。これには伝統的に大陸(ヨーロッパ)の政治に巻き込まれることを嫌うイギリス側の姿勢もさることながら、PEUの盟主であるドイツやフランスで極右勢力が政権を握っていたことも影響していた。

 しかし、それ以上に大きかったのは食糧の問題である。ヨーロッパの食糧事情は極端であり、ロシアが五年連続の凶作に見舞われて深刻な飢餓に見舞われていた一方、ドイツやフランスは一年おきに豊作と凶作が繰り返される不安定な状況であり、他国に輸出する余裕のある南欧諸国や豊作続きのイギリスとは危機感に大きな違いがあった。

 このためイギリスは当初からAPCとの戦争には反対しており、いざ北アフリカで戦闘が始まった際にも派兵には消極的な姿勢を示していた。イギリスが本格的な派兵に踏み切ったのはシベリアが独立した2015年4月以降であり、それも食糧確保のためというより、天然ガスレアメタルといった資源を確保するためであった。

 

 そのイギリスがAFTAの参戦と共にPEUを離脱し、アメリカに寝返ったのも驚くには当たらないのかも知れない。大戦終盤、自由の憲兵を宣言したアメリカ・AFTAが参戦すると、イギリスは突如PEUを離脱してアメリカとの同盟を宣言する。

 他のPEU加盟国はイギリスを激しく非難し、AFTA軍の物資集結地点などに対して巡航ミサイルによる攻撃を加えるが、対空監視網を完備したイギリス本土と空中警戒機の充実したアメリカ軍に対してはほとんど効果がなかった。逆に、イギリス本土から飛び立ったアメリカ・AFTA空軍との迎撃戦でPEUは航空戦力を消耗する結果となってしまう。

 この後、AFTA軍がフランスのノルマンディーに上陸すると同時に北欧・ベネルスク諸国もPEUからの離脱と中立を宣言。完全なる航空優勢下でAFTA軍は電撃的にヨーロッパの奥深く侵攻し、瞬く間にベルリンを占領。そのまま進撃速度を落とさずにモスクワまでをも陥落させ、PEUは降伏した。

 

 こうして第三次世界大戦終結し、イギリスは戦勝国の仲間入りを果たしが、この戦争終盤における振る舞いはその後のヨーロッパ諸国との関係に大きな禍根を残さずにはおかなかった。これはイギリスに続いてPEUを離脱した北欧・ベネルスク諸国にしても同様であり、前大戦における敗北の経緯から各国間の相互不信が根強く残ってしまったため、戦後にアメリカ主導でGEUが結成された後もヨーロッパ諸国は長らく一致団結した行動が取れずにいた。

 AFTA側の厳しい戦後処置もこれに拍車を掛けた。戦勝国となったアメリカ・AFTAは敗戦国に対して重い賠償金を課す一方、世界各国の占領地に駐留軍を置いて国内の食糧問題の解決を図ったため、食糧事情は極度に悪化。ヨーロッパ諸国でも餓死者が相次ぐ事態となったが、寝返ったイギリスは食糧事情が安定していたにも関わらず他のヨーロッパ諸国に占領軍を置いたため、このことも反感を増大させる要因となった。

 

 このようなヨーロッパ各国からの強い敵意を受ける中で、イギリスは国際社会に復帰したアメリカとの関係を再び強めていく。アメリカ主導の国連PKOに部隊を派遣して国際秩序の安定化に貢献する一方、GEU内部においてはアメリカの意向を代弁する役割を果たし、再びアメリカとの同盟に外交の軸足を移したのである。

 しかし、こうした状況も長くは続かなかった。2020年1月11日、首都ワシントンで起こった核テロによってアメリカが三つに分裂して内戦状態に突入すると、イギリスの対外政策は再び岐路に立たされることになった。

 イギリスは表向きはアメリカ内戦への不介入を宣言しながらも、関係の深いアメリカ北部連邦への加担を決め、秘密裡に部隊を派遣して援助を行う。また、アメリカの介入がないと見て取った中国がAPCを再結成してシベリアに侵攻すると、ヨーロッパ諸国に働きかけてPEUを再結成し、危機的状況に追い込まれたロシアを支援した。直後に起こった南アフリカ・OAUの中東侵攻に際しても、イギリスはPEUを動かして中東に部隊を派兵。自らも空母機動部隊を含む大規模な派兵を行ってその野望を打ち砕くことに貢献した。

 これらのイギリスの一連の行動は、西部連邦とタッグを組んだ日本がそうであるように、いずれも内戦によって他国に介入する余力のないアメリカの利益を代弁するものであり、その意味ではこの時期の両者の立場は驚くほど似ていた。

 しかし、アメリカ内戦の終結によって両者にもたらされた結果は全く違うものだった。勝利した北部連邦に与したイギリスがいよいよその立場を安定したものとする一方、敗北した西部連邦と組んだ日本は食糧援助を打ち切られ、深刻な飢餓に喘ぐこととなったのである。

 

 イギリスはその後もアメリカと協調行動を取り続け、2022年に中南米諸国がAFTAから離脱すると、アメリカ軍と共に中南米に空母機動部隊を派遣。フォークランド諸島に再侵攻したアルゼンチン軍を撃退し、同島を奪回した。

 2023年2月にアメリカ内戦が再度勃発すると、北部連邦の支援要請を受けたイギリスは再び空母機動部隊をカリブ海に送り込み、新生・南部盟邦に対する海上封鎖を実施する。一方、内戦の長期化とそれによるアメリカの弱体化を望むPEU・ドイツは密かに南部盟邦と同盟を組み、アメリカ大陸に降下猟兵を送り込む。両者は放棄されて久しいニューヨーク・マンハッタン島で激突し、戦いは再び泥沼化する。

 

 アメリカが再び分裂し、その覇権国家としての威容を失った今、世界情勢は先の見えない混沌の中にある。イギリスはその卓越した政治感覚によって今後も危機を乗り越え続けられるのか?その答えは未だ出ていない。

 

 

 

第16空中強襲旅団の編制

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旅団の部隊マークはペガサスに跨るベレフォロンで、ペガサスはイギリス空挺部隊のシンボルである。

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戦歴

 第16空中強襲旅団はイギリス軍内部に編成された空中機動部隊で、2015年に勃発した第三次世界大戦にも参加している。戦後はアメリカから取得したVW‐1をAH64アパッチの更新として配備している他、国産のハイランダー二脚歩行戦闘車を採用してその戦闘力を高めている。

 戦後になると、同旅団はアメリカ主導の国連PKOに参加し、2017年に起こったトルコ・ギリシャ間の紛争にも介入。アテネ近郊で辛うじて防衛線を維持していた日本外人部隊支援のためにアメリカ軍と共に空挺降下し、この窮地を救っている。

 2020年3月に始まったアメリカ内戦にも北部連邦側を支援する形で密かに派遣されており、南部盟邦や西部連邦との戦いで活躍した。翌21年3月に起こったシベリアの戦いでは再編されたPEU軍緊急展開部隊の一員としてAPC軍に対する反攻作戦の先鋒を務めた。また、第五次中東戦争ではPEU・北アフリカ派遣軍の先遣隊としてリビア入りし、トリポリに奇襲を掛けた南アフリカ・OAU軍を撃退。続くエル・アラ・メインの戦いでは劣勢となって撤退するOAU軍の前に空挺降下し、その退路を断ってこれを撃滅した。

 2022年に中南米諸国のAFTA離脱に伴って第二次マルビナス戦争(第二次フォークランド紛争とも)が開始されると、南大西洋アセンション島に入り、フォークランド及びアルゼンチン本土への空挺降下作戦に参加した。9月になってAPC軍がオーストラリアに侵攻すると、オーストラリア支援のために急派される。これに続く中国本土侵攻作戦ではアメリカ軍の支援に回り、日本の機動対戦車中隊と共に北京攻略作戦に参加。ベトナム雲南省に侵攻すると、アメリカ第82空挺師団と共にベトナム軍の北進阻止に当たった。

 更に翌23年になってアメリカ内戦が再開されると、再びアメリカ大陸に急派され、北部連邦の支援に回った。このように、息つく暇もなく各地の戦線に投入された同旅団であったが、その活躍はイギリス軍きっての精鋭部隊の名に恥じないものであった。

 

第16空中強襲旅団の編制(2021年1月時点)(*書きかけの項目です)

旅団本部(コルチェスター

パラシュート連隊×2(エアランダー)

空中強襲連隊×2(プーマ)

航空連隊×2(VW‐1、リンクス)

偵察飛行隊(リンクス)

各種後方支援部隊(補給、医療、整備)

 

 

 

イギリス及び第16空中強襲旅団関連年表(*書きかけの項目です)

 

2005年

 

2006年
  • 2足歩行マシン、各種作業場で活躍。
  • 5月、PEU軍設立。

 

2007年
  • 10月、アメリカ陸軍、AWGS(装甲歩行砲システム)計画開始。

 

2008年
  • 11月、PEU軍共通歩行マシン構想トライアル開始。

 

2009年
  • 7月、アメリカ陸軍AWGSの2脚型はUD・LP社(旧FMC社)/ビィッカース社製、4脚型はGD社製に決定。
  • 8月、アメリカ陸軍、第2世代型AWGS計画開始。
  • 9月、『戦場の王者となりえる兵器とは?』論文、JDW誌発表
  • 12月、MDM社、HIGH‐MACSの概念設計開始。

 

2010年
  • 3月、アメリカ2脚型AWGS後継車両、陸軍と海兵隊独自の開発を決定。
  • 5月、アメリ海兵隊、陸軍のM15・M16を採用。
  • 8月、MDM社、HIGH‐MACS計画開始。

 

2012年
  • イギリス空軍、航空基地防衛用にバリアントの部隊配備開始。
  • 6月16日、HIGH‐MACSのプロトタイプが座間研究所で完成。

 

2015年
  • 2月8日23時15分。第501機動対戦車中隊はリビア砂漠でリビア・PEU連合軍を襲撃。PEU軍は演習中だったために大損害を受ける。この襲撃により翌日、PEU軍はAPC軍に対して正式に宣戦を布告。
  • 9月2日、AFTA軍、同盟を結んだイギリスからヨーロッパ侵攻を開始。北欧・ベネルスク諸国はPEUからの離脱を宣言。同日、PEU軍の混乱に乗じ、中国軍は長城京包線を安定させることに成功。この作戦に協力、強襲の先鋒を務めた第502機動対戦車中隊は戦力不足により壊滅状態となる。
  • 11月1日、アメリカ主導により新ヨーロッパ連合(GEU)発足。重い戦後賠償と食料不足から反米感情は爆発寸前。ドイツ・イタリアでは賠償金支払いの手段として兵器の輸出に力を入れる。また、アメリカ・AFTA軍がヨーロッパ・アジア諸国から押収した兵器が第3世界へ大量に流出。

 

2016年
  • 4月15日、イギリス陸軍、WAH‐64の更新としてアメリカ製VW‐1の導入を決定。
  • 8月20日、イギリス陸軍、第16空中強襲旅団の航空連隊にVW‐1の配備開始。

 

2017年
  • 2月7日、イギリス軍、M16をベースにした新型AWGS開発計画をスタート。
  • 10月25日、イギリス軍、バリアントの改良計画をスタート。

 

2019年
  • 4月18日、イギリスで新型AWGS・ハイランダーのプロトタイプがロールアウト。運用テストが開始される。
  • 10月5日、イギリス陸軍、ハイランダーの部隊配備開始。

 

2020年
  • 1月、イギリス陸軍第16空中強襲旅団、空挺用のエアランダーの部隊配備開始。
  • 4月、ヨルダン軍、イギリス製バリアントとハイランダーの採用を決定。

 

2021年
  • 3月14日未明、中韓を主力とするAPC軍が突如ロシア極東部に侵攻。第502機動対戦車中隊もロシア太平洋艦隊司令部のあるウラジヲストクに空挺降下し、激戦の末にこれを制圧することに成功する。ウラジヲストク陥落の報告と同時にシベリアの各共和国が独立を宣言し、ロシア政府はパニック状態に陥る。
  • 4月14日、GEU諸国が緊急会合。ロシア救援のためにGEUの解体とPEUの再結成、PEU軍の再編成を決定し、先遣隊としてドイツ軍の第26及び第31降下猟兵旅団とフランス軍の第11落下傘旅団、そしてイギリス軍の第16空中強襲旅団などからなるPEU軍空中機動部隊がシベリアに派遣される。
  • 4月20日、オムスクに向かって進撃中のAPC・シベリア共同体軍、ドイツ軍の第26降下猟兵旅団とイギリス軍の第16空中強襲旅団による奇襲を受けて大損害を受ける。第502機動対戦車中隊はイギリスのHIGH‐MACS部隊を相手に果敢に戦い、これを撃退するものの、ドイツ軍のヤークトパンター部隊の猛攻を受けて壊滅。第101機甲師団も甚大な被害を受け、APC・シベリア共同体軍は撤退を余儀なくされる。
  • 5月、エジプト・シリア・ヨルダンを中核とするアラブ連合軍が三方からイスラエルに侵攻。イスラエル軍は開戦当初こそ戦いを有利に進めたが、アラブ側のミサイルの傘によって航空戦力を損耗。次第に劣勢に立たされる。
  • 6月28日、オムスクから逃れていたロシア連邦軍の残党がカザフスタンセミパラティンスクを制圧。ロシア国内から持ち出していた移動式核ミサイルをサンクトペテルブルグに向けて発射し、ロシアは無政府状態に。APCとPEUを含むあらゆる外国勢力のロシアからの即時撤退を要求。
  • 6月29日、事態を重く見たPEUとAPCは一時的な停戦に合意。更なる核ミサイル発射阻止のため、PEU・ドイツ軍の第26降下猟兵旅団とイギリス軍の第16空中強襲旅団が直ちにセミパラティンスクに急派される。両隊は激闘の末に残された三発の内二基を抑えることに成功するも、あと一歩のところで残る一基がAPC軍占領下のウラジヲストクに向けて発射されてしまう。
  • 7月14日、APCとPEUは正式に停戦に合意。両軍のロシアからの撤退と同国の混乱収拾に向けて協力することで一致。
  • 9月、突如としてPEUが中東情勢への介入を宣言。同盟を結んだリビアに先遣隊としてフランス外人部隊の第2外人落下傘連隊と第1外人騎兵連隊、イギリス軍第16空中強襲旅団航空連隊を派兵。
  • 10月4日未明、南アフリカ空挺コマンドと南アフリカ陸軍第44落下傘旅団がエジプトからリビア領空に侵入。首都トリポリを奇襲し、政府庁舎の制圧を目論む。両隊は市街の南に展開していたフランス外人部隊に大損害を与えて一時は市街中心部を制圧するが、リビア大統領警護隊とイギリス軍第16空中強襲旅団航空連隊の奮戦によって作戦は失敗に終わり、南へと撤退。OAU側の先制攻撃を受けてPEU各国の世論は沸騰し、北アフリカ派遣軍の大幅な増強が決定される。
  • 10月27日、エル・アラメインの戦い。PEU・リビア連合軍とそれを迎え撃つOAU軍がエル・アラメインで激突。激戦の末にPEU・リビア連合軍が勝利をおさめ、OAU軍は東へと撤退。
  • 12月12日、アメリカ北部連邦軍が西部連邦の首都サクラメントを制圧し、一年半に渡るアメリカ内戦が終結。合衆国の復活が宣言される。

 

2022年
  • 6月2日、アルゼンチンがAFTAからの離脱を宣言。係争地帯であるイギリス領・フォークランド諸島に再び侵攻し、中南米諸国もこれを支持。イギリスは即座に空母機動部隊の派遣を決定(第二次マルビナス戦争)。
  • 6月10日、フォークランド沖でイギリス軍とアルゼンチン軍が交戦。アルゼンチン海軍機の攻撃でイギリス海軍の艦艇数隻が撃沈される。
  • 7月11日、第503機動対戦車中隊、パタゴニア地方ラス・ラハスに空挺降下。同地のアルゼンチン軍レーダー施設破壊のために送り込まれたイギリス軍第16空中強襲旅団を撃退し、レーダー施設を守り切る。
  • 9月9日、アメリカ、オーストラリアを救援するべく陸軍の精鋭第101空挺師団を派遣。更に、第7機動艦隊の穴を埋めるべく、第3、第5艦隊をオーストラリア近海に向かわせる。同日、イギリスもオーストラリア支援を表明。パタゴニア戦線から第16空中強襲旅団を引き抜き、オーストラリアに急派。
  • 9月13日、AFTA軍、オーストラリア縦断鉄道に対する奇襲攻撃を繰り返し、APC軍の進撃を遅らせる作戦に出る。攻撃を担当するのはアメリカ軍の第101空挺師団と新設された機動戦闘旅団、イギリス軍第16空中強襲旅団。
  • 9月27日、第504機動対戦車中隊、APC軍による待伏せ作戦に参加。奇襲を仕掛けてきたアメリカ軍V‐MACS部隊を壊滅させる。
  • 11月13日、中国国内で内戦勃発。和平派の沿岸諸省を支援するため、アメリ海兵隊が連雲港に上陸を開始。第503機動対戦車中隊もこれに随行し、中国内陸部侵攻の先鋒を任される。
  • 11月15日、ベトナム軍が中国南部雲南省に侵攻、南寧を陥落させる。アメリカ政府はベトナム政府に撤退を勧告するも、ベトナム側はこれを受け入れず占領を継続。
  • 11月22日、アメリカ軍第82空挺師団とイギリス軍第16空中強襲旅団が南寧に空挺降下し、ベトナム軍の北侵を阻止。

 

2023年
  • 2月4日、北部の支配に反発する南部諸州が連邦からの離脱を宣言し、南部盟邦を復活させる。再度の内戦が勃発する。
  • 2月12日、北部連邦軍カリブ海に艦艇を派遣して南部諸州の海上封鎖を敢行。イギリス海軍、北部連邦の要請を受けてカリブ海に空母機動部隊を派遣。
  • 3月14日、南部盟邦軍、アメリカ北部州での戦闘を有利に進めるべく、ドイツ軍に支援を依頼。これに応じて国籍マークを消したドイツ軍第26降下猟兵旅団がニューヨークに空挺降下する。北部に兵力を割く余裕のない北部連邦軍はイギリス軍に協力を要請。イギリス軍第16空中強襲旅団が急派され、放棄されたマンハッタン島で英独軍の激戦が繰り広げられる。

 

 

 

 

 

機体解説

 

VW‐1(マグドネル・ダグラス・三菱)

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・米軍仕様のHIGH‐MACS。後継機のVW‐2がステルス戦闘機並みに高価な機体になってしまったことから、数の上では未だ主力機の座に位置している。日本の12式に比べて多彩な武装が用意されていることから汎用性の面で僅かに優れており、*3米軍では今後も細かい改修や改良を続けながら運用を続ける方針である。

 戦後はアメリカ以外にもイギリス陸軍などで試験的に配備が進められており、AH‐64W*4の更新として空中強襲旅団の航空連隊などに配備された。

 

バリアント/バリアントMk2支援戦闘車両(アルビス

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・イギリスが開発した二脚型AWGS。偵察・火力支援、対戦車戦闘任務を遂行する為に開発された装甲歩行兵器である。駆動系はディーゼルターボエンジンで発電機を稼働させてリニア・アクチュエーターを動かす駆動システムを採用している。

 重量増に繋がるマニュピーレーターは装備されておらず、武装は直接砲塔にマウントするタイプとなっている。最も一般的な対空型の武装は35㎜KDA機関砲と62口径76㎜砲であるが、任務に合わせて様々な武装のバリエーションがある。

 対空型には対空レーダーが装備されていないが、これは航空機のステルス性が高まりレーダーの有効性が低下したことと、高価なレーダーを排してコストを抑える為である。

 バリアントMk2は優秀なバリアントの基本構造はそのままに、増加装甲の搭載で防御力を向上させた新型機である。これによる重量増に対処する為、エンジンもより高出力のものに変更されている。

 この機体は本国のイギリス陸軍以外にも、南アフリカやオーストラリア、クウェートやヨルダンなどが採用している。

 

M16/M16A1二脚歩行戦闘車 (ユナイテッド・ディフェンス・LP/ビィッカース)

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アメリカとイギリスが共同開発した史上初の二脚型AWGS。電気駆動式のマニュピレーターやモジュール装甲など、数々の新機軸を盛り込みつつ後のAWGSの基本形を作った傑作機。

 固定武装は頭部の20㎜機関砲のみだが、マニュピレーターを装備している為、状況に合わせて120㎜低反動滑腔砲などのより強力な武装に素早く換装することが可能。また、モジュラー装甲を採用したことで被弾した箇所の修理・交換が容易となっている他、よりグレードの高い装甲への交換も可能となっているなど、汎用性と拡張性の高さが目立っている。多少旧式化しているものの、その高い信頼性からアメリカ軍では今後も改良を加えながら使用し続ける方針である。

 A1型は脚部にコンバットタイヤを装備した高機動型で、アメリカ軍が保有するM16の大半はこのタイプに改修されている。

 本機はM2ブラッドレー歩兵戦闘車の更新として米軍に配備された後、イギリスやカナダ、オーストラリアでも採用された。また、戦後はイスラエルにも多数が供与され、独自の改良を加えたダビデ歩行戦闘車として制式化された。

 

M14/ハイランダー二脚歩行戦闘車(UDLP/ビィッカース/ウエストランド

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左がハイランダーのベースとなったM16。実際のハイランダーはもう少し細身である。

・イギリスが開発した二脚型AWGS。M16の車体をベースに背部にガスタービンエンジンを搭載した新型機で、イタリアのサティロスと同じく限定的な三次元機動力を持たせることで機動力の向上を図ったユニークな機体である。空中機動こそ出来ないものの、サティロスよりも軽量な為、かなり高い位置までジャンプすることが可能で、ローラーダッシュによる助走と併用することで従来のAWGSでは越えられない段差や障害物でも難なく突破することが出来る。空中機動をオミットしたことで第二世代AWGSほど燃費が悪くないのもメリットである。

 装甲はアルミ合金製だが、モジュラー装甲を採用している為、状況に応じてよりグレードの高い装甲に交換することも可能。武装もM16とほぼ同じものが扱えるが、イギリス軍では軽量化された105㎜低反動ライフル砲を新たに開発して基本武装としている。

 この機体はイギリス陸軍に採用された後、アメリカ陸軍でもM14として制式採用された。また、ヨルダンやクウェートなど、伝統的にイギリスとの関係が深いアラブ諸国でも採用の動きが広がっている。

 空挺部隊向けの改修を施したタイプはエアランダーと呼ばれ、一部の武装や装甲を変更するなどして軽量化が施されている。この機体はイギリス陸軍の第16空中強襲旅団に配備された。

 

ウォードレイダー二脚歩行戦闘車(UDLP/ビィッカース/ウエストランド

ハイランダーをベースに設計を一から見直した新型機。軽量で強度に優れた新型素材を使用して装甲防御力を高めている一方、背部のバーニアも再設計して運動性能を高めている。

 ちなみに、「ウォードレイダー」とは敵を威嚇するためにウォードの葉から取り出した染料を身体に塗ったケルト人の戦士のことである。

 

M15/M15A1ランドクラブ(ジェネラル・ダイナミクス

・「不整地踏破性能を持つ射撃プラットフォーム」というコンセプトに忠実に設計された史上初の多脚型AWGS。車体前部に二本のマニュピレーターを装備しており、ドーザーブレードを装備することで即席の塹壕を掘ることも可能となっている。

 A1タイプは海兵隊の水陸両用大隊向けに開発されたタイプで、他機に先駆けて海岸に強襲上陸し、味方舟艇の上陸を援護する。軽量化の為に主砲はオミットされ、武装は30㎜機関砲とKEMのみとなっている。脚部による不整地踏破性能の高さから、従来の水陸両用車に比べて上陸地点を選ばないのがメリット。

 戦後はアメリカ陸軍や海兵隊以外にもイギリスやオーストラリアが採用した他、イスラエルが供与された機体に独自の改良を施してジェリコとして制式配備している。 

 

 

 

 

 

脚注

*1:やや話は逸れるが、冷戦期に開発された空挺戦車や空挺用車輛でも同様のトラブルが多発したため、実戦で投下された例は極めて少ない。事実、アメリカ軍がパナマ紛争でM551シェリダンを空挺降下させた際には、部隊の半数以上の車輛が行動不能になったと報告されている。

*2:ベレフォロンはギリシア神話に登場する英雄で、コリントスの王。ペガサスに乗って空を飛び、キマイラを倒した逸話を持つ。 

*3:資料によっては逆のことが描かれている場合もあるが、どちらが正しいのかは不明。ここでは米軍の方が豊富な武装を用意されているのが自然だと思う為、こちらの設定を採用した。

*4:マグドネル・ダグラス社製AH‐64アパッチをイギリス・ウエストランド社がライセンス生産した機体。